アニメコラム「サイボーグ009」5
第20話〜第22話第34話〜第37

アニメコラム集「サイボーグ009」6

第33話「結晶時間」

放映日2002年6月9日

あらすじ

張々湖飯店は今日も繁盛。カウンターではヒマな007が一人料理を頬張っていた。。
テーブル席には家族と来ている女の子。007はに遠くから変身を使ってかまってあげた。。
その家族が店を出た直後、店内にも聞こえてきた轟音と悲鳴。。
一方、その頃009はギルモア博士によりメンテナンスを受けていた。。
メンテナンスが終わり、眠っていた009は目覚めた。。
すると009には何も聞こえない。。
部屋を出てみると、009の目に飛び込んだのはほ乳瓶をもったまま立ち止まる003や、。
机に向かってジッとしている博士のすがただった。009以外の時間がとまったかのように・・。

レビュー

まず良かったのは伏線の使い方。
張々湖飯店のシーンに挿入されるトラックの描写は、
やがて交通事故が起きるであろうという分かりやすい伏線で、
緊張感を高めるという効果。
博士が机に向かうところは、
悩み続ける009が解決の糸口になりそうで(結局こちらはオチに使われます)、
なるほどと膝を打つ効果。
2つの伏線を上手く使って受け手の意識を楽しませるように誘導していました。

最初は時間が止まったと見せかけておいて、
003の瞬きなどで次第に真相が明らかになっていく様と、
それに合わせた009の思考や感情の変化をじっくり描くことにより、
本筋である009の一人芝居として完成していました。

張々湖飯店の描写は原作にはないアレンジ部分だったのですが、
009の一人芝居という本筋に、これが上手く絡まっていて、
話に膨らみをもたせた良いアレンジになっていたと思います。

前回とうって変わって紺野タッチに戻った作画も美しかったです。
動きの少なさというメリットを考慮に入れても
今シリーズの基本コンセプトである紺野タッチが再現されてる方が良いと思います。

総合評価としては今回かなり秀逸な出来だと思いましたが、
気になった点もいくつかありました。
まず科学考証と設定に関すること。
今回のお話は、009の加速装置がメンテナンス後の動作不安定により、
一瞬という時間の流れが、009にとってとてつもなく長くなるというものでした。
そこに「009が触れるだけで紙が燃える摩擦熱が発生する」
という科学考証をもってくるなら、
一瞬で一ヶ月もの間動き続けた009には
大気圏突入に匹敵、或いはそれ以上の摩擦熱が発生してもおかしくないはず。 という疑問が1つ。

一ヶ月もの間009の食事はどうなっていたのだろう。
という疑問が1つ。
以前002が一日腹ぺこにしている話があったので、
009も同様にお腹を空かせるはずなのですが。
「加速装置発動中はお腹空かない」
ということを説明的になってでも入れた方が良かったのではないでしょうか。

最後にもう1つ。 トラック運転手の居眠り運転がリアリティに欠けていました。
市街地走行では、アクセルやハンドルの操作が頻繁にあり、居眠り運転は発生しません。
この描写も原作にないアレンジ部分だったのですが、
きっと車事情にあまり詳しくない人によるアイデアだったのでしょう。
上に書いたとおり「やがて事故が起きる」という伏線のためだったのですが、
飲酒運転の方がリアリティもあり納得できたと思います。
「飲酒運転」の方は放送コードに引っかかるのかもしれませんが。

第32話「機々械々」

放映日2002年6月2日

あらすじ

ドイツの空港に降り立ったギルモア博士と003、009の三人。
同じ頃、004はギルモア博士からの電話を受け取る。
ドイツ郊外で怪しい動きをキャッチしたので先行して調査してくれというものだった。
004がひとり現地にやってくると、確かに怪しい雰囲気の漂う古城が。
中に入ると突然、サイボーグらしき敵が襲ってきた。
その姿・能力は自分そっくり。しかも敵は感情が全くない戦闘マシーンとして作られている分、
能力的に上回っているらしく、004は窮地に立たされる・・

レビュー

全身にちかいサイボーグ化をされている004を主役にした話。
ほぼ同じ能力をもつニセ004を相手とした1対1のバトル。
感情までをも取り除いている「戦闘マシーン」であるぶん上回るニセ004
に大苦戦しながらも「人間」として勝利への光明を見いだそうとする
004のバトルには見応えがありました。
人間的なとっさの行動が勝負の分かれ目となっていたり、
最後を人間らしい冗談で笑うシーンで締めくくられていたというのも
テーマに沿った面白い演出(アレンジ)だったと思います。

ストーリーとしては文句なしに良かったですが、
作画の方はどうだったでしょうか。
アクションシーンで動いていると印象づけるアニメーションではあったものの、
キャラクターの輪郭(線)が下手なコンピュータによる描線という感じで汚く、
「紺野タッチ」という今シリーズの肝から大きく外れていたのは非常に残念です。
見ればスタッフは芦田豊雄&スタジオライブ。
本来なら泣いて喜ぶべき回のはずなのですが・・。
動かす為に作画レベルを敢えて落とすという独自の作画を押し通したのか、
或いは時代の変化(デジタル化)についていってないということなのでしょうか。

細かいところで気になったのは、まずコスチューム。
004が私服を脱ぎ捨て
ニセ004の強化服と同じにする必要はなかったのなかったのではないでしょうか。
004は私服のまま、
或いは、ニセ004は色違いにするなどして分かりやすくするという方法もあったと思います。
あと、話の途中にある偽ギルモア博士登場のシーン。
そのやりとりから視聴者は、
このギルモア博士がどうやら偽物らしいと分かりつつ戦闘を眺めるのですが、
戦闘終了まで何のフォローもなかったのは
偽ギルモア博士を004が撃つところが「驚きの種明かし」という意図はあるものの、
話を分かりにくくする逆効果の方が大きく、
また折角のその意図も登場のところで既にそれと分かる演出だったので、
あまり意味がなかったように思います。

シリーズとの整合性が今ひとつな今回の作画でしたが、
バトルシーンにおけるアニメーションは、この回独自という感じで良かったです。
ニセ004がらせん階段を駆け上がってくるシーンは
今回ならではの妙な恐ろしさを感じさせるものでした。

第31話「怪物島」

放映日2002年5月26日

あらすじ

食材「幻の茸」を探してとある山中に入った006と007は、
そこで化け物に襲われたという青年に出会う。
青年は蜂に刺されて気を失うが、その蜂はロボット蜂だった。
一旦、ギルモア邸に戻り、今度は三人で山に入った006、007、009は、
その山中の屋敷でロボット化された動物や、ゾンビ、巨人たちを目の当たりにする。
その時、屋敷を脱出する一機のUFOがあった。
いよいよブラックゴーストとの疑いを強めた戦士たちはドルフィン号で追跡を開始するのだが・・

レビュー

今回もブラックゴーストの遺産に出会うというお話。
動物を次々とロボット化していた動物科学者たちの正体は、
ブラックゴーストをパトロンにしていたという関係はあったものの、
ブラックゴーストとは立場を異にするマッドサイエンティストというものでした。

とはいうものの、
「動物科学者たちと、ロボット化された動物たち」
「ブラックゴーストと、サイボーグ戦士たち」
というそれぞれの関係は、構図として全く同じもので、
科学者たちの
「我々は改造するだけ。元に戻す方法など知らん」という台詞や、
自分が改造したロボットたちに攻撃されるという末路は、
「ロボットたち=サイボーグ戦士たち」に当てはめられ、
サイボーグ戦士たちの心に突き刺さるものを見ていて感じとりました。

演出的にはその辺りを過剰に強調することなく
サラリと流していた感じでしたが、
もう少し、台詞などで両者の相似を分かりやすく見せても良かったのでは
という気はします。

008がロボット鮫に突進するところで同じカットを繰り返すところがやや興ざめでしたが、
久々の008の活躍が見れましたし(しかし何故コブラツイスト?)、
ロボット化された動物たちにサイボーグ戦士たちが圧勝するところは爽快でした。

あと、前半トラックを運転する006の運転技量が
後半のモングラン運転の時の伏線となっていたり、
巨人と戦うために007が巨大化したりと、
楽しませる見どころも多く、面白かったです。

( 更新:2002年6月10日 文責:ごま )