アニメコラム「わがままフェアリー ミルモでポン!」

アニメコラム集「わがままフェアリー ミルモでポン!」

第10話第14話〜 第16話 : 第17話 〜 第19話 : 第23話 〜

第19話「花火と魔法とおじいちゃん」

放映日2002年8月17日

あらすじ

楓と遊びに行く約束を電話で断ってきた悦美。なんだか元気がなさそう。
約束の日、楓は街のカフェテラスで偶然悦美と出会う。悦美の横にはパフェを頬張る老人。
その老人は誰あろう「伝説の花火師」と呼ばれる職人で、悦美のおじいちゃんだった。
しかしおじいちゃんは寄る年波で花火師としてのやる気をなくしていた。
悦美の元気のなさもそれが原因だったのだ。
悦美を元気づけるためにも楓は悦美とともにおじいちゃんを手伝うことにしたのだが・・

レビュー

やる気をなくしたおじいちゃんを、楓たちが励まし、手伝うというプロセスを経て、
花火師としてのやる気を取り戻したおじいちゃんが、
自身の壁でもあった「四尺玉」の打ち上げに見事成功させるまでが今回の本筋。

楓たちが花火師の仕事場を手伝うという中盤の展開には、
悦美の祖父という関係により、親友への思いやりという動機づけもしてました。
前回の話で線香花火を知った以外、ミルモら妖精は花火のことを全く知らないことにして、
おじいちゃんの作る花火に興味津々なミルモの姿。
そのミルモに手持ち花火やドラゴンなど市販の花火を披露するシーンは、
楓と結木のいい雰囲気をも演出。
クライマックスでは四尺玉の盗難からあわや爆発というピンチを
楓とミルモのコンビの魔法で脱出してことなきを得る。

と、花火師の復活から四尺玉実現への苦悩というゲストキャラの動きを軸にしながらも、
作品としての大枠から外れないように話を組み立てたところは評価できます。
ですが、それでも本編はおじいちゃんの描写に少し比重をおきすぎたように思います。
花火の邪魔をしようとするヤシチをもっと早い段階で登場させて、
ちょっかいを出すヤシチと、それを撃退するミルモとの小競り合いなどを入れて、
コミカルな雰囲気を醸し出した方がいつもの「ミルモ」らしく仕上がったと思います。

安純が今回に限って、楓と結木との間に割り込んでこなかったのは、
舞台が悦美の祖父の仕事場という、いわば悦美のテリトリーだったからですが、
ここのところも強調不足に感じました。
割り込めないことに対する地団駄をふむ安純の姿を
ヤシチと安純の相談するシーンに入れればちょっとした見どころになったと思います。

あと、結木が花火製作作業の手筋がいいというところまでは許せるとしても、
四尺玉設計のアイデアを思いついておじいちゃんにアドバイスさせるのは、
流石にご都合主義に過ぎると思いました。
どうせなら結木に小説家になる夢を語らせて、おじいちゃんがやる気を出すという演出などはどうでしょうか。

今回特に感心したのは、悦美が楓に花火師の仕事場を紹介していくシーン。
舌を噛みそうな専門用語がなかったのも幸いしたとも言えますが、
説明する悦美の台詞が、淀みがなく、さりとて棒読みでもなく、
キャラクターの台詞としてきっちり演技できていました。
声優(比嘉久美子)さんがすごくがんばっていたと思います。

第18話「夏だ! 海だ! 松竹です!」

放映日2002年8月10日

あらすじ

どこかの小さな離島にある別荘にやってきた楓、結木、安純、松竹の四人とミルモたち。
そこは松竹家の別荘。当初、松竹は楓と二人っきりになりたかったのだが、
「敢えて結木も招待し『結木よりもカッコイイ』とアピールすべし」との安純のアドバイスに従ったのだ。
それは「自分も協力する」と言って同行した安純が、結木といい仲になるための目論みでもあった。
四人の恋模様が展開されるなか、ヤシチの失態により別荘に入れなくなってしまう・・

レビュー

楓がマイクを手に入れるまでの少しシリアスだった3話から明けて、
夏の別荘を舞台に、四人の恋愛バトルに戻って明るい雰囲気のなか、全編見どころ満載の大爆笑話でした。
そんな笑いのネタが随所に散りばめられた展開にあっても、
話全体には配慮が行き届いた、非常に練られた筋立てが楽しめる要因になっていたと思います。

まず冒頭のシーン。二人きりという当初の計画から全員参加に変更という松竹と安純の会話を入れることで、
松竹は、楓と直接いい仲になることからすり替わって、カッコイイところをアピールする、
安純は、それに乗じて結木を口説き落とす、という状況設定がハッキリ理解できます。
自分の目的のために、松竹の目的をすり替えてしまった安純の狡猾さも表されています。

別荘の全自動住宅(?)は、松竹の金持ち自慢と思わせておいて、
実は別荘に入れなくするための舞台装置。
落とし穴、テニス中の襲撃と、ミルモを執拗に狙うヤシチの姿も、
「ピッカリ雨雲くん」の自爆に至らせて全自動住宅の電気回路をショートする、
という展開が不自然にならないように作り上げるための伏線。
そこから別荘に入れなくなるのが全く予想外の展開。
「全自動住宅」「ヤシチ」という全然つながりのなさそうな2つの要素で
この展開にもってきたのは「お見事」というしかありません。

クライマックスでヤシチが溺れてしまうのは、
今後パターン化されるであろう、楓のマイクで援護→ミルモの魔法という「必殺技」を放つため。
ヤシチがその任につくのですが、風で海に飛ばされるのは、
前半、迷惑をかけた償いとしての「晴れ乞い」中で海の近くにいたという理由づけ。
松竹が助けに飛び込むのは、楓へのアピールという意味づけをしていますし、
前半には泳ぎの上達を伏線にすることで、無謀な行動という印象を緩和しています。

ミルモの魔法で事なきを得た松竹は、怪我の手当を楓にしてもらうことで小さな幸せを獲得。
それを「大きな幸せ」と勘違いすることでオチにしました。
ちょっと強引な気もしますが、
サブタイトルにもある通り今回は松竹が主役なのでそれほど違和感はありません。
楓にはアピールできませんでしたが、「空回りする、可哀想だけど笑えるキャラ」
だということは視聴者にバッチリアピールできたと思います。

今回の話では、必要(重要)なシーンまたは演出部分をまず用意して、
そこに至るまでの道筋を逆算して作ったという印象が非常に強かったです。
その道筋を複雑にして要素を盛り込むことで、味わい深いお話に仕上がったと思います。

このような見事な構成のなかに、それぞれのシーンでは見どころツッコミどころ満載。
特に印象に残ったのは、まずミルモたちがテニスをするシーン。
ミルモたちの動きといい、ボールのはねる音といい、
明らかに卓球を意識させるための作り手の「遊び」で面白かったです。
それから、ミルモの魔法で松竹とヤシチを救うシーン。
水の塊で大きな腕を作ったようですが、きれいに描けていたと思います。

ヤシチが落とし穴で失敗するところは、
落とし穴の覆いが頑丈過ぎたのが原因だったようですが、分かりにくかったです。
いつも通りの下からの構図よりも、俯瞰の構図の方が良かったと思います。

第17話「ガイア族のおくりもの」

放映日2002年8月3日

あらすじ

ミルモの魔法を強化するアイテム「マイク」を手に入れるため、
ガイア族の里までやってきた楓とミルモ。そこには5つの神殿がそびえていた。
それぞれの神殿に火・水・土・風・雲を司るガイア族の妖精がいて、
「聖なる木」にある捧げものをすれば「マイク」が手に入るというのだが、それが何かを知るためには、
ガイア族の与える試練をクリアしてヒントを教えてもらわなければならない・・

レビュー

結論からいうと、前回と同じく話全体が間延びしてしまっていました。
やはり、3話分は長すぎたのだと思います。
今回の話では、ゲームでいうところの「おつかいRPG」的展開が、
ダラダラ進行している印象を強く与えていました。
5人の妖精を別々に登場させる分、カット数が増えるので
「ミルモの里へ・・」と別々の話にしたいという意向は分かるのですが、
話の進み具合の割に楽しませる要素が不足していたのでは駄目だと思います。

あと、これも前回同様気になったのは「24時間以内」という楓への足かせ。
作りとしては、「マイク」を手に入れるための涙を流すのに必要な要素だったのですが、
ワルモ団のユーモラスな「悪行」と比較してしまうと、
楓が「タイムオーバーという危険をおかしてでもみんなを救いたい」
という言動が嘘っぽく見えてなりません。
例えば「ガイア族の里で○時間以内に手に入れないと振り出しに戻ってしまうので、
苦労が水の泡となってしまうことへの悔し涙」という風にすれば、
本編よりは「悪行」とのバランスもいくらかとれますし、
試練をクリアするときの苦労も生かせるのではないでしょうか。

細かいところで気になったのは、
ワルモ団によって大勢の人が洗脳されてしまったことを描いたシーン。
路上で人が踊るカットは余計だったと思います。
むしろ普段通りの生活の中に「ワルモ団」という台詞を頻出させて、
ワルモ団のあまり害のない「悪行」を強調させた方が面白かったのではないでしょうか。

と、全体的には今ひとつな印象でしたが、個々のシーンでの見どころは多かったです。
洞窟を進むシーンでのミルモの魔法で「モーターボートにしとけば良かった」と後悔するところ。
ガイア族の試練では、火の妖精の試練をクリアするときの魔法で、
石焼き芋販売車とミルモの売り子姿。
土の妖精の試練をクリアするときの、穴を掘り続ける二人の姿。
一件落着したあとミルモに頼まれての楓の魔法のやる気のなさ。
などなど、動きも面白くつけられていて楽しかったです。

今回、「マイク」の登場で楓に魔法がつくことになりましたが、
これをどのように使っていくのかは今後の展開次第。
魔法シーンのバンクに関しては、
楓の口の形に違和感を感じた他には、特に思うことはなかったです。

第10話第14話〜 第16話 : 第17話 〜 第19話 : 第23話 〜
( 更新:2002年8月26日 文責:ごま )