フルムーン対円の競作、同日レコーディングの当日まで、という話。
今回は円にスポットを当ててストーリーが展開。
高須プロデューサーを奪ってしてやったり、
と思っていたら満月側のプロデューサーが元ルートLのメンバーと知って芽生える不安。
「このままじゃ負ける」と、いつもの謀略に出てみたものの、
それが原因で自分自身の集中力を欠いてしまう。
と、正面から倒す意気込みとの矛盾に自滅していく過程が上手く描かれていました。
よくよく考えると、実在のアーティストの曲を使う以上、作中での競作というのは成立しにくく、
レコーディング直前に円が自滅するというシナリオしかありえないのですが、
自滅の過程が丁寧に描かれていた分、それを感じにくくできたと思います。
ただ、円がスキャンダルをねつ造するところや、レコーディングまで本当に1回も歌わせないところなど、
リアリティに欠けるところで興ざめしてしまうのが、本作によく見られる減点材料。
満月が新しい曲で聴き手に何を伝えるかを考える、という話。
冒頭のTV番組での話題によって、フルムーンと円の競作という構図を強調。
円&高須プロデューサー側の着々と企画が進行していく様と対照的に、
「ブランク長いから」とスタッフに陰口を言わせてまで
「ファンに何を伝えたいの?」の問いに対するフルムーンの回答を最優先する若王子という描写で、
フルムーンと円、高須と若王子の取り組み方の違いがハッキリでていました。
後半は、満月がお父さんの事を知ろうとするところから神山家の土蔵で思い出の品を探す展開。
そこで満月の変身を偶然チラッと見てしまった祖母が、その姿を満月の母、葉月の幻影と勘違い。
葉月を失ってしまったことを思い出して漏らした、葉月の死の原因である音楽のことを「嫌い」という感情が、
満月の「伝えたいもの」のきっかけになるというまとめ方は面白かったです。
前半には、ファンに新曲で何を感じてもらうかを例えるめろこの七変化が
コメディとして楽しませてくれました。
若王子の語りによって、お父さんの事を回想するシーンでは、
ルートL解散の理由が満月の両親の駆け落ちにあったことが判明しますが、
この時の両親に対する若王子の心境がなかったのは不自然。
迷惑をかけたことになる満月の両親に悪い印象をもつのが普通なので、
何かフォローがあれば良かったと思います。
フルムーンのセカンドシングルのプロデュースを若王子先生に依頼する、という話。
躊躇する満月本人から、大重マネージャー→めろこ→満月→タクト、と依頼者を変えつつ
終始、若王子先生への「お願い」が続くシンプルな筋立て。
前半はめろこの暴走、後半はタクトの挑発、とコメディ・シリアス両方で楽しませる出来になっていました。
めろこが枕にすり替わっていたり、満月の想像での説得が間に入ったりと、
シンプルながら色々工夫が凝らされていたのも飽きさせない要因でした。
あみだくじで「お願いする」という結果にたどった満月の残念そうな姿で、
自分の気持ちが揺らいでいる満月の心の内を表したのは上手い描写でした。
このとき、あみだくじの結果に「お願いする」が1個しかなかったのも、
「諦めるべきなんだけど、諦めきれない」という心情をよく表す細かい演出。
タクトの挑発は内容的には非常に陳腐なものでしたが、
前半のタクトの脳裏によぎる生前(ルートLのヴォーカル?)のフラッシュバックが効果的で、
表面上の「死神VS 医者」だけではない二人の会話を感じさせていて面白かったです。
その意味で、プロデュースを引き受けたときの若王子のタクトへの視線も良かったです。
音楽をとっくに捨てた現医者が、プロデューサーという決して簡単ではない職で音楽に復帰するのは、
現実的に考えて苦しい展開なのですが、この作りなら大目に見ていいと思います。
フルムーンが父のバンド時代の歌をセカンドシングルで歌おうとするも円に横取りされる、という話。
円がフルムーンの企画を横取りするという大筋はいいのですが、
フルムーンのスタッフが口を滑らせて情報が円に漏れてしまうのが嘘っぽくて興ざめ。
大重が頑張るも相手が高須プロデューサーとあって断られ続けた満月たちが、
最後に選択したのは父と同じ元「ルートL」のメンバーだった若王子先生。
現実的には無理気味でも企画としては面白いので、これくらいの嘘は個人的にはアリにしたいところ。
あと、これまで「満月の父」「英知」と二説あったタクトの正体に、
元「ルートL」のボーカルという第三の説がさりげなく登場しました。
満月の元へ引っ越してきた大重と若王子との関係を誤解した家政婦の田中さんが勝負を挑む、という話。
本編とはあまり関連性のない、番外編的な話でしたが面白かったです。
「良妻=家事全般」という底流にある思想に引っかかりを感じはしましたが、
(実質的な)勝負の結果はミエミエだし、
大重の駄目っぷりも「忙しい業界人なら」と同情できるのでヨシとしたいです。
最後の勝負が「すき焼き」だったのは「食材集め」と「何故か魚屋に行く大重」を両立させるため、
というところまでは良かったのですが、どうせならオチにも使ってきれいにまとめて欲しいところ。
田中さんが残していった食材と合わせて、満月・若王子・大重の三人でたらふく食べさせられる、等はいかが。
あと「勝負によって掃除の手間が省けた」みたいな演出があっても良かったのでは。
フルムーンが初のソロライブを行う、という話。
前半は企画段階からスタートし、衣装選びなど、ソロライブへのプロセスを追っていくという展開。
初めての経験による満月のドキドキ・ワクワク感を受け手にも共有させる演出で、
リアリティという点では疑問ながらもまあまあ楽しめます。
全体の骨格としては、円による妨害で開催が危ぶまれながらも、どうにかそれを乗り越えてライブ開催に至る、
というそれ自体は悪くないものだったのですが、
「円の電話一本で開催の危機」というリアリティの無さが、全てを台無しにしてしまってます。
例えば「円の所属事務所による意図的なダブルブッキング」とか、もう少しマシな方法は考えられなかったのでしょうか。
録画失敗・・。
オーディションをめぐる対立で喧嘩し、家を飛び出しためろこがタクトと仲直り、という話。
怒りの治まらないタクトと、「人間万事塞翁が馬」的達観を見せる満月との対比が面白いです。
タクトの方はめろこの告白の当事者であり事情を知っていること、同じ死神であることから、
前回のめろこの妨害をより肌で感じられる故、満月は3人一緒の方が楽しいと心から思っている故、
とそれぞれの態度の違いに説得力をもたせていたので不自然さもなかったです。
特に過去の映像の使い回しが説得力をもたせるに効果的だったと思います。
そんな満月の態度によって、めろこを説得しにいく展開も納得できますし、
見舞いに来た友人という機会を使っての仲直り作戦もよくできていました。
満月の嘘が若王子や大重にバレてしまい、歌手を続けるために満月が真実を二人に告白する、という話。
前半は、前回から続くシーンでオーディションに落ちた満月が挫折感にくれるという展開なのですが、
数あるなかの一つに過ぎないオーディションの落選に何故そこまで落ち込むのかに違和感を感じました。
その後の展開で、余命1年しかないことによって満月が焦っていたからと理解できるのですが、
このあたりの因果関係をもっと強調して満月の焦りを最初から分かるようにした方が良かったと思います。
後半は、歌手を続けるために満月が若王子と大重に告白するという急展開。
映像的には総集編っぽくもありましたが、
告白することの重みや、その事で過去の満月の言動に思いを寄せて納得する若王子の描写などで、
安っぽさは感じさせない作りになっていました。