『ぴたテン』第18話〜第26話ごまの「アニメ批評日記」fromアニメ討論室

ごまの「アニメ批評日記」

『ぴたテン』 >> 作品データ

第10話 〜 第17話 : 第18話 〜 第26話
更新:2002-10-03

10.01 第26話「想いのつなぎ方」

紫亜の存在を思い出すも胸中複雑な湖太郎と他のみんなも思い出させようとする美紗、という話。
湖太郎が意識的に忘れようとしていた、母親を失ったときの悲しみと絡めながら、
紫亜の記憶を巡って「この世に存在しなくなった人への気持ちとどうつきっていくか」
という、死生観にまで及ぶテーマを描こうとしたのは悪くない演出でした。
しかし、これに関するシリーズ中のネタフリが決定的に不足していて、
本編の意図である紫亜の記憶とともに蘇った「母との別れの悲しみ」というより
唐突に母親のネタを持ち出したという印象が強く、気分が盛り上がれませんでした。
展開の方も、美紗の天使試験絡みのドタバタを強調したせいもあって、
気持ちや記憶云々が、美紗と紫亜のどちらが現世に残るかという単なる二者択一になっていました。
こうなるとラストのご都合主義的展開が嫌でも容易に想像でき、果たしてその通りになりました。
まだ「美紗の復活の希望はある」程度の含みで終わらせた方が良かったです。
シリーズ全体を総括すると、ラストの三話だけはテーマに沿った話で頑張ったようですが、
そこまでの積み重ねが全くといっていいほどなくて、感動までに至りませんでした。
敢えて一言でいうと、怠け者が夏休みの宿題を8月31日に慌てて片づけたというところ。

09.26 第25話「お別れの仕方」

紫亜が悪魔見習いをクビになり存在が消滅してしまう、という話。
前回、「天使と悪魔の対立による葛藤」云々と書きましたが、
今回「天使試験合格」と「紫亜の存在を消さないこと」を天秤にかけた美紗の葛藤描写がありました。
これでも紫亜が悪魔見習いである必然性はやはりないのですが、
消された紫亜の記憶を取り戻させて存在を復活させると逆に美紗がピンチになる
という伏線を張って最終回の含みとしつつ、紫亜の消滅を描いたのは良かったと思います。
後半、紫亜を思い出させようとする美紗と湖太郎との会話では、
過去のダイジェストシーンが語られてますが、
絶好の「作画使い回し」の機会であるところを敢えて台詞のやりとりを重視したことで、
思い出したくない湖太郎と、何とか思い出させよう美紗の感情がよく伝わる良い演出となりました。
ただし美紗の涙が、紫亜のことを思い出す象徴的なシーンとしたのは陳腐な演出で減点。
今回は「ラスト3部作」の2話目ということで作画も前回に続いて美しいです。
なによりカット数を大幅に増やしていたようで、時間がすごく長く感じられる濃密な作りでした。
ちなみに数えてみたところ(正確さには自信なし)前半で156 カット(同一カット23 を含む)ありました。
(比較参考:第20話の前半116 カット。第21話の前半121 カット)。

09.20 第24話「お見舞いの行き方」

盲腸炎による天の入院先でのお見舞いをめぐる一騒動、という話。
てっきり天が主役かと思いきや、実は紫亜が主役だったという今回。
お見舞いに行った紫亜が入院中の子供達と仲良くなるも、子供達がお腹をこわしてしまう事態に、
タイミング悪くやってきた大に「もののけの来る所ではない」と言われて紫亜が落ち込んでしまうという展開から、
やがてそれが誤解と判明し、優しい紫亜が子供達に囲まれてめでたしめでたし・・
と一話限りとしては筋の通った話になっていて楽しめました。作画も(本作としては)美しい方でしたし。
ただラストにあった「紫亜が悪魔見習いをクビ」という展開では、
これまでさんざん描いてきた「やがて来るはずの対決の時、その時起こるであろう葛藤」
等が前提でないと成立しない「悪魔のくせに優しい。美紗と仲良し」の要素が何の意味もなかったということであり、
即ち作り手側の単なるご都合主義に過ぎなくなってしまっていて、どうかと思いました。
この展開では紫亜が悪魔である必要性は全くなかったと言わざるを得ません。

09.11 第23話「ハイキングの楽しみ方」

楽しいハイキングのはずが、ふとしたことで湖太郎と天がケンカしてしまう、という話。
盛り上がりそうな話を、盛り上がれなくしてしまう作り手の手腕が今回も発揮されてます。
基本設計はいいんです。父の寝坊で湖太郎が弁当を用意できてないという出発点から、
加えて「自分のため」かと思ったら「天のためだった紫亜の弁当」ということによる不機嫌な湖太郎、
一方、その事をつゆ知らないはしゃぎぶりが湖太郎を傷つける天、
という構図がケンカの遠因になるところまでは。でもその後がいけません。
はしゃぐのはまだしもバス停で弁当を開くのは、天のキャラクターとは違う上にリアリティがない。
湖太郎が押し返したことで弁当を落っことしてしまうのもリアリティなし。
映像を見る限り湖太郎は少ししか押し返してないのに何故落っこちる? どんな押し返し方?
この描写では、弁当を落っことしたのは、どう考えても天が悪いだけにすぎません。
したがって二人のケンカというより、天が一方的に悪いとしか思えず、
以降の展開を作り手の意図通りに見ることができないのです。
他には、平坦な道なのに湖太郎がぬかるみで横にころんで坂を転げ落ちるのも、
あの程度のにわか雨で川が著しい増水をするのもリアリティがありません。
そもそも、増水するような雨が降るなら事前に予測できそうなもので、ハイキング行かないでしょう。
これら細部のいい加減さで作品本来の意図が台無しになってしまっていました。

ところで某アニメ誌のインタビューでキャラデザの人が監督に
「監督はすぐ大ちゃんに逃げるんですよ」と言っていますが、
ものすごく洒落になってないような気がするのは私だけでしょうか。

09.02 第22話「運動会の燃え方」

優勝商品の食器洗い機を手に入れるため町内運動会のリレーに出場する、という話。
食器洗い機を手に入れる動機が、満足に皿洗いもできない美紗の代わりをする紫亜の負担軽減、
という時点で気分が萎えてしまい盛り上がれません。
いくらリレーで美紗が頑張ったとしても本質は「おためごかし」であり、
家事一切紫亜にまかせっきりの、こんな美紗に天使としての感情移入はとてもできません。
2チームに分けるときのメンバー選びがそこそこ面白かったのが唯一の救いでしょうか。
映像面では、運動会の描写が本作としては枚数的によっぽど「頑張った」方だと見え、
チームのメンバー紹介にやたら時間を割いていたのが涙ぐましかったです。
老人チームの台詞に字幕が入る演出もセンスを感じられませんでした。

08.28 第21話「女の子のがんばり方」

改めて美紗への対抗心を燃やした小星による湖太郎へのアプローチ、という話。
アプローチをかけつつも年齢ゆえのスキルのなさから紫亜にかなわず、
さりとて美紗のような積極さもない、と小星が改めて痛感するという展開から、
「忌まわしい」過去が発覚し自分を見つめ直した小星の迷走ぶりと続きます。
最後は湖太郎に介抱されて「いつも通りの自分でいい」に落ち着く、
という言ってしまえば型どおりの展開ではありましたが、
小星のドタバタぶりは、存在するだけで十分楽しめる出来になると見ていて改めて感じました。
いつもはうっとおしい存在でしかない御手洗も、
小星と絡ませることによってギャグとしてバランスのとれたキャラクターになっています。
やがては天界に帰る美紗、進展するかもしれない小星というキャラクターの立ち位置から考えて、
今回のような一話限りではなくて、もっと小星を活躍させるような話があれば良いと思うのですが。

08.19 第20話「なくしたものの見つけ方」

天使試験に落第した直後、美紗が一週間も行方不明になり湖太郎が落ち込む、という話。
日頃うっとおしく感じている存在でも、いざいなくなってみると寂しい。
ありがちでな構図ですが、奇をてらわず丁寧に話を仕上げれば、そこそこ楽しめる出来になるはずが・・。
御手洗兄妹の登場が最大の元凶。特に忍者部隊などを使ったビラ配りが最悪の演出。
それ自体は「高いスペックに見合わない作戦」で笑いをとるところなのですが、
今回のような全編深刻な雰囲気で通す演出との組み合わせはいただけません。
薫が大の「独走」を強引に阻止するのも意味不明。そもそも大の狼狽ぶりに時間を割くこと自体が余計で、
その分を湖太郎の心の描写に使うべきでした。
そして肝心のオチは時間の経過の違いで、美紗は悪びれる風もなく、と後味も最悪。

08.09 第19話「見習い天使のがんばり方」

美紗の天使試験。「一日天使」のたすきで天使の能力を得た美紗が使いこなせるか、という話。
これまでの展開から火を見るより明らかな「不合格」という結果につなげつつ、
どのように見せ場を作っていくかということが注目だったのですが、
本編では、トラック同士のにらみ合いから騒ぎがエスカレートしていくなかで、
「湖太郎の心を救う」という美紗の素直な気持ちが、全体の騒ぎを収束させる力の発動につながった、という組立。
「不合格」になるべき美紗の実績・実力という「一貫性」を外すこともなくストーリーとしては納得いく出来でした。
ただし、映像の方に見るべきものがなかったのが残念。
例えば、トマトが飛ぶ動きから命中した一枚絵という描写は工夫がなさすぎですし、
一番の見せ場である美紗の能力が全体に波及するシーンにも、迫力もなにもありませんでした。

08.04 第18話「バカンスのすごし方」

御手洗家のプライベートビーチにみんなで泳ぎに行く、という話。
ビーチを楽しむみんなの姿を徹頭徹尾描くという、本当にただそれだけ。
美紗が御手洗の泳ぎのコーチ。紫亜が紫外線に弱いため一人日陰で休むという状況によって、
湖太郎と小星、綾小路と薫という組み合わせの二人っきりで時間がすぎるという、
通常あまり見られない状況だったのが救いでした。というかそれが見せたかったのでしょうか。

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更新:上記参照 作成:2002-08-05 文責:ごま
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