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ごまの「アニメ批評日記」

『ボンバーマン ジェッターズ』

2003.06.24 第32話「憧れのシロボン」

「ボンバーマンも楽じゃないよね…」

家出してシロボンに弟子入りを希望したボンバー星のプーイを、飼い主のダイボンが連れ戻しに来る、という話。

ストーリーとしては上の粗筋が全てのコテコテ人情コメディで、
とりたてて面白いというわけでもなかったのですが、
随所にメリハリの利いた細かい演出がなされていて、
飽きることなく和みつつ、ついつい最後まで見させられてしまった、という印象。

一番印象的だったのは、プーイ&ルーイの台詞の描写。
二匹は「ぷ〜い〜、る〜い〜」などと、直接的には何を言ってるのか分からないのですが、
それを説明する際、
・シロボンやシャウトが一々翻訳して台詞を繰り返す場合、
・字幕で同時に表す場合、
・翻訳がなく相手キャラのリアクションで理解させる場合
と、コメディとシリアスやテンポの遅早に応じて使い分けていたところに
演出の上手さ・細やかさを感じさせました。

他には
・弟子入りを決める3本勝負を全部引き分けにして視点をシロボンに移すところ
・「なんたってボムスター3個」の台詞を後から分かる伏線にしているところ
・シロボンとダイボンの対決で、エコーがかかったシロボンの台詞からダイボンの回想に入るところ
・シロボンが負けたところのルーイが全てを察したかのような動き
など。

ところでダイボンのキャラクターや対決に現れるシロボンのいでたちは、
往年の名俳優を真似たもの。
いわゆるパロディですが、ネタを拝借しているだけで厳密にはパロディではないので、 ダイボンのキャラ描写に必要な「自分は不器用ですから」の台詞以外は、
サラリと表現(都合4回あるパトカーのサイレンとか)していたことにより、押しつけがましさがなく、
元ネタを知っていればニヤリと、知らなくともそこはかとない面白さを感じるように出来ています。
「拝借するだけで面白いと感じてもらえる」などと考えるどこかの作り手の方には
ぜひ見習って欲しい、絶妙といえる表現のさじ加減でした。

終わってみれば「男は、一度言ったことは後には引っ込めない」をキーワードにして、
シロボンが4個目のボムスターを手に入れる為の話でした。
同時にタイボンが、「男」を強調するための台詞を自然に言わせるためのキャラだと分かります。
ボムスターを得る展開としては不釣り合いなギャグにしか見えないタイボンのキャラ設定も
ちょっとした面白さが出ていたと思います。

難を言うと、シロボンがタイボンに負けた後のことを考えて汗を流すところの想像図は、
今回ルーイがシロボンの師匠になっていることから、
師匠のルーイに特訓させられていることを表現しているのだと思われますが、
少し分かりにくかったように思いました。

脚本:前川淳 絵コンテ:小寺勝之 演出:吉田俊司 作画監督:海老沢幸男

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2003.06.29 第33話「アインでボン!」

合体ボンバーマン化しヒゲヒゲ団に連れ去られたDr.アインとコスモジェッターを救出する、という話。(→公式のあらすじ
特定のスタッフによる独特の笑いのセンス或いは演出意図を全編にわたって色濃く反映させた、
これまでとは異なるテイストを持ち込んだ作りで、試みとしては良いかもしれませんが、
・主役が誰かにこだわるジェッターズの面々という楽屋落ちネタ
・キューセッキ星からどうやって帰ったのか? という楽屋落ちをしつこく続けたこと
・バーディの作戦立案中にひとりボンバーシュートの練習を続けるシロボンの図
などは作品との整合性を欠いた邪道な演出で、本作としては「失敗作」といえます。

メカードが知らないはずのバグラーとアインの関係を知っている、
即ち何かを探っているという伏線を何気なく張っているのは上手いと思いました。

脚本:まさきひろ 絵コンテ・演出・作画監督:中山岳洋

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2003.07.08 第34話「激闘!B-1グランプリ!!」第35話「B-1勝負!燃えよシロボン」

マイティが前回優勝していた、ボンバー星で4年に一回開催されるボンバーマンの武闘大会にシロボンが出場する、という話。(→公式のあらすじ第34話第35話

普段のレベルの高さからすると…

一度倒されたヒゲヒゲ団のボンバーマンや第14話に登場した団員156号の再登場があったり、
優勝カップを狙うマックス・ミスティ組、マイティのライバルであるオヤボン・コボン組の出場、
カモメボンバーの不戦敗、ボン婆さんに対するアインの恋心、実況のガング&ボンゴ等々、 それなりに工夫は凝らしていたものの、
全体的にやっつけな作りで盛り上がりに欠いた印象。

シロボンには忍者ボンバー、シルバーボンバーとの対戦があったものの、
上記出場者との絡みが全くなし、
特にオヤボンとの対戦を省略したのは手抜の感が否めません。

シロボンがコボンを助けるまでは良いとしても、
遅刻して不戦敗ではなく、せめて負傷によってオヤボンに敗退とするのが、
本作における正々堂々とした描き方だと思います。
仮に本編のような展開が話数稼ぎであるなら、
いっそ総集編でも良かったとさえ思いました。

1970年頃のアニメ・漫画を思わせるコボンの腰巾着ぶりも、
しつこくてうっとうしかったです。

作り手が今回絶対必要とした演出意図は、
「(マイティが)死んじゃったよ」という台詞をシロボンに言わせるのと、
シロボンの成長した姿をボン婆さんに見せることの二点(ボムスター獲得は不急の要素)だと思われますが、
その為だけに2話も費やして用意したのが「試合大会ネタ」でただでさえあざとい印象を与えるのに、
その試合内容が大して楽しめるものではなかったのは、
やはり普段のレベルの高さからすると失敗だったのではないでしょうか。

マイティを失った悲しみが伝わる場面

シロボンの「(マイティが)死んじゃったよ」という台詞と、
それに対するオヤボンのリアクションという一幕は、
本作ならではの絶妙な間の取り方で、このシーンだけは光っていました。
シロボンの口調は、顔を歪めて号泣させるより遙かに悲しみが伝わるもので好印象。
オヤボンのキャラクターメイクもこのシーンの為と考えると納得です。

第34話 脚本:吉田玲子 絵コンテ・演出:岩崎知子 作画監督:玉川明洋
第35話 脚本:吉田玲子 絵コンテ:小寺勝之 演出:菊池康仁 作画監督:吉川美貴

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_2003.07.14 第36話「密着!ジェッターズ24時」

出撃がないときのジェッターズ隊員達の日常生活をつづる、という話。(→公式のあらすじ

第14話と対になっているとも言えるエピソードですが、こちらは全く違うアプローチで描いています。
サブタイトルの掲示を一番最後にもってきているのが今回の演出の象徴。
何か起こりそうで特に何も起こらない隊員たちの日常生活を淡々と描き、
受け手に「なんだなんだ?」と思わせておいて、最後の最後「こういうことでした」と締める。
隊員達のそれぞれ別個の日常を「流れる日常風景」という形の極めて第三者的視点で眺められるような作りになっています。

このために、ネタを次々と繰り出していくという第14話「栄光のヒゲヒゲ団」とは違い、
終始「盛り上げず、かつ飽きさせず」というパッと見では分かりにくい演出をしているところが注目。
「夏海館の売上減」という、いかにも一つのストーリーになりそうな要素を敢えてそう扱わず、
ひとつの日常風景程度に情報を断片的に散りばめているところ(まるで推理モノ)に良く表れています。

演出意図としては非常に面白いものでしたが、
このような場合は個々のシーンにおけるキャラクターの仕草、感情表現がより細やかでないと味わい深い仕上がりになりません。
今話の場合、これまでの回と比べてそのような細やかさが足りず、
この仕上がりならシャウトを主役・シロボンを脇役に据えて「夏海館の売上減」に奮闘する「夏海館繁盛記」といった単純な形でも良かったように思いました。

また、いつもは効果的に見せていた使い回しの映像も、
シロボンのメンコ遊びのところに無意味さが目立っていて印象を悪くしていました。
それから本編を見る限り、ランチタイムの繁盛ぶりに夏海館の売上減という説得力がなかったのも悪印象でした。

個々のシーンで一番印象に残ったのは、ガングとボンゴがバイトで路上漫才をする一幕。
喋りのテンポの良さは流石に本職(柳原哲也&平井善之)といったところですが、
作画の方、即ち絵と声のタイミングが完璧に決まっていたのが凄いです。
特にガングがツッコミを入れるところは、まるで録音した声に合わせて作画したかと思える絶妙さでした。

脚本:まさきひろ 絵コンテ:ボブ白旗 演出:上坪亮樹 作画監督:海老沢幸男

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_2003.07.20 第37話「蘇るMAX」

見たことのないボムを使いB-1大会で優勝したゼロを追ってジェッターズがジャンク星に向かう、という話。(→公式のあらすじ

ついにゼロとジェッターズが出会ってしまう

演出上のテーマは「呟き」でしょうか。
ジェッターズと相まみえるシーンでのゼロの呟きが一番の注目。
「ジェッターズ…シロボン…」という所には、
ゼロが無くした過去の記憶に引っかかっている、と思わせる描写になっていました。
「僕の名はMAX…」「僕の名は…」「僕の名はMAX…」「MAX…」と続く呟きでは、
(マイティっぽい)ゼロの声からMAXの声に段階を踏んで微妙に変化していて、
ゼロが記憶を取り戻す伏線的描写になっていました。
この意図にきっちり応えたゼロ(マイティ、MAX)の演技は素晴らしかったです。

他にもゼロが外出しているときのミスティや、
ジャンク星へ向かうきっかけを作る「あいつどこかで…」というバーディなど、
呟くシーンで話の流れを上手く作っていたように思いました。
最後「カニ足…」と、第18話「友情のサンライズボム」における「チャーシューメンか…」以来の、
バーディの意味不明の呟きで締めたところも好印象。

話の単純な構図をテンポよく見せる

今回、話の膨らませ方にも上手さを感じさせます。
ジェッターズがジャンク星に向かう大筋は実は、
B-1大会決勝のビデオを見る→謎のボンマーマンに対する興味、という程度のものでしかなく、
しかも肝心の決勝の内容も「ゼロがボムを撃った」という絵的に単純なものです。

そこに「ゼロがボムを使った」を始めとするミスティのカットを入れることで、
この一連のシーンをジェッターズ視点で見ているはずの受け手が、
ミスティ視点による深刻な雰囲気を感じるという一種の錯覚を起こさせているのが面白い演出です。

また、ボン婆さん好きの博士やバーディ・シロボン・博士の喧嘩も、本来単純な構図をテンポよく見せる要因になっていました。

ミスティの行動は?

ゼロの存在をひた隠しにしようとするミスティの様子は、
作り手の上手い雰囲気作りにうっかり流されてしまいそうですが、よくよく考えてみると理解に苦しむ描写。
バーディの指摘を受けて「(ゼロ)あのMAXだというのか…」とミスティが驚くところ、
ミスティが「ゼロ=MAX」と知らなかったのなら隠す必要がありません(知っていたのならここで驚くのは変)。
ゼロにマイティの面影を無意識に感じて優しく接するところまでは分かるとしても、
ジェッターズから隠したり遠ざけようとする要因が全く描かれてないように思います。

脚本:前川淳 絵コンテ:小寺勝之 演出:吉田俊司 作画監督:あべたくじ

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_2003.08.04 第38話「大発明を守りきれ!」

ガスケッツ!

アインの弟子にして天才科学者Dr.ガスケッツの発明した「超小型ワープ装置」をヒゲヒゲ団から守る任につくジェッターズ、という話。(→公式のあらすじ

ワープ装置護衛の任につくシロボンやシャウト達の裏で、
アインとガスケッツ対メカードとMAXによる虚々実々の応酬が繰り広げられますが、
どちらの陣営の読みが上をいっているのか、という要素が大きな見どころとなっています。

そしてここで特筆なのは、サブタイトルが示すように受け手の視点をシロボン達と同じにし、
アインがシロボン達を騙すのと同じように受け手をも騙し、
今回の「実はアインは深慮遠謀だった」というインパクトを演出していたことです。

アインがシロボン達を金庫に案内するときの「的を欺くにはまず味方から」の台詞で、
全容を明かししたように見せて、実はまだ隠していることがあるという展開が絶妙。

また、ガスケッツとの師弟関係やジェッターズが創業70年というアインの台詞を、
シロボン達が疑いの目で見るというコミカルなシーンは、
前回(第37話)の「博士は嘘つき」という話題を続けることで自然に見せ、
それが肝心な事を隠す博士の「嘘」を上手くカムフラージュしていました。

シロボンのマックスへの復讐心を強調しているのも、アインの行動から受け手の目を上手くそらしています。

ワープ装置完成を紹介するテレビ番組で、
実験台のリポーターがほんの僅かワープするところはコメディ描写に見せかけて、
後で分かる未完成品だという事実と整合性がとれている、即ち伏線になっているというのも心憎い演出です。

酒盛りしている時にガスケッツが明かした「その辺の紙で鼻をかむ」という博士の癖は、
第15話「さらばジェッターズ」におけるガングとボンゴの辞表を思い起こさせてニヤリとさせます。

ただ今回、違和感を感じるシーンが多かったです。
MAX(ゼロ)が空を飛んで行って、その後メカードのところにいるのは間を端折り過ぎ。
MAXの夢に出てくる映像は、もやもやしたイメージにしてはハッキリしていて、
かといって手術台の上としては分かりにくい、という演出上無意味な描写になっていました。
あとシャウトに説明的な台詞が多かったのも悪印象でした。

脚本:前川淳 絵コンテ:小寺勝之 演出・作画監督:中山岳洋

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更新:2003-09-16 作成:2003-07-04 文責:ごま(goma)
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