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ごまの「アニメ批評日記」

「七人のナナ」第23話〜第25話

第25問(最終回)「合格発表!!心の丘に花の咲く?」

放映日2002年6月27日

あらすじ

映画村に幽閉されていた萱野を見つけた神近。だがそこに黒ナナの魔の手が。
そしてピンチの神近を救いにナナが現れる。黒ナナのマスクが外れ、ナナは自ら外す。
ナナに促され、萱野を連れて逃げる神近。
その脳裏には、見えていたはずなのに見えてなかった真実が、
パズルのピースをはめ込んでいくように浮かび上がっていく。
一方ナナは黒ナナと最後の対決。
コピーナナと同じく、もう一人の自分である黒ナナとの決着は? 受験は? 恋は?
その結果がついに明らかになる・・

レビュー

ナナとの対決での独白や、後のシーンでのコピーナナへのナナの台詞により、
黒ナナの行動原理が明かされますが、明快というほどではありませんでした。
でも「神近と二人っきりの高校生活」という台詞から、
前回書いた「常にオリジナルナナの意思を投影したときのネガティブな行動」だと思います。

ナナと黒ナナの対決は、前々回の黒ナナの語りかけと同じく、形を変えた自問自答。
肉弾戦そのものは、どうでもいい描写ですが、
コピーナナたちが立ちふさがって倒れていく次のシーン、
ナナと黒ナナが分かり合うその次のシーンと雰囲気を差別化することで、
ナナの自問自答による心の振幅が表現されていたと思います。
ただおしむらくは、肝心のナナと黒ナナが分かり合うシーン。
即ち、目を背けていた見たくない自分に勇気をもって目を向け、
もう一人の自分を自分と認める、という大事なところなのに、
「どんなナナだっていい」とナナが黒ナナに促すという行動が、
映像的には他人を相手にするような投げやりな態度に写ってしまい逆効果だった、 と思えたことです。

そして続くは、ナナが受験に行くためにコピーナナたちと別れを告げるシーン。
第1話の設定・展開が生きていたのが面白く、
雰囲気としてはコピーナナたちの卒業式とも感じられました。
少し間延びしてしまったかな、という気はしましたが。

後半は、中学の卒業式から、ナナが八坂扇に不合格だったことが明らかにされ、
ナナは瞳と同じ高校に通う姿が描かれます。
ここで神近がその高校の制服をまとって出てくる姿が衝撃的。
「八坂扇に不合格、でも瞳と同じ高校で救われた」
という形で青春の1ページを締めくくるのかと思った矢先で意表を突かれました。
神近本人は「お互い残念だったね」と自分も不合格だったように言いますが、真相は藪の中。
仮に自ら八坂扇を捨てたにしても、元々「萱野と通いたい」という目的だったので、
展開として許せはするのですが、受験に対する真面目な取り組み姿勢との一貫性を欠いた気もします。
むしろ「頑張ったけど不合格」か「敢えてナナと同じ学校へ」と
ハッキリ描いた方がスッキリしたように思いました。

そしてラストはナナの告白のシーン。
それぞれの高校の合否もそうですが、色々な締めくくりが選択できるところです。
本編では、まがりなりにも見事「神近と同じ高校に合格して告白」という当初目的を成就。
そこへ、いなくなったはずのコピーナナたちが乱入し、
「七人のナナ」による大混乱といったなかエンディングを迎えます。
コピーナナたちの姿を心に描いて、より感動的に締めくくる方法もありましたが、
最後に流れる主題歌との組み合わせも絶妙でしたし、
コメディとして終わるのがナナらしいと思いました。
実は今川監督の照れ隠しなのでは、という思いもありますが。
ナナさまの「神近くんはどのナナがいい?」という台詞が秀逸。

ところで最大の謎は、コピーナナたちが消滅しなかったことではなく、
受験から高校入学までの間、バレずにどうやって生活していたのか? ということです。
これまでの話でも分かるとおり衣食住は必要のはずなのですが・・(^^;)

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第24問「受験前日!!最後の対決(たたかい) ナナVSナナ」

放映日2002年6月20日

あらすじ

推薦入試に逆転不合格になったナナは神近と同じく一般入試を受けることになり、いよいよその前日。
「先日はごめん」と謝りに来た神近は、ナナにある相談をもちかける。
火傷したことで、付属中からの進級試験から一般入試にまわることになった萱野が
ノイローゼになってしまった、というのだ。
火傷の一件もあり姿を見せづらいナナは、ナナレンジャーとなって萱野をはげます。
「実は私も八坂扇を受験する。みんなで八坂扇に合格しよう。そしてそのあかつきには友達になろう」と。
萱野もナナを疑ったことへの反省を見せる。そして互いを励まし合う3人。
ところが、そんな様子を見て不愉快さをにじませる黒ナナの姿が・・。

レビュー

今回、黒ナナは萱野の受験を妨害するという作戦に出ました。
コピーナナたちとの対決のなかで「神近くんと一緒になれる最後のチャンス」という台詞があり、
黒ナナの意思が「手段を選ばずナナと神近をくっつけよう」というもののように、
これだけ聞くと思えるのですが、前回の行動との整合性を欠くのでどうも違うようです。

ひとつには、常にオリジナルナナの意思を投影したときのネガティブな行動
として現れる黒ナナの意思・行動という解釈があります。
学園祭でふられて以降は「神近の側にいても仕方がないので受験に落ちてもいい」
というナナの気持ちにより、黒ナナがナナの受験を妨害。
前回より受験に真っ直ぐ向き合ったナナの気持ちにより、
今度は萱野の妨害にまわったという解釈です。

もうひとつは、神近くんが萱野を好きという事実から、神近には手を出せないので、
最初はナナの受験を妨害。次に萱野を妨害という行動にでたという解釈。
「ナナ・神近・萱野の3人が一緒にいるのはナナのためにならない」
という行動原理でこれも一貫性はあります。

今のところ、どう読みとっていいのか難しいですが、
次回以降の含みかもしれないので、そちらに注目したいです。

みどころはコピーナナたちがめずらしく家事に精をだして、
ケーキも用意された食事で盛り上がるシーン以降。
サブタイトルでの前フリ効果もあり、コピーナナたちが自らの消滅を賭して黒ナナと対決しようとする直前、
という雰囲気が演出できていたと思います。

ひとつ難をあげると、「火傷の犯人をナナと決めつけたことが誤解だったのでは」
と反省する萱野のシーンに説得力を欠いていたような気がします。
前回の黒ナナのあの行動ではどう考えても、萱野の主観ではナナが犯人と思えるはずで、
それを覆すだけの説明が何か欲しかったところ。
これまで憎まれ役だった萱野の役割が転換する大事なシーンでもあり、
余計にそう思いました。

神近が萱野に携帯を持たせるのは、いくら幼なじみで好きな人とはいえ、
行動として度を超しているのではないかと思うのですが・・。

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第23問「推薦取り消し!私の恋と受験はどうなるの?」

放映日2002年6月13日

あらすじ

なんだか様子が変な神近くんを見て「大事なものと引き替え」と複雑な心境になるも、
推薦試験の合格を決めたナナ。そのナナをよそに黒ナナはなにやら不穏な動き。
ある日、ナナは校長室に呼ばれて行ってみると、
そこには八坂扇学園の校長と付属中の萱野がいた。
そして校長から発せられたのはナナの推薦取り消しという言葉だった・・

レビュー

前半は、黒ナナの悪事によりナナがぬれぎぬを被せられ、
ナナの中学に萱野と共にやってきた八坂扇学園の校長により推薦が取り消される、という展開。
リアリティに欠けていた部分が気になりました。
いくら付属中の生徒だからといえ、萱野の証言だけで
八坂扇学園の校長がナナを犯人と決めつけるのは客観的に見ておかしいですし、
「やってないという証拠を」というのは「無罪推定の原則(疑わしきは罰せず)」に反しているので、
ナナの側の人間、校長や教頭が指摘しなければならないところです。
黒ナナがわざわざ犯人と分かる行動をとったことも、
リアリティの欠如を増長する意味合いがあり、この時点ではマイナス要因でした。

後半は、神近にまで疑われたことにショックを受けて倒れたナナに、
黒ナナが自らの行動の真意を語りかけるという展開。
これは形を変えたナナの自問自答だったわけですが、
ここに至って分かったのは、黒ナナは単に己の欲望に忠実ということではなくて、
学園祭で神近にフラれたことにより下がってしまったモチベーションの象徴だということです。
推薦入試で神近の邪魔をしてナナを合格させたのは、
一旦合格させておいて、今回の事件で八坂扇に絶対行けなくしてしまうため。
神近への恋、八坂扇への受験を絶とうとするネガティブな意思の表れだったのでした。
学園祭からの登場にもつじつまが合いますし、
前回の黒ナナとお爺ちゃんの会話にも伏線も張られていました。
この辺りの黒ナナに演じさせた役割はなかなか見事だったと思います。

今回一番の見所は、落ち込んでしまったナナをみんながラジオを通じて励ますシーン。
瞳、クラスのみんな、教頭先生と怒濤のごとく紹介される励ましファックスのところは、
瞳は校門のところで神近をひっぱたいてまでナナをかばったところから、
教頭は校長室でナナの素行を力説してかばったところから、
クラスのみんなは校門ですれ違うナナに何か言っているという伏線から、
とそれぞれ引かれていた線がつながりジーンとくるものがありました。
1つだけ難をあげれば、普段のクラスのみんなの対応はあまりいい印象でないので、
3人組が瞳に注進するところで特進クラスのみんなに演説をぶるシーンなどを
入れて説得力をもたせてみてもよかったのでは、と思います。

ところで瞳は眼鏡を外すと目も口も3の字になるというのはクリスマスの時にもありましたけど、
喋るときは猫口になるんですね。
眼鏡をかけるやいなや元にもどるところなど、結構笑えました。

( 更新:2002年7月26日 文責:ごま )
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