「機内にて」 |
ウェダ | あ〜久しぶりね、飛行機。あっ、あんなに小さく見えるー。
ほらほら、ハレも見たら? お? |
ハレ、震えている。 |
ウェダ | 何? どうしたのよ? あー、そっかー。飛行機初めてで怖いのね。うっふっふ。 |
ハレ | (いや初めての飛行機よりグゥが怖い。
なまじ姿が見えない分、何をやらかすか・・。
あいつが一人で荷物室に乗り込んだってことは。
考えれば考えるほど不安に押しつぶされそうになる。) |
ウェダ | そんなに心配しなくても大丈夫よ。ひとっ飛びで着くわよ。 |
ハレ | ひとっ飛び?
(そうか、2時間くらいで着くんならグゥもおとなしくしてるかも)
「ひとっ飛び」ってどれくらい? |
ウェダ | そうねー。聞いてみたら? |
ハレ | あ、すみません。 |
スッチー | はい、何でしょう? |
ハレ | あのさー。これどれくらいで目的地に着くのー? |
スッチー | 飛行時間でございますね。12時間ほどでございます。 |
ハレ | じゅうにー! じゅう・に・じ・かん(バタリ) |
・・・ |
ハレ | 母さん、あと何時間? |
ウェダ | あのねー、さっきから5分もたってないわよ。 |
ハレ | そ、そっかな。時間がとっても長くかんじられるよ。 |
ウェダ | んもう。いくら初めてだからって。男の子でしょう。だらしがないわよ。 |
ハレ | (うっ、いや、母さんは知らないからあんなこと言ってるんだ)
はあっ。俺も母さんみたいに何も考えずに生きることができたらなぁ。 |
ウェダ | んー?! なにそれ。人を単細胞みたいに言わないでくれる。
すみません(スッチーを呼ぶ) |
スッチー | あ、はい。 |
ウェダ | この子に何かおもちゃとか頂けます? |
スッチー | はい、かしこまりました。 |
ハレ、風船の飛行機で遊ぶ。ウェダ、満足気。 |
ウェダ | 遊んでる遊んでる。よかったー。なんだかんだ言ったって子供よねー。 |
ハレ、風船をしぼませる。それを見て呟く。 |
ハレ | 張りつめた空気でしか自分を保てない・・。俺みたい。 |
ウェダ | へ? |
アナウンス | 本日はジャングル航空をご利用いただき誠にありがとうございます。
これより機長より挨拶がございます。 |
ハレ | (俺ってどうしてこうマイナス思考なんだろう。
何でも悪い方へ悪い方へ考えていっちゃうんだ。
バックに機長の挨拶:え〜、本日はハレなり。本日はハレなり
母さんをみならって強引にでもプラス思考にもっていかねば。
大体今まで何も起こってご挨拶させていただく・・いい?!) |
アナウンス | わたくし、が、機長っす。ども、初めまして。 |
ハレ | うわ〜! なんか、すっげえ聞き覚えのある声が。あぁあ〜。 |
ウェダ | ハレ、うるさいわよ。 |
ハレ | (これじゃいつものマイナス思考だ。グゥが機長だなんて。そ、そんなわけないよな。ふふふふ・・) |
アナウンス | 今回機長は初飛びですのでよろしく。 |
ハレ | いやいやいやいや。[プラス思考。グゥなわけがない。]([]内、何度もくりかえし) |
ウェダ | 他のお客さんに迷惑よ。 |
アナウンス | え〜、飛行機の操縦は初めてなのでたまに揺れたりするかもしれませんが。 |
ハレ | えっ! なに、初めてって、どどどどど、どういうことそれ?! |
アナウンス | まあ、愛嬌っちゅうことで気にするな。 |
ハレ | 奴だ! 100パー奴だー! なんかいい顔で言ってそうだ今のセリフはー! |
アナウンス | よう。 |
ハレ | 奴だ奴だ。絶対そうだー! うえ〜ん。 |
ウェダ、ハレに拳をうち下ろす。 |
ウェダ | うっるさいっ! って、さっきから注意してるのが聞こえないの! |
ハレ | (涙声で)だ、だって聞いてよ〜。 |
ウェダ | 何よ?! |
ハレ | (涙声で)機長の声。 |
アナウンス | それでは「空の旅」とかいうやつをごゆっくりお過ごしください。 |
ハレ | (涙声で)今のグゥの声だよね〜。 |
ウェダ | あらホント。 |
ハレ | だろう。 |
ウェダ | よく似てたわねー。まるでグゥちゃんみたい。 |
ハレ | (「まるで」っちゅうかまんまだよ・・。) |
ウェダ | 女性の機長さんが活躍してるんだ。 |
ハレ | いやだから、感心するより、グゥが機長だってことに驚くべきだろう。 |
ウェダ、ハレの頭をグリグリする。 |
ウェダ | グゥちゃんが機長? あーら、面白い想像するわねー。 |
ハレ | (子供の発言権って、こうして大人に一方的に奪われていくんだよねー。
ならば子供の特権で・・)
ぼ、ぼく、操縦室に行ってみたいなー。 |
ウェダ | はぁ? |
ハレ | カッコイイ女の機長さんが操縦してっとこ見たーい。 |
ウェダ | あら、それいいわねー。 |
第2回 |