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ごまの「アニメ批評日記」

『出撃!マシンロボレスキュー』

テレビ東京系で2003年1月8日(水)夕方6時より放送のテレビアニメです。

更新:2003-06-24

2003.04.26 第9話「見ろ!エクス合体」

ジェットロボを傷つけたことで責任を感じた太陽が隊を飛び出してしまう、という話。
この手の作品にありがちな、主人公の挫折・脱走が元の鞘に納まるまでを、深刻になりすぎないようにサラリ描いている、
ととれないこともないですが、どちらかというと全体的に盛り上がりに欠けた感がありました。
エクス合体やロボマスター変更のギミックは楽しませる要素があったものの、
それによる面白さを十分に引き出してないと思いました。
ロボマスターを引き受けつつも太陽のことを心配せずにいられないリンや
万全な状態でない状況下でどうにか工夫して戦うレスキュー隊の緊張感など、
もう少し強調して盛り上げる方向に演出した方が良かったと思います。

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2003.05.02 第10話「コンビナート、パニック!」

レスキュー隊にテレビ番組の取材がきて、その最中に災害が発生する、という話。

本作の求めるべき内容から見ると、残念ながら完全な失敗作。
原因は言うまでもなくチャーミー佐藤のキャラメイキングでした。

本編のコンビナート火災は、直接的には敵の来襲が原因となっていますが、
自動消化装置をオフにした佐藤の罪は、どう贔屓目に見ても許されるべきものではありません。
ここのところをどう「解決」するのか注目していましたが、
結局なんの工夫もありませんでした。

戦いがすんだ後、「一歩間違えれば死人が出ていた」と佐藤が一喝されるところで、
「問題にはならなかった」と逆説的に作り手がフォローしているつもりなのでしょうが、
あの状況を見るととても「良かった」などとは思えず、
火災発生から抱き続けた釈然としない思いが鑑賞後まで残りました。

作りとしてはおそらく、「テレビ番組」→「取材中に火災」というプロットがあって、
ワイドショーの司会の「仕切り屋」のようなチャーミー佐藤のキャラメイクを後からもってきたのでしょう。
とすると作り自体が、本編の佐藤がとった「受ける為の演出」を地でいっていたわけです。
災害を扱う本作の内容ではありますが、
あくまでネガティブな心象を排した上で「みんな無事で良かった」と受け手に思わせるのが、
本作のエンターテインメント性のはずです。
ならば本編のような展開にするのではなく、佐藤には途中でしっかり改心させて、その直後に来襲による災害。
佐藤には「自分の責任で災害を起こさなくて良かった」と思わせるように指向するべきでした。

展開そのものは大いに疑問ではありましたが、
キャラクターの性格描写という点では、テレビ取材という非日常要素を使って、上手く表現できていたと思います。
特に舞い上がってるリン、台本棒読みのエースの描写が面白かったです。 映像的には演出意図通りに仕上がっていてほぼ文句なしです。

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2003.05.13 第12話「笑いは世界を救う!」

イエローギアーズが行方不明になった教授の娘の救出のため、トラップが待ちかまえる遺跡に潜入する、という話。
話の作りとしては、遺跡の中に閉じこめられているサキに対する芦川ショウの台詞
「みんなの笑顔を守るため事故や災害と戦ってる〜笑いは世界を救う」が出発点。
この台詞を生かす状況として、ストーリーの流れを逆算して作ったのでしょう。
今回メインを張る芦川ショウ&美波ケンのコンビ漫才を軸に、
遺跡のトラップという場面設定を上手く使って、
真面目なレスキューと全編コミカルムードを見事に両立させていました。
冒頭の漫才シーンをはじめ、敵キャラそっちのけで長めに時間をとって描かれるコンビのコミカルぶりが、
二人の初主役回という雰囲気をよく演出しています。
欲をいえば、芦川ショウ&美波ケンが笑いにこだわる根元、
彼等自身の内面にあるものも一緒に描いてくれていれば更に良くなったのでは、と思いました。
今回はイエローギアーズ出動ということで、速水大地&水前寺小百合も活躍しますが、
先に主役回のあったこの二人は既にキャラクターがこなれてきているという印象。
小百合の「上品な押しの強さ」と、それに翻弄され気味な大地の「おっとり真面目」の組み合わせは、
漫才コンビに負けない名コンビとして楽しめました。

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2003.06.04 第15話「無敵、ハイパーステルスロボ」

鈴と太陽がステルスのデータ調査に訪れたマシンAI研究所に、ジェイがステルスロボ用マシン強奪に現れる、と言う話。
一番印象的だったのは、鈴とジェイの肉弾戦。
何種類かのパターン動作を組み合わせて動いているように見せる、昔ながらの映像演出手法を久々に見ることができました。
先の回の太陽に続いて、ヒロインの鈴がジェイと相対するという演出は、
メインキャラである太陽と鈴の強調になっていて良いと思います。
本編そのものは、ハイパーステルスロボのお披露目という感じで特筆すべき点はなし。
ブラッド尾藤長官が明かした「もともと軍事目的のロボで、レスキューロボとステルスロボの出自が同じ」
という設定が今後どう生かされるかに注目です。
映像の方は、キャラクターの動きがオーバーアクションだったのが少し気になりました。

脚本:吉野弘幸 絵コンテ・演出:吉村憲由 作画監督:竹内浩志

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2003.06.11 第16話「ケンのレスキュー魂!」

土砂災害で取り残された山の診療所から街の病院へ搬送しようとした患者の一人は、美波ケンが嫌がった骨髄移植の相手だった、という話。
予防接種で注射を痛がるエースとそれを見ていて同じように痛がる太陽達の描写がギャグになっていて、
冒頭から笑わせます。
しかも、このギャグ描写との中心だったエースと、注射をサボった挙げ句ドナーを嫌がって逃げ出そうとするケンが、
越境コンビを組むという、それ自体が見どころとなる異例の展開にすることで、
話の核心となる「ケン=ドナー、ひさし少年=レシピエント」という構図を隠す効果をもたせていて、
この辺りの話の組み立て方は上手いと思いました。

今回主役となる美波ケンはハーフの美少年。
感情によって男言葉と女言葉を使い分ける彼は、
芦川ショウと漫才コンビを組むひょうきんさを見せる一方、自分勝手でいい加減なところがあり、
それでいて人命救助の際は猪突猛進な熱血漢に変わるという性格。
メンバーの中ではどちらかというと脇役的存在なのですが、
設定されているキャラクターは太陽ら主役に勝とも劣らないほど魅力的だと思います。

今回は、そのケンの魅力を伝えるべき展開だったのですが、それが出来ていたかというと大いに疑問。
まず骨髄移植を嫌がる思考が悪い方(?)へ発展、隊を脱走という行動にでる展開が無理矢理過ぎます。

要はあまり仕事熱心でないところがあることを見せればいいわけですから、
むしろケンの自分勝手な性格の方を生かして、
「注射の日は洋服を新調(買い物)に行くつもりでサボろうとしていて、
しかも骨髄移植手術の日は女優である母の舞台かなにかを新調した服を着て見に行く予定だった」
といった個人的な用事を優先して任務にサボろうとしている事にして、不満たらたら嫌々ながら任地に赴く形。
これもかなり無理矢理ですが、除隊ほどの不自然さはなかったのではないでしょうか。

そうしておいていざ現地に着いた後は「仕事はきちんとこなす」というところを見せれば
キャラクターの設定にも合っていたと思います。
この例だとケンの女の子っぽいところもアピールすることができます。

そして一番問題だったのは、周りが火の海という窮地に自分がドナーだと知って生還を決意するところ。
人命のためなら自分の命の絶望さえひっくり返すという正に「ケンのレスキュー魂」だったわけですが、
こちらは逆に自分勝手さやいい加減なところばかり強調された本編が悪影響して、
そのケンの姿がやはり唐突で素直に感動することができませんでした。

直前のシーンでケンが自分をさておいてひさし少年を救出するところがありますが、
元々がレスキューという仕事だけに、このシーンだけではケンのレスキュー魂の説得力としては弱すぎました。
ケンがひさし少年と語りあうシーンなどを設けて、
いざレスキューにかかったら熱血漢に豹変というケンの魂がにじみ出るような演出をして欲しかったです。
もしくはいっそのこと、今回は自分勝手な性格だけで押し通す形でレスキューするという方法も考えられます。

振り返ってみるとエースの役どころ(とケンとジェイの絡みも)描く必然性とはいえ、
ファイヤーロボ対ステルスロボの時間が余計だったように思います。
第12話「笑いは世界を救う!」のように敵キャラとの戦いは短くすれば良かったのではないでしょうか。

脚本:吉田伸 絵コンテ・演出:福本潔 作画監督:榎本勝紀

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2003.06.19 第17話「立て、サイレンキャリーロボ!」

最高時速700キロのリニアモーターカーの開通初日、列車に爆弾が仕掛けられジャックされる、という話。
任意の速度以下になると爆発するという設定は「新幹線大爆破」というかつての映画と同じです。
この映画、鉄道マニア曰くディテールはいい加減(当時の国鉄が非協力だった)らしいのですが、
新幹線を併走させての解体器具の受け渡しや、ポイントを切り替えての衝突回避などスリル満点。
私は子供の頃この映画をハラハラしながら見ていた記憶があります。

戻って本編は、アリスの過去(女優時代)、アリスと誠の確執、そして列車ジャックと、
それぞれ単体で一本できてしまいそうな要素をただ積め込んだだけ、
ロボットで橋脚を移動させるのも「たった今思いついた」という印象です。
しかも子供が必ずといっていいほど憧れる列車を使った一話であるにも関わらず、
上記の映画のような楽しませる工夫が皆無だったのは残念でした。

脚本:吉野弘幸 絵コンテ・演出:菱田正和 作画監督:佐々門信芳

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更新:上記参照 作成:2003-05-02 文責:ごま(goma)
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