今日見に行ってきた。
正直、「もののけ姫」で一度引退しての復帰後作品なので
あまり期待してなかったのだが、予想以上に面白かった。
一言でいうと「只のおとぎ話」なのだが、
随所に散りばめられた伏線や謎、また魅力的なキャラクターなどで、
飽きることなくストーリーが進行し、
気がつけばラストシーンという感じだった。脱帽。
ほんの少し説教っぽいメッセージや、千尋の成長、
お遊びなシーンなどの要素もあり、そういう点も楽しめた一因と思う。
声優は今回もアニメ声を排した陣容で、
主人公キャラは今回も有り体に言って上手くなかったが、
ベテラン俳優の演技は、キャスティングの妙もあり、
上手くいっていたと思う。
特に菅原文太の演技はハマっていた。
存分に楽しませてもらったが、敢えて苦言を呈すると以下の数点。
1、竜の正体が白であると、千が気づくところが説得力に欠ける。
2、花の回廊や、電車の車窓がいかにも3DCGという感じで、
ジブリらしさに欠ける(「もののけ」ではうまくやれていたと思うが)。
3、団子が薬である、と千が思う表現がリアリティに欠ける
(あれを見て口に入れるものだと果たして思うだろうか)。
4、千が豚になった父母を言い当てるシーンが説得力にかける。
5、ススワタリは「トトロ」の真っ黒クロスケ、
「もののけ」の木霊に次いでのラブリーキャラで、
いい加減あざとい感がある(許せる範囲ではあるが)。
6、白の本当の姿がかつて千尋を救った川の主である、
と千が気づくところが説明不足な感ある。
確かに白の台詞で伏線は張られててはいたし、
随所に溺れることを暗示するシーンもあり、
当のシーンに至って「やられた」という気もしたが、
冒頭の車中の会話に織り交ぜるなど、
分かりやすくするという方法はあったと思う。
とはいえ娯楽作品としては十二分に楽しめる作品仕上がっており、
これまでのジブリアニメの実績に恥じぬ出来映えである。
ぜひもう一回鑑賞したい。
パンフやアニメ誌の紹介記事を読んでしまうと
先入観が生まれ、作品自体からの純粋な評価でなくなるので、
それらにはまだ目を通していない。
それらの内容についてもまた検証したい。
2回目はレイトショーで見てきたのだが、
平日の午前中に見た1回目とうって変わって満員御礼。
みんなケチ・・おっとと、やりくり上手でいらっしゃる(笑)
今回は前回気になった点を補足。
1、養豚場でハクと分かれた→白い竜が空を飛んでいる、
が伏線となっているが、やはり説得力に欠けると思う。
2、色々技術は使ってるようだが、CGと分かるようでは駄目。
CGはアナログっぽく見せてこそ、見てて凄いと感じられるものだ。
3、ハクに飲ませるところで釜爺がフォローしているが、
何故最初に千が食べ物と思うのかは分からない。
で特に重要なのが
6、水に沈むシーンが3回もあったし、
2回目のところはよく見るとハクのシルエットがチラッと写ってはいる。
1で、傷ついた竜が飛んでくるシーンでは、
竜をハクだと千が思ったことを千自身が不思議に思い、これも伏線となっているが、
やはり分かりやすくした方が良かったのでは。
例えば、冒頭渡る川の水かさをもう少し多くして、
母親に「この水かさでは溺れないわ。大丈夫」といわせるとか。
今日はとりあえず、これだけ。
本作のひとつのテーマともいえる「水」の描写。
湯、湯気も含めてうまく描けていたと思う。
上映中はセルではないという風に思っただけで、
これに関しては全くといっていいくらい気にならなかった。
オクサレさまのヘドロの描写もデジタル技術でリアルに表現されていた。
ススワタリの手足の表現や銭婆の家の扉は見逃してしまいそうな感じ。
さりげなく使っていて非常に良かったと思う。
しかし疑問も残った。
これ見よがしと思われてしまい興ざめになっているシーンがあった。
前回も書いたがいかにセルっぽく見せて作品に集中させ、目立たないようにするという事が肝要であり、
「あっCGを使っている」などと思わせないようにするのが理想なのだが、
そうなっていなかったのがいくつかのシーンであり興を削がれた。
別の言い方をすれば手垢のついた表現は駄目ということだろうか。
いかにもCGを覚えたての素人が描いてみたというような(又はそういう風に見えてしまう)表現、
即ち「花の回廊」「電車から見える一軒家」「ご満悦(良きかな)のオクサレ様」などは
見ていて白けるだけなのではないか。
とはいえ沢山の技術を使ってることが分かった。
初めて挑んだフルデジタルにしてはかなりの高レベルだったと思う。
満点とはいえないまでも、
今後の作品に大いに期待できる第一歩を踏み出したといえよう
よく動くのはもちろんのこと芸の細かい描き込みもあって
見るたびに新たな発見があり
何回見ても楽しめる作品だと改めて感じた。
例1)ネズミになった坊を見た湯婆婆が
「なんだい?この薄汚いネズミは」
というシーン。
この台詞の後、観客の視点は千にいくのだが、
その肩に乗ってる坊(ネズミ)は一瞬悲しそうになり
次に怒った表情になる。
例2)オクサレ様の応対を成し遂げた千に抱きつく湯婆婆。
その後ろではリンが「私の手柄は?」と自分を指さしている。
「作品のクライマックスは千が電車に一人(3人?随行してるが)で、
銭婆のところに行くところ」
とパンフなどであったので、そのシーンを注目してみたが、
私の見たところあまり深く感じることができなかった。
10才くらいの子が一人で遠出する時の心情にオーバーラップさせているらしく、
確かに電車に乗っているときの緊張感みたいな雰囲気はでていたが、
そもそも銭婆の所に行くことを決意する千の心情が描き込み不足で、
銭婆の所へ行くことが急展開のように思え、
このシーンで千に感情移入することができなかったからだろう。
知らない世界にきた千が、その世界の更に未知な場所へ一人で行くのだから、
いくらハクのためとはいえ決意にはもう少し迷いや葛藤があるはずである。
このシーンでもう少し時間をとるべきだったと思う。
また銭婆の家をあとにした千がハクの本当の名前を言い当てるシーンも、
それまでの伏線が分かりにくくしてあるがため
「あなたはコハク川よ」などと言われても見ていて白けるだけであった。
この一連の流れで終盤「何がなんだかよく分からない」と
思った人が多いのではないだろうか。
実際知人からそういう声を聞いている。
パンフや紹介記事では「これぞ宮崎駿の最高傑作」などとされているが、
私はそういう風には思えなかった。
いや現時点でという意味での最高傑作と言ってもいいかもしれないが
集大成ではない、というべきだろうか。
前作「もののけ姫」では技術的にもストーリー的にも集大成な感があり、
宮崎駿引退やむなしと思ったが、
本作においてはこれまでに書いた技術的なこともあわせ、
新たな領域に足を踏み出したという感じで、
もしこれで最後というのであれば絶対納得いかない。
この踏み出した一歩を次作以降に生かして
もっとすごい作品、より完成度の高い作品を作り出して欲しいと思う。
追伸:でも次はやっぱり高畑さんなのだろうか・・
( 更新:2001年8月8日 文責:ごま )