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ごまの「アニメ批評日記」

「七人のナナ」第19話〜第22話

第22問「対決!ナナと神近くん!面接試験で推薦合格?」

放映日2002年6月6日

あらすじ

8人目のナナの登場に動揺するなか、
統一模試の結果が功を奏し、八坂扇高校への推薦入学受験の権利を手に入れたナナ。
しかし、増員されたたった1つの推薦枠を神近と争うことになってしまった。
神近を明確にライバル視しなければならなくなり落ち込むナナ。
「手段は選ばない」と不穏な動きを見せる黒ナナ。
それを察して阻止せんと燃えるコピーナナ。
と、それぞれの思いの中で迎えた試験当日・・。

レビュー

ナナの登場とその役割は予想通りという展開。
それでも受験におけるナナの心の振幅が描かれれば面白い話になるはずで、
本編でもストーリーの大枠は良かったのですが、
練りに練ったと思わせるその大枠にしては盛り上がりが今ひとつという感じでした。

まず気になるのが設定におけるリアリティ。
高校推薦入試の実態については、あまり詳しくわからないのですが、
ナナと神近という同じ中学から1つの枠を争うという展開はさておくとしても、
二人が面接室内で顔を合わせるような舞台設定は嘘っぽいと思います。

過剰にあおられる「必ず聞かれる最も難しい質問」にしても、
タネを明かせば単なる「志望動機」で拍子抜けする上、
常識的に考えて、よりまともな受け答えをした神近くんのことを、
「正直に言わなかった」といぶかるナナにはとても感情移入できません。

試験会場に向かう途中、道を間違えたナナと錯覚させて遅刻させようとした黒ナナ。
それにまんまとはまり遅刻した神近。そんなことはつゆ知らないナナ。
面接会場でのナナと神近の心のすれ違い。
という構図は面白かったのですが、
神近がナナと錯覚するシーンが説得力不足でした。

他人の空似ということも十分ありうるし、
何より自分のことを最優先という葛藤もあるはずです。
黒ナナとナナっぺのバトル(?)に割いてる時間があるくらいなら、
この辺りの心理描写に費やすべきでした。

意地悪三人組は、重めの展開を癒す存在としてすっかりなじんでしまいました。
「あたしたちも祝っていい」というところは、その意図通り和めました。
ただし、ナナの周りをグルグルまわる描写がチープだったのはいけません。

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第21問「消えたシャーペン! 驚き桃の木8人目のナナ」

放映日2002年5月30日

あらすじ

いよいよ受験シーズン。
押さえの高校受験を前に、結果が出た統一模試でナナはなんとブロックのベストテンに。
コピーナナたちも驚く家での勉強集中ぶりの成果だったが、
その原動力は神近にもらったシャーペンだった。
この調子で「八坂扇も合格」と瞳や三人組とともに喜ぶナナだったが、
家に帰ってみるとシャーペンが無くなっている。一体誰が・・

レビュー

ナナの心の、ネガティブな部分の権化と思われる「黒いナナ」が登場。
今のところ、まだなんとも言えませんが、
最後の大きな山場の鍵を握るキャラとして今後の展開が楽しみです。

さて今回のお話は「黒いナナ」が大事なシャーペンを隠すなど、
ナナの妨害をあれこれ画策するという展開。
しかし、その真相を知る由もないナナやコピーナナたちが疑心暗鬼になる姿を描いておきながら、
サブタイトルから既に「8人目のナナ」とバラしてしまっているので、
視聴者側は答を予め教えてもらった推理小説を読んでいるような感覚になり、
緊迫感も今ひとつで興ざめでした。
サブタイトルは「消えたシャーペン! 犯人はナナ○○?」とかにして、
視聴者もナナやコピーナナと同じ条件で頭を悩ませる演出にすれば
同じ展開でも印象はかなり変わったと思うのですが。

細かいところでは「黒いナナ」に意地悪をされた三人組が、ナナに抗議するシーン。
瞳も言ってる通り、あんまりな行動なのですが、
問題となる「弁当を捨てるシーン」や「データを破り捨てるシーン」を止め絵にすることと、
抗議する三人組の姿をコミカル(しかも一転してこちらは枚数を使っている)にすることで、
残酷度が緩和されているのは感心すべきところです。

作画ではAパートとBパートのクオリティの差が少し気になりました。
Bパートの方が、本来のクオリティという感じで良かったです。
スタッフが違っていたのでしょうか。

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20問「絶対合格!おまじないで大迷惑?」

放映日2002年5月23日

あらすじ

登校中のナナの前に現れた意地悪三人組は、
神社で売られている、おまじないのキーホルダーをナナに勧める。
知る人ぞ知るというアイテムらしく、三人組の林葉も御利益によりテストで百点がとれたという。
早速、ナナもその神社に行ってみるが丁度売り切れたところで、
次の入荷は来年までないという。
ショックを受けたナナは、
「勉強で努力しているのは皆同じ。最後の命運を握るのはおまじないだ」
と利きそうなおまじないをしらみつぶしにあたるのだが・・

レビュー

おまじないにのめり込むうちに肝心の勉強がお留守になるという本末転倒話。
コメディの形としては定番のひとつともいえる「本末転倒」という要素でしたが、
全体的な構成がよくできていて楽しめました。

特筆すべきは「小学生の男の子」という伏線の使い方。
伏線には、あからさまにそれと分かるやり方とそうでないやり方がありますが、
今回はそれと分からせないやり方で
視聴者の意識を以下の通り上手く誘導してました。

本編の進行ではナナがおまじないにのめり込んでいく姿が描かれています。
馬鹿馬鹿しいことだと分かっていても、見る側はそのナナの姿に感情移入します。
この時、その妨害ばかりする「男の子」を謎の存在にすることで、
ナナの敵という意識をもたせてナナへの感情移入をより高めています。

そして「男の子の正体」が明らかになるところでは、
ナナの敵という意識を解くと同時に、
ナナの行動と「男の子」の行動が実は全く同じで本末転倒だという事を、
ナナと男の子が理解するという種明かしとなっています。
コメディと「テーマの受験」を両立させた良作だったと思います。

細かいところでは、
三人組がもってきた「おまじないの卵」が面白かったです。
瞳の頭で卵が割れるという展開は、
その後の「瞳の身体ごと家庭科室に運ぶ」というコメディの為に必要なもので、
いじめ的要素だけで同様の展開が見られるどこかの作品には見習って欲しいものです。

作画の方では、ナナと男の子が和解し二人で葉っぱを取るシーンが印象的。
夕焼けの光が嫌味でない程度に優しい雰囲気を盛り上げてました。
ラストシーンの劇画タッチは止め絵にするためでしょうが、
CGの使い方が今ひとつという感じでした。

毎度のことですが、瞳はホントに良い親友ですね。
「バナナの皮」のおまじないを貰って「ありがとう」とはなかなか言えないと思います。

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第19問「家族そろっておおみそか! パパ、ママ帰国で大ピンチ」

放映日2002年5月16日

あらすじ

いよいよ年越し。ナナたちみんなで屋敷の大掃除を、のはずが、
コピーナナたちは蔵で見つけたアルバムの写真で思い出にふけり掃除をさぼる始末。
そんなとき玄関でナナを呼ぶ声が。
返事がないので勝手に上がり込んできたのはなんと、
突如帰国したアメリカ出張中のパパとママだった。
しかも「一緒にアメリカで暮らさないか」という突然の提案に戸惑うナナ。
折しも、お爺ちゃんと住む屋敷が「町の遺産」として保存しないか、
という町長からの申し出があり、否応なく海外行きに話が進むが・・

レビュー

ナナが7人いるということがパパとママにバレないよう、
それぞれ同じものが7人分ある食器や洋服、カップ、お菓子、漫画などを
必死になってごまかすところが面白かったです。

あと、ナナたちが一致協力し、ナナの成長ぶりを披露するところ。
ナナりんのカラオケから雰囲気が怪しくなり、
ナナっこのイリュージョンからナナぽんの占いへの入れ替わりが早すぎて
「え〜っ?!」となるのが、
最初からの入れ替わりが早すぎる描写と合わせて笑えました。

今回は、本意でないアメリカへ連れて行かれることを阻止するため、
ナナたちの苦悩や奮闘が見どころのはずだったのですが、
展開として唐突過ぎる感があり、今ひとつ深刻感に欠けたような気がします。
作中のナナの視点では突然で考える時間がなかったにしても、
視聴者には、その深刻感で、よりハラハラドキドキさせるような演出が欲しかったと思います。
前後編にしろ、とまでは言わないにしても、
本編のようなパパ、ママの心情に費やすよりも、
ナナの心情描写にもっと時間を割いた方がより面白かったのではないでしょうか。

( 更新:2002年6月2日 文責:ごま )
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