ごまの「アニメ批評日記」
「七人のナナ」第8話〜第11話
第8問「英語で告白! 家庭教師をやっつけろ?」
あらすじ
アメリカにいる母からのエアメールに書いてあったのは
母の友人の娘が日本に行くので泊めてやってくれ、という知らせ。
このエアメールを読むが早いかさっそくその娘、メロディー・ハニーがやってきた。
母からの頼みでハニーはナナの英語の家庭教師をすることになった。
七人のナナであることがバレないようにコピーナナたちは土蔵に隠れているが、
窮屈な状態に真っ先に耐えかねたナナっぺがハニーの追い出しを図る。
レビュー
今回の主役はナナっぺ。
窮屈な状態に真っ先に耐えかねた短気なナナっぺがハニーの追い出しに図る、
というのがナナっぺを前に出すためとしては自然な展開でまず好感。
ナナっぺがハニーに英語のリーダーの勝負を挑む展開は強引な感がありましたが、
ナナっぺがばらまいたビラを意地悪3人組が拾ってきて
先生にチクる(先生は怒るのではなくてほめる、というお約束)ところは
キャラを上手く使っていたと思います。
勝負をつけるリーダーのお題を「ハニーの告白」にして
ナナっぺに勝利をもたらすというアイデアは
先の読める展開ながらも面白かったです。
この時決着を曖昧にしてハニーとウィリーの恋愛話に移行させたのも、
話としてきれいにまとまりがついて良かったと思います。
細かいところではナナっぺと母の電話のシーン。
うるさい外国人たちに叫ぶ台詞はナナっぺのままにして、
普通に電話でしゃべるところはオリジナルナナの声に変える芸の細かさ。
母の重要な台詞を電話の切れた音のエフェクトでぼかす工夫、などがありました。
ナナレンジャーがハニーを空港(?)に送るシーンは間延びした感じ。
623の締めもやはり蛇足に思います。
それよりも、Aパートでのナナっぺとハニーの言い争いのシーン、
「アイラブユーも満足に言えないでどうする」
「そっちこそいい加減な大阪弁喋ってるくせに」
の応酬に膨らみを持たせた方が更に面白くなったのではないでしょうか。
メアリーが「力(りき)まんでも・・」を「ちからまんでも・・」
というところ、誰もツッコミを入れてませんでしたが、
これも吉本新喜劇のネタなんでしょうか。
最近の新喜劇ネタには詳しくないので私には分かりません(^_^;)
第9問「甘い誘惑! 恋と秘密とカンニング?」
あらすじ
知恵熱を出して寝込んだナナに代わって登校したのはナナりん。
遅刻しそうなのでナナレンジャーで登校したナナりんは、
その途中で暴走した電車(古都電)を止めるお手柄。
しかし、学校についたところで同級生の茜に見られてしまう。
その日行われた抜き打ちテストで茜のカンニング(後に誤解と判明)
を見てしまったナナりんは、放課後注意したが、
逆にナナレンジャーだということをバラすと脅迫してきた。
二人は特進クラスでも最低の成績同士。
教頭たちは次のテストで最低の成績だった者を特進クラスから脱落させるという・・
レビュー
今回はナナりんが主役。
ですが、今回は随所に強引さが目立ちました。
今後の展開にもよりますが、
ナナレンジャーということが他人にバレるというネタ自体が、まず反則技。
結果、収拾をつけるために茜を転校させるという、
まあこれしかないのでしょうが、
無理に無理を重ねるという演出になってしまっています。
コピーナナの中で、何故ナナりんが登校するのかも不明でした。
とはいえ、
同級生のカンニングを阻止するためにどうするかというところで、
ナナレンジャーの実力行使という力業にもっていかず、
純粋で泣き虫なナナりんらしさを貫き通して解決
(といってもカンニングは存在しなかったわけですが)
したところは評価できます。
ナナレンジャーの秘密がバレるのを防ぐことと、
「特進クラス脱落試験」をクリアすることの、
2つの目の前の壁を乗り越えていく様を描いていることで、
ナナが特進クラスでの受験勉強に身を入れていくという流れを
間接的にかつ自然な形で演出できていたと思います。
茜を悪者にしないため、
茜が実際にはカンニングをしていないという条件の中で、
カンニングしそうになっていたところを見せて
カンニングを阻止するというテーマで話を作り上げたのは見事でした。
季節を梅雨に設定し、お天気の変化をナナたちの心情になぞらえていたのも
細かい演出が効いていました。
全体的には、上記の通り強引さも目立ちましたが、 さわやかな青春ドラマとしてまとまった秀作だったと思います。
第10問「恐怖の赤点! 期末テストを突破せよ」
あらすじ
期末試験がやってきた。
先生の思いやり(?)で、赤点をひとつでも取ると夏休み返上で補習。
ナナの実力ではその結果は明らか・・。
補習になると必然的にコピーナナたちも家で留守番とあって、
全員協力の上、睡眠時間を削った過密スケジュールで猛勉強に励む。
そんななか、ナナっこだけは「よく寝た方がいい」というが、
みんな耳を貸さない・・。
レビュー
今回はナナっこがほぼ主役。
試験を前にしても楽観的に構えるところや、
「寝るのも大事」と身体を休めることを主張するところなど、
のんびり屋のナナっこらしさがよくでていました。
わざと目覚まし時計を元の時間に戻して、たっぷり睡眠できるようにしたり、
睡眠学習のテープを枕に仕込んだりと、
ナナっこならではの思いやりが描かれています。
また、その睡眠学習のテープにナナっこの思いやりの言葉も入っていたことを
後で明らかになるという演出も上手く、
睡眠を大幅に削って体調を崩してまで勉強しても効果は上がらない、
という教訓をテーマにナナ、ナナっこ、他のコピーナナの
試験への取り組みを描いたいいお話だったと思います。
話の必然上、期末試験前半の成績は良くなかったことで、
夏休みの半分を補習に費やすというのもオチとしてきれいにまとまったいました。
あと、細かい点でははじめの方のシーンで
いまいち事態を把握しきれてないナナっこと他のナナたちとの順繰りのやりとりで、
「赤点なんてしょっちゅうじゃない」「大きなお世話よ」の応酬で、
コピーナナの列の間にオリジナルナナを入れたのは面白かったです。
ただやはり、話を分かりやすくするために「赤点」という設定を使ったために、
現実的には、物語がある意味破綻していると思います。
中学3年のこの時期に、しかも特進クラスで赤点をとっているようでは、
遅れを取り戻すのは現実的には不可能に近いと思われます。
分かりやすさは多少犠牲にしてでも
もう少し現実的な設定にした方が共感は増すのではないでしょうか。
第11問「二兎を追うものは二兎を得よ?」
あらすじ
夏休み。期末テストの赤点のせいで補習に通うナナ。
ある朝、瞳から電話が。毎年、瞳は実家の料理店でハモ料理をナナにご馳走していたが、
今日キャンセルが出たので、今年のご馳走は今日でどうかということだった。
ナナはコピーナナたちに知らせようとするが、暑さでだらけ気味のコピーナナたちは、
ナナが言うが早いか、ナナにあれこれ用事を頼む始末。
怒ったナナは何もいわず登校する。
その途中、偶然出会った神近くんからお祭りに誘われた。
ハモ料理のこともあり返事に迷っている間に、
神近くんは早合点して去っていってしまう・・。
レビュー
何といっても一番気になったのは、ナナたちが他人の目を気にせず外出していったこと。
前回、ナナの補修中はコピーナナたちはお留守番、
とあおって話を作っていただけに違和感を感じました。
意地悪3人組が暑さのせいと勘違いしたり、
教頭と生徒指導が酒によったせいと勘違いするという演出は
面白かったので、それ自体は悪くなかったのですが、
何かもうひとつ配慮、
例えばコピーナナが怒りのあまり他人の目を気にせず出ていく
ということを強調する描写があれば良かったと思います。
最初の瞳の電話→教えようとしたがコピーナナたちの態度に怒って黙って出ていくナナ
→「コピーナナたちの分もある」という再度の瞳の電話
という展開は自然で、かつ面白かったです。
神近くんにデートに誘われたのに、ナナずっと黙っていたのはリアリティに欠ける気がします。
確かに内気なナナのことですから、一瞬躊躇するのは分かりますが、
神近くんに「あんまり話したことないもんね」と言われてまで、
黙っているのは変だと思いました。
あと、そのことで落ち込み神近くんに謝りに行こう(謝るということ自体がちょっと変でもある)
としたときにハモ料理と葛藤するのも変でした。
親友の気遣いに対しての思いで悩んだとしても、
神近くんへと同じ高校に行きたい、そのための努力を惜しまないというほど好きであるなら、
コピーナナたちに言われるまで何の対策も思いつかないとは考えにくいです。
あと、神近くんを呼び止めるのに、
大文字焼きの場所を使って「ナナ焼き」を作るコピーナナたちというのも強引でした。
まあ、京都風の舞台ということでのサービス的な意味あいもあるのでしょうが。
「ナ」の字が「大」の字と似てるという着眼点は面白かったです。
大文字と左大文字が同一方向なのはご愛敬というところ。