佐為の姿が消えたことを不審に思ったヒカルが、秀策ゆかりの地である広島県因島を訪れる、という話。
「何故、佐為が唐突に消えたのか?」という一点の疑問によって、ヒカルの不審がる行動に今ひとつ感情移入できませんでした。
因島編はスタッフによるロケハンの成果を楽しめる出来となっています。
佐為が現世から姿を消す、という話。
酔った緒方新十段とヒカルの対局、ヒカルが家にもどったとき、それぞれ異なる曲調ながらも、
全体を静かなピアノのBGMで統一することで、佐為の現世最後の時間という雰囲気が良く表現されていました。
しかし、佐為との別れという重要な話であるにも関わらず作画のクオリティは今ひとつ。
特に佐為と碁盤を挟んだヒカルが居眠りするところが、ほとんど動かなかったのは頂けませんでした。
佐為視点による最後のヒカルの姿だけに細かい動きをつければ、より印象的なシーンになったと思います。
塔矢名人が引退を表明、ヒカルは実質プロ入り初手合いを迎える、という話。
倉田六段とアキラのやりとりでは、ヒカルがアキラの背後まで迫りつつあることを描きつつ、
ヒカルとアキラの対局を平行して描くところでは、
がむしゃらに突き進むヒカルとどこか余裕のあるアキラとの差異を描く、
という矛盾しているかのような二つの要素を同時に表現できていたと思います。
ヒカルの対局が早いのは比喩的表現のはずなのですが、
単なる早打ち碁のように見えてしまうのは少々いただけませんでした。
saiと塔矢名人対局終了後、という話。
ヒカルもいた塔矢名人の病室に緒方九段がやってきて一波乱、というところが見どころ。
これまで時間を割いていた緒方九段による「犯人探し」という伏線が、
ヒカルに対する「俺もsaiと打たせろ」というシーンに集約されていました。
もう一つの見どころはsaiが「自分に残された時間は少ない」と自覚し、
歩きだすヒカルについていけず、その場に立ちつくすというシーンでしたが、
saiが悟った「ヒカルに見せるための千年」にまず説得力がない上に、
それと「残された時間」との因果関係にも説得力があまり感じられず、印象は今ひとつでした。
あと、今回珍しく作画が荒れていたように思います。
佐為対塔矢名人のネット碁対局に決着がつく、という話。
前回も書きましたが、やはり「新初段戦」と比べると大一番の割に今ひとつの印象でした。
一対局に3話も費やしてしまったのが、ダラダラしていた印象の第一の要因ではあるのですが、
肝心の対局そのものの描写が極端に少なかったのも大きな原因だと思いました。
またギャラリーの描写も、「新初段戦」では「ヒカルの無謀な打ち手」への指摘という形で対局そのものを追っていましたが、
今回のそれは佐為の正体ばかりに注目が行きすぎていて対局への関心が薄く、単なる「雑音」になっていました。
あと「ヒカルの為にこの一局を用意した」という佐為による存在意義の定義も飛躍しすぎな感。
今回の話より、むしろ次回予告の「俺に打たせろ」のシーンが一番面白かったです。
ネット碁による佐為と塔矢名人の対局、という話。
佐為が打つときの棋譜読み上げや、ヒカルと塔矢名人のパソコン操作という現実における描写を一切省き、
碁盤を挟んだ普通の対局のように演出していたのは良かったです。
ただ第49話の新初段戦と比較すると盛り上がりは今ひとつな印象。
第49話にはあった、BGMの小節の合間に台詞が入るという絶妙な間の取り方も今回は見られませんでした。
和谷、アキラなどのプロ棋士や海外の囲碁愛好家など、前回同様に観戦者を使って対局の重みを盛り上げてましたが、
次回に続かせて3話連続にした分時間が余り気味のようで、前半の和谷のシーンまでは間延びしてました。
あと、ネット碁なのに持ち時間が3時間ということで普通の対局とは違うと観戦者が察するところ、
先輩棋士たちの後ろで静かに驚愕するアキラという描写は良かったです。
ネット碁で実現した対局の直前の佐為と塔矢名人の様子、という話。
二人の対局前に一話設けて無理矢理引き延ばしたような印象もありましたが、
かたやネット碁で肩慣らし、かたや明日美を相手の指導碁という対照的な雰囲気で対局を控える両者に、
塔矢名人が現れたことをネタにして盛り上がる世界のネット碁愛好家たちの姿に、
佐為(sai )がネット碁に現れた過去を盛り込むなど、対局前の盛り上げとしては、それなりに良くできていたと思います。
塔矢名人がネット碁をプレイすることの囲碁プロ界での重みが希薄だったことと、
王座戦第4局の描写が軽すぎたことが物足りなかった点。
入院した塔矢名人のところへヒカルがお見舞いに行く、という話。
塔矢名人が急病で倒れたのは、てっきりヒカル対アキラの対局を先延ばしするだけと思ったのですが、
実は入院中だけネット碁をする塔矢名人、という状況設定にしてsai(佐為)との勝負を実現させるためでした。
種を明かせばあっけないですが、なかなか上手く考えたものです。
ヒカル対アキラを先延ばしさせる意味も多少は兼ねているのでしょう。
二つの要素が重なるこのタイミングにしたことでわざとらしさが緩和されています。
ストーリーの進行度合いからすればゆっくりとした展開だったのですが、
緒方九段を使った推理仕立ての展開や、ヒカルの不器用さによる名人とのやりとりなどで飽きさせないものになってました。
それにしても、本作の回想シーンには驚かされます。
年齢ごとのキャラの描き分けがきっちりなされている分、時間の経過がよく伝わってきます。
ヒカルのデビュー戦の相手が塔矢アキラで、ヒカルにとって待ちに待った対局がいよいよ、という話。
表彰式の会場で、アキラがヒカルをあからさまに無視する様を説明無しに描いておいて、
受け手には、和谷の台詞よろしく「なんだアイツ」とヒカルと同じ目線でこのシーンを見せておき、
後から初手合いの相手であることを判明させる。佐為の説明に、もう一度先のシーンを流すという演出が秀逸。
対局前、一年前のアキラ同様に手が震えるヒカルの描写も作品の厚みを感じさせるものでした。
塔矢名人が(急病で?)倒れる伏線が、緒方九段に負けた王座戦というのは弱いです。
対局直後に大見得を切る緒方もリアリティがないですし、
ここは感想戦も終了して違う場所あるいは移動中の会話に伏線を盛り込むべきでした。