アニメコラム「サイボーグ009」4

アニメコラム集「サイボーグ009」4

「サイボーグ009」第15話「さらば友よ」

放映日2002年1月27日

ムアンバ共和国の大統領ウンババは、
ブラックゴーストの援助によるブラックモンスター以上の兵器で形勢を挽回。
それは内乱を泥沼化させることで世界戦争の火種と目論むブラックゴーストの罠であった。
009たちは戦闘をやめさせようとするが、サイボーグ化された人間を前に攻撃がままならない。
002は脚に重傷を負って戦線を離脱。
苦戦を強いられながらも鎮圧に向かったとき、
008の前にサイボーグマンが立ちふさがる・・。

「内乱の泥沼化」→「欧米列強の介入」→「世界戦争」
という今回のお話の重要な下敷きの部分について今回も説明不足でした。
ここのところがスッと理解できるようでないと、お話に深みが感じられません。
そもそも、上に書いた構図自体が冷戦時代の異物という感があり、説得力に欠けます。
原作の設定をそのままもってきたのかオリジナルだったのかは知りませんが、
現代の世界情勢に合致するよう、もう少し工夫すべきだったと思います。

上のが分かりにくくなってる割には、
サイボーグマンが008のかつての友であったことは、
同一話の本編に伏線をもってきていて非常に分かりやすくなっています。
ですが正直、分かりやすすぎて面白味に欠けていたように思います。
せっかく前後編にしているのですから、
伏線は前編に配置した方が良かったのではないでしょうか。

こうして全体を見渡しますと、
「子供向けの分かりやすさ」と「大人向けの深みのある話」
のどっちつかずな、実にちぐはぐな印象を受けます。
あと、008とサイボーグマンの対決構図が見所であったのに、
009の苦悩が割り込んでくるのも煩雑になっている要因だと思われます。
008を中心とするストーリーの基本的な進行は悪くなかったので、
そちらに肉付けをしてお話に厚みを加えた方が面白かったと思いました。

絵的にひとつ気になったのは、
008とサイボーグマンが正対して銃を撃ち合った直後のカット。
構図が俯瞰だったのは少し捻った演出ですが、
普通に008のバストアップで良かったのではないでしょうか。

第16話「突入」

放映日2002年2月3日

ブラックゴーストのスカールは、
自ら指揮をとってサイボーグ戦士たちと対峙することを決意。
部下フレゲーを巨大飛行要塞・ダイマンタで出撃させる。
フレゲーは水中を行くドルフィン号に爆雷の雨を降らせる。
激しい攻撃を受けドルフィン号は遂に機関停止。
002は窮地を脱するために008と共に海上へ浮上。
002の捨て身の反撃に、ドルフィン号も浮上し反撃。
形勢逆転かに見えたが、フレゲーはテスト中の新兵器「ヒドラG」を投入・・。

ムアンバで失敗し半ば捨て身で立ち向かうフレゲー対009たち、
という対決の構図が今回の見所なのでしょうが、
圧倒的な力を見せつけて009たちを窮地に陥れてきた
00ナンバーサイボーグと違ってフレゲーではどうしても見劣りしてしまい、
盛り上がりに欠けてしまいます。
それ故、爆雷投下のところでドルフィン号が窮地に陥るのも納得がいかず、
「002の反撃をきっかけにするより前にさっさと浮上すればいいのに」 としか思いませんでした。

002と008の合体で海中から海上へ浮上するとシーンは
サイボーグ戦士の特徴を単純明快に生かす仕掛けになっていて、
またサイボーグ戦士たちの一致協力という面も出ていて面白かったです。

第18話「張々湖飯店奮闘記」

放映日2002年2月17日

敵スカールはサイボーグ戦士たちによって倒された。
戦士たちはそれぞれの故郷へと帰還。
009・003・007はギルモア博士のいる日本へ。
006も同じく日本へ。夢だった中華街での料理店開業にこぎつける。
その日は高名な料理評論家が訪れる予定。
その評論家に評価され、雑誌で紹介されれば店は大繁盛。
006こと張々湖は「最高の材料で最高の料理を」と張り切るのだが・・。

料理店で張り切る張々湖と、
彼にこき使われるジョー、フランソワーズ、ブリテンの3人の描写が
訪れた平和という雰囲気をよく醸し出しています。
その一方で、アルベルト、Gジュニア、ピュンマらの故郷での描写は、
新しい生活が決して楽なものばかりではないとしながらも、
前向きに生きようとする姿が描かれていて面白いです。
これら2つの展開を、002を「汚れ役」として最初と最後にもってくることで、
話がスッキリまとまっていたと思います。

アルベルトら故郷組の苦難が、
全て006との想い出によって克服されていくという話のもって行き方は
予測のできない展開で楽しめましたが、
006との想い出をオリジナルカットで回想させるだけでなく、
これまでの話の中にもう少し006絡みの生活描写があれば
深みもまして更に面白くなったと思います。

作画面では、「持ち上げるシーンから持ち上げるシーンへ」「橋のシーンから橋のシーンへ」
など場面転換の前後を何か関連づけていたのが印象的。
映像的にはよく使われる手法で、今回徹頭徹尾こだわっていたのは感服するところですが、
なかば無理矢理でわざとらしく感じられる分、
効果のほどはそれほどでもなかったです。

第19話「悪の化石」

放映日2002年2月124日

舞台はアメリカ。周囲を高い岩に囲まれた緑豊かな土地に生き残りの恐竜がいるという。
その恐竜を生け捕りにするというプロジェクトに協力するため
009と故郷がアメリカの002・005がやってきた。
プロジェクトのリーダー、ロス博士は元ブラックゴーストの一員で、
今は足を洗っているというのだが・・。

カット毎に変わる002の鼻の長さや、002・009の髪の長さ。
やたら多用される遠目からのカット。しかもその際のカクカクとしたキャラの動き。
突如少年の顔に変わる009をはじめ、カット毎に別人になるキャラの顔。
バストアップの際の無機質なキャラの表情。
長時間の一枚絵。更に別のカットをはさんで繰り返されるその一枚絵。

海外発注したり時間が足りなかったりして作画が破綻すると
どのようなアニメーションになるかという見本市というのが今回の見所。
恐竜の写真のカットで、007が「こんなの」と声色を変えて言うところは、
効果音が入るところから、元々007が変装するアニメーションのつもりだったのを断念した
というところも見逃してはいけません。

真面目に見てると苦痛この上ない今回の話でしたが、
このように開き直れば案外楽しめるのかも。

( 更新:2002年3月1日 文責:ごま )