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ごまの「アニメ批評日記」

『ボンバーマン ジェッターズ』

更新:2003-06-24

2003.04.26 第23話「シャウトの涙」

「マイティは死んだ」というムジョーとバーディの会話をシャウトが立ち聞きしてしまう、という話。
シロボンにとっての悲しい事実(?)である「マイティの死」を知り、それをシロボンに言い出せずに苦悩するシャウト、
というのが今回の本筋だとサブタイトルは示しているわけですが、
シャウトの苦悩をモノローグなどで直接的に示すのではなく、
苦悩の原因を分かってないシロボン達が元気づけようとする行動との対比で表現しているのが秀逸。
これが同時に、マイティの死という事実(?)を知らぬがゆえのシロボンの悲しき滑稽さという描写にもなっています。
ムジョーが彼にとっての敵であるマイティの死を語りながら涙するのは、ふつうなら変な行動になってしまうのですが、
敵味方が半分なれあうかのように戦うギャグストーリーという作品全体のトーンが生きていて説得力があります。
この辺りの演出も十分計算されたもののようで上手いと思います。
映像的には、都合3回あった、止め絵のカットを連続して雰囲気を演出しているのが面白いです。
作画枚数的には手抜きともいえますが、それぞれのシーンの意図が明確であるため演出として成立しています。
シロボンがマイティの死を知ったところで流れる風の音が、
ギリギリ聞こえる音量にしてあるのもシロボンの心の空虚さを上手く表現できていると思いました。

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2003.06.04 第29話「大きな星のメロディ」

「ボンバーマンジェッターズ」第29話

夏海館の新メニューに使う山菜を摘みにやってきた星は全ての生物が巨大な星だった、という話。
巨大な山菜を普通に描いておいてから、猫→メロディの足→メロディの全身と順に出していくことで、
いわゆる「ガリバーネタ」のありがち感を緩和しているのが秀逸。
巨大な星と分かったところで、同時に冒頭のシーンの断崖が轍(わだち)と受け手に分かるのも面白いです。
ルーイがシロボンの空想の形で出てくるのは、よく分からない演出ですが(前2話見逃しの為?)、
都合9回も出てくる割には途中実体化したりバーディにも語るなどして変化をつけ、ギリギリ飽きさせずに収めていました。
音楽の使い方も面白いです。本来の使い方と微妙にずらすことでコメディ描写になっています。
細かいところでは、メロディが引っ越し直後による寂しさを吐露するところでのシャウトの表情が印象的。
これまで描かれたシャウトの境遇に受け手を瞬時に思い至らせる上手い演出でした。

脚本:前川淳 絵コンテ・演出:岩崎知子 作画監督:香川久

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2003.06.12 第30話「カレーと王子様」

「カレー、スゥキスゥキスゥキ!!!」

喉に刺さったトゲトゲが抜けなくなったドドンパ星の国王である父のために、ボンゴが「宇宙にひとつしかないのど飴」を探す、という話。

冒頭のシーンでは、
盗み食いするシロボン、タッパーを用意するシャウト、落ちるところまで落ちる(鍋扱い)ガングなど、
ジェッターズの全員のキャラを生かしつつのコメディ演出で面白かったのですが、
タイトル以降は、まるで別の人が作ったかのよう。

本編自体はボンゴを主役に据えるという着想から、
彼が立て役者となった「サンライズサンダーボム」を見せ場にもってきて、
その必殺技を効果的に出せる舞台として「水のあるオアシス」を用意。
一方「宇宙にひとつ〜」を探す必然として困っているボンゴの家族を登場させる。
登場させるからには面白くということで全員ボンゴとそっくりさんな一家を、
という風に作っていったのだと思われます。

ですが「カレーが大好きなドドンパ星人」「実は王子だったという真相」などが唐突で、
あからさまにでっちあげた印象が大き過ぎたがために、
話全体があざとく感じさせる作りになってしまいました。ゆえに捻ったサブタイトルも逆効果。

執事ダンゴの登場で一度そっくりネタをやっているのに、
家族紹介のところで同じことを繰り返すのも間延びするだけです。
敢えて家族を出すなら、ボンゴは家を捨てたので会うことはしないが「のど飴探し」は引き受ける、
という形にしておいて最後にサラリと登場させるなどの方が幾らかましだったと思います。

それでもどうにか見られるのは人物が生き生きと描かれているところが大きいです。
「カレー、スキスキスキ!」「(自分のフルネームを)ボキも言えないボンゴ」「(気品の気の字もないと言われて)いや〜照れるボンゴ」
などなど今回主役となったボンゴの表情・演技が絶妙に決まっていて、
ボンゴのキャラクターの魅力が一層増したのが大収穫といえると思います。

脚本:まさきひろ 絵コンテ:小寺勝之 演出:菊池康仁 作画監督:吉川美貴

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2003.06.18 第31話「ミスティ大作戦」

花の香りがする納豆を巡るジェッターズ、ヒゲヒゲ団、ミスティの争奪戦を回想する、という話。
サブタイトルが示す通り、今回の本筋はミスティが回想するマイティとの思い出。
一見すると過去のエピソードが単に順を追って流れているだけに見えますが、
よく見るとバーディ(マイティ)視点とミスティ視点という二つの視点の切り替えがあることに気づきます。
使わなくなったジェッターズのコンテナ船と意識不明のMAXという、
共に修理(治療)中の状態を眺めるバーディとミスティの回想という形から本編に入ることで、
異なる視点でのシーンのつなぎ合わせを受け手にことさら意識させることなく
一本の話として見せていたのが上手い作り方でした。

今回は、主にミスティ視点での生前(?)のマイティの姿が大きな見どころ。
バーディとのやりとりでは真面目なジェッターズの一員ぶりを見せる一方、
ミスティに対しては天然ボケキャラぶりを発揮する、という描き方が面白いです。

これまでの話によるシロボンの回想から見たときの天然ボケっぽいマイティの姿は、
てっきりシロボンの年齢に合わせた接し方だからであり、
普段は真面目な性格の人だと思っていました。
もっともキャラクターの整合性はとれているので、
私の今までのマイティのイメージは兄を美化するシロボンと同じ視点へと、
作り手の意図により誘導されていたのかと感じました。

また回想シーンのマイティはミスティ視点というフィルターで美化された映像ということ。
これが今回の話における演出上のひとつのポイントでしたが、
マイティのアップの表情や台詞のカットの前後に
必ず「ミスティがマイティの方を振り返る(見る)」というカットを入れることでミスティ視点が強調され、
ミスティによる美化、即ちミスティがマイティに惚れているということを上手く表現していました。

「泥棒と宇宙盗賊はどうちがうの?」

マイティ役の演技も好印象。
真面目なところ、天然ボケなところ、
そして何気ない一言でミスティの心を惹きつける天然プレイボーイぶりの演技が絶妙で、
ミスティがマイティに惹きつけられていることに説得力を増していたと思います。
また落とし穴からの脱出を急ぐミスティに対する
「さすがミスティ…えへっえへっ」というマイティの笑い方には、
シロボンの面影が出ていたように感じられました。

映像で印象的だったのはマイティがミスティの耳をさわるシーン。
耳をさわってることを示す「いい耳してるね」の台詞の直後に
マイティのアップ、ミスティのアップ、ミスティの後ろから見たミスティの耳を触るマイティ、
という止め絵の3カットを無音で切り替えることで、
時間の流れがストップしていることが良く伝わってきます。
冒頭の惑星効果シーンもそうですが、
本作では複数の止め絵を連続的に切り替えていく映像表現が秀逸だと思います。

ひとつ気になったのは、
ミスティが意識不明のMAXを前にマイティを連想、
即ちMAXにマイティの面影を見るということの説得力が感じられなかったこと。
シロボンの場合はこれまでの話できちんと描かれていましたがミスティのは記憶にありません。
いくつか私の見損ねた回があるので、そこで描かれていたのかも。

脚本:吉田玲子 絵コンテ:小寺勝之 演出:宍上坪亮樹 作画監督:あべたくじ

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更新:上記参照 作成:2003-05-02 文責:ごま(goma)
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