紆余曲折をへて土佐犬リョウマが飼い主の老婆のもとへ帰る、という話。
前回の続きで、飼い主から離れてしまっているという意味では同じ境遇ゆえ、
その気のないリョウマをどうにか引っ張っていこうとするフレディー。
表面上はその気が全くなさそうな態度を見せながらも、
無意識に老婆の車が止めてあったところに足を向けてしまうリョウマ。
老婆の昏倒に、胸騒ぎを覚え無我夢中で駆け出すリョウマ。
老婆は無事救出され、同時にリョウマの誤解の原因も解けて、
老婆とリョウマが元通り一緒に暮らしてめでたしめでたし、
と起承転結のハッキリした分かりやすい組立で、展開を素直に楽しめました。
リョウマが一度破れたフリーザー(シベリアンハスキー)を行く手に立ちふさがせて、
飼い主の元へ急ぐリョウマが今度はフリーザーをやっつけるという演出もいいアクセントでした。
やや鈍感な飼い主のもとで暮らすキッチン(コリー)を、
老婆救出の援護と、フレディーとドッチの再会を暗喩に使っているところも面白いです。
ケンカに負けて町を去っていったリョウマと、それを追っていったフレディー、という話。
前々回、愛想をふって恵んでもらうというやり方。前回、盗むという野良犬のやり方ときて、
今回は愛ちゃんに叱られたことを思い出したフレディーが「盗むのはいけない事」という3つめのやり方。
匂いをたどってリョウマのところまでたどり着けたフレディーという描写もそうですが、
自分で考えた上での結論という形でフレディーを一歩成長させました。
パン屋やホットドッグ屋にある食料という同じシチュエーションを3話続けて、
それぞれの違いを表すという非常に丁寧な作り方だと思います。
本編の方はそれだけでなく、匂いをたどって少しずつ同心円を大きくする移動の犬の仕方も紹介されています。
元飼い主でリョウマの過去を見え隠れさせたり、フレディーのいるところまできたドッチの姿を入れたりと、
次回以降への「引き」も上手くつくってあります。
フレディーがリョウマにソーセージを勧めつつよだれをダラダラ流す絵はコミカルで笑えましたが、
よだれの部分の絵がちょっと分かりにくかったです。色つけても良かったのでは。
フレディーが老いた土佐犬リョウマと出会い、色々教わる、という話。
具体的には「マーキング」「挨拶(体臭をかぐ)」「敬語」「立ち小便」「餌の取り方」
「臭いをたどっての街の歩き方」などを教わるのですが、
リョウマの「講義」には生粋の野良犬としての生き方というものが強調されています。
前回までのドッチは飼い犬っぽさの残る野良犬、今回のリョウマは生粋の野良犬と、
フレディーに教える二人の考え方の違いも楽しめるようになっています。
人間に愛想をふりまいて餌をもらうやり方をリョウマに披露するフレディーの姿、
加えて冒頭のシーンに同様に餌をもらうドッチの姿を挿入することで、
フレディー、ドッチとリョウマ、両者の違いをより分かりやすくしているのは親切な作りで好感がもてます。
前半のかなりの時間を立ち小便に挑むフレディーというネタで「見せて」いるのは驚きです。
さて、今回飼い主の愛ちゃんはというと、
失踪以来、初めてハッピーケンネルにやってくるという回復ぶりでしたが、
ハッピーケンネルの犬に「アレックス」と呼んでいる姿が痛々しいです。
冒険を続けるフレディーに比べてドラマの少ない愛ちゃんのシーンは、
今回のように少しずつ描いていくということなのでしょう。
ドン・コロコローネを買っていった怪しい男の存在は今後への伏線ということでしょうか。
あと、「迷子のフレディー」というサブタイトルからしてフレディーはドッチとはぐれてしまった模様ですが、
本編の描写では分かりにくく、違和感を感じました。制作過程で何か変更があったのかもしれません。
フレディーたちがとある豪邸に住むキャバリアキングチャールズスパニエルの女の子キャミーに会う、という話。
キャミーを気に入ったことによるドッチのフレディーに対するそっけない態度やドッチ生来のいい加減さと、
結果的にキャミーにふられた形になったドッチに対する
フレディーによる、悪意はないがドッチにとっては情け容赦ないデリカシーに欠けるツッコミの数々。
この2つがいいバランスとなっていて、どちらも嫌味なく楽しむことができました。
ドッチのそっけない態度の方は、前回にもありましたがフレディーに色々親切に教える姿によって嫌味が緩和されてます。
といっても教え方がいい加減だったり、肝心の時に助けにこなかったり、
と描くことでコメディとして面白くする工夫にもなっていたと思います。
今回疑問に思った点が2つありました。
「人間の解釈による『犬の降参』」をドッチが『あっちいけ』と教えていたことは、
最初これもドッチのいい加減な教え方だと思ったのですが、
犬社会ではそのような考え方をしている、という描写と後から思い、結局どちらか分からなかったこと。
キャミーを豪邸から外に連れていこうとするところで、
フレディーが反射的に「駄目だよ」と言ったのは
自分の飼い犬としての経験によるものだと見えましたが判然としないこと。
ハッキリさせた方がいいのかどうかは微妙なところではありますが。
迷子になったアレックスがはじめて他の犬と知り合い友達になる、という話。
ひょんなことから知り合いになったミニチュアダックスフンド、ドッチの住処に転がり込み、
翌日、パンを盗みに行ったり、迷惑な犬好き男の子に翻弄されたりと騒動を経て、
最後は別れ別れとなるはずだったドッチと共に次の街へ向かうという、
起承転結のしっかりとした王道のようなストーリー展開が心地いいです。
もぐらのように地中を掘り進み、男の子の魔の手から逃れようとするところは漫画チックで、
リアリティには欠けるのですが、カット回しによって上手く緊迫感を演出していました。
この時のバンクの使い方も退屈感を与えないセンスの良さを感じます。
パン屋に向かうアレックスの描写で、背景の方を拡大するのもちょっとした工夫でした。
愛と一緒に暮らすことになったアレックス。ところが買い物中にはぐれる、という話。
本作はアレックスが愛のもとへ帰ることを前提とした冒険話が本筋のよう。
はぐれてしまうまでの愛との楽しい生活ぶりはプロローグであり、
サブタイトルにも別れがくるということが予め告知してあります。
この短い時間を使っての愛とアレックス、
即ち人間と犬の生活をはじめるさまが上手く描かれていました。
意思が伝わらず悪戦苦闘しながらも楽しそうな愛の姿と、
飼い主の意思などつゆ知らずというアレックスの気ままな行動の対比が、
リアリティもあり面白かったです。
また、このシーンでは子犬は歯がかゆいということを説明しつつ繰り返すことが、
アレックスの気ままな行動を示すと同時に
やがて訪れる別れのシーンへの伏線となっていたことも見逃せません。
歩道のポールにロープでくくられたアレックスの姿を見て、
次に予測される展開への不安を高まらせた視聴者は多いことでしょう。
今回は第1話と違い、視聴者にとってキャラクターの役どころがハッキリしていたので、
同じようなテンポでも十分楽しめたと思います。