悪徳碁盤販売業者と結託していた御器曽プロをヒカルと佐為が碁でぶちのめす、という話。
なくても本編にはあまり影響なさそうな番外編的な話でしたが、
悪徳販売をやめさせるために御器曽プロを叩きのめすという名目で、
佐為の指示でヒカルに打たせるという状況をここにもってきたのが上手いです。
前回、同様の状況で自らへのハンデによって塔矢名人に惨敗したことによる、
ヒカル、佐為、そして受け手の心のモヤモヤを吹き飛ばして爽快感を得られる形になってます。
一風変わったキャラクターの倉田六段の本編への絡みも期待です。
佐為の平安時代からの回想による総集編、という話。
総集編ゆえ映像はほとんどこれまでの使い回しによって構成。
その分を、ということなのでしょうか、
場面転換に花の咲くアニメーションがふんだんに盛り込まれていて、
歴史をたどっていく展開の効果的な雰囲気づくりとなっていました。
塔矢名人を相手に、十五目半のハンデを自らに課して佐為が挑む、という話。
佐為の厳しい視線、暗めの深い青の背景、ライトアップされた盤面と人物、
一小節の曲の流れまで考えたかのような音楽、等が重なり、
名人が「歴戦の碁打ち」と表現した通りのものすごい雰囲気を醸し出してました。
対局中の佐為の台詞は碁を知らない一般視聴者には必要不可欠なものですが、
これも雰囲気を壊すことなく冗長にもならずテンポよかったです。
桑原本因坊、緒方九段、塔矢アキラ、天野記者、その他扱いの越智と和谷
と記者室に役者が実力別に揃う状況を上手く作ったのも、、
何も知らない天野記者、鋭すぎる桑原本因坊という対比で面白くなった要因でした。
ただ一点、トンネルの中にいるヒカルという描写は頂けませんでした。
「十五目半のハンデをつけてなら」という条件を受けて佐為が名人と対局する、という話。
ハンデ分を挽回するため、より積極的な打ち方が求められるという状況設定が上手いです。
その打ち方に関しては碁会所におけるヒカルの特訓によって説明済みであることも特筆もの。
映像面では対局前、佐為が盤前に座っていてヒカルが座れないという描写が、
周りの人にはヒカルが緊張のあまりという風に映るという二つの意味をもたせていて面白いです。
それに気づいた名人がヒカルに声をかけることで、
自分への視線はないと改めて痛感する佐為が盤前から退くという描写も上手いです。
プロ入りの決まった直後におけるヒカルの日常を追う、という話。
塔矢名人との対局が決して夢ではないところまできたことに
興奮するヒカルの姿が描かれたりしてはいるのですが、
「プロになった喜び」ってこんなもの?という印象をもってしまいます。
ひとつには碁会所でさらしたプロの世界の無知ぶりというヒカルの性格からのものなのでしょう。
しかし伊角の今後、対局を欲する佐為、塔矢名人と座間王座の対局などなど、
ヒカルとは直接無関係な話題や、本人のあずかり知らぬところでのヒカルへの注目に時間を割いてしまって、
ヒカルの身近な周辺(家族・親戚や友人)のそれが無かったのが
「プロの喜び(或いは実感)」を感じにくくした原因だと思います。
前回の話ではそういうシーンもありましたが「1話開けたらもうプロのこっち側」という唐突な感じがします。
せめてヒカルと一緒にいるシーンもあった和谷にはそういう喜びを演じさせて欲しかったものです。
ラスト、「新初段シリーズ」で塔矢名人がヒカルを指名するのは強引な展開の気が。
ヒカルのプロ合格がかかったリーグ最終戦に決着がつく、という話。
他力で合格の目がある伊角が「ヒカルが負けてプレーオフなら誰かが伝えにくるはず」と、
ヒカルの勝利、即ち自らの不合格を悟るという演出は、
実はプロ棋士での昇降級にかかったリーグ戦にもあるリアルなもので、
今回の演出においてもそれ自体はひとつの見せ場となっていました。
ただし、この演出でヒカルの合格まで(受け手に)示唆してしまったのは、
「演出の策におぼれた」であり、頂けませんでした。
ここはやはり正攻法で、ヒカル自身による「プロ合格の瞬間」前後の心境を描いて欲しかったです。
プロ試験最終戦、という話。
一番の見どころは、対局前のヒカルと越智の会話でしょうか。
塔矢同様、塔矢を異常に意識するヒカルの態度を見て取った越智が、
「塔矢はヒカルのことは眼中にない」と姑息な嘘で虚勢をはったまではよかったものの、
「ヒカルに勝てたら塔矢のライバルとして見てもらえる」とうっかり漏らしてしまい
(この瞬間、視聴者は嘘がばれることに気づく)、少し間をおいて双方ともその嘘に気がついて、
越智が逆にうろたえるという展開。人間味があって面白いです。
映像面では、白い盤面に次々と石が置かれていく事で「読み筋」を表す描写が良かったです。
ルリの「能力」で再び命は救われるもタワーからの転落で結果的に敗れた留美奈。その後、という話。
3敗で後のないヒカルと2敗の和谷の対戦、という話。
前半は、これまでにも散見された「薄れる佐為の存在感」と、
かつて碁の大会で盤側から口を出したヒカルを叱った職員との再会シーンで、ヒカルの強さを表現。
後半の対局では、ヒカルに細い道筋での勝利の道があることを気づく佐為、
それに気づかず自分の勝利を確信する和谷、でヒカルは? という形で緊迫感を演出してました。
映像面ではヒカルの好手を違うアングルから3回見せるところに工夫を感じました。
この時、最初のカットではインパクトを押さえ普通の指し手のような印象を。
2回目以降のカットでインパクトを感じさせるというメリハリの付け方も良いと思います。
これを見た瞬間「筋肉番付」の映像演出を思い出したのですが、ひょっとしたら参考にしたのかもしれません。