2003.11.02■第1話「飛べ!エアマスター」★★★★★
全話の評価? 公式のあらすじ
転校してきたばかりのエアマスターこと相川摩季がルチャマスターと戦う、という話。
原作は柴田ヨクサル。「ヤングアニマル(白泉社)」連載の格闘技漫画のアニメ化。
格闘アクションの映像表現が屈指の出来映えで楽しめます。
スローな動きからスピードのある動きへとつなげるのが基本的手法のようで、
スローなところで受け手にアクションを予測させることで、次にくるスピードのある動きの迫力が大いに増す、という仕掛けになっています。
スローな動きを引き締める構図と背景
スローな動きのところではカメラアングル、トリミングの取り方が絶妙に決まっていて、ほぼ一枚絵なのにカッコ良く見せています。
この時のキャラの表現も動きの方向をすごく意識したものになっていて、二次元なのに三次元的な迫力がでています。
特に摩季がルチャマスターの攻撃を交わす時の動きによく表れていました。
舞台の選択、背景の描き方(パース)も「単なる書割」ではなく臨場感や迫力を増す一因となっていました。
独特の構図で三次元的な空間を演出
スピードのある動きのところでは、できるだけキャラに近づきつつ画面全体を使ってキャラ全体をきっちり描くという構図の取り方に注目。
通常アクション映像においては、ロングショットで全体を映しておいてから動いている体の部分のアップへとつなげるのが特にテレビアニメでは多い手法で(図1)、
本作の構図の取り方は従来「バレエアニメ」や「サーカスアニメ」など、身体のラインを美しく見せるために使うものでした。
本作ではそれとは違い、三次元的な空間演出のためにこの構図の取り方を使っているのが実に面白い工夫です(図2)。
ここではキャラクターの動きに合わせて動かすために、背景がCGに切り替わっているところも一連の演出を象徴しています。
図1)他作品のよくある構図 | 図2)本作の構図 |
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さまざまに工夫が施されている本作
他に印象的だったのは、ビルの谷間に入ったとき摩季の顔につく影(またはハイライト)が動いていたこと。
キャラクターがわずかに動いていることを印象的に見せる工夫です(これが本当の神作画)。
戦いに勝った直後など、摩季の全身を下からなめ上げていくカメラワークも迫力が出ていました。
ビルの上方にある明かりのある窓のカットから回想に切り替わるのも面白いです。
キャラ配置もなかなか秀逸
キャラ配置も適当に見えるようでいて、なかなか秀逸。
滝川ユウが今回前座的役回りなのは明らかですが、極端に背の低い乾蓮華の存在が下からの構図を自然に多用するために使われているのが唸らされます。
演出的にも滝川ユウがナンパ野郎に倒されて涙を流すカットから、乾蓮華の泣きベソ顔に切り替えて湿っぽさを緩和していたのが上手いです。
全体的に間延びしている印象
ひとつ気になったのは摩季の目の光が残像になっている映像。
摩季が正真正銘本気になったという象徴的意味合いがあるのかもしれませんが、唐突な印象でした。
あと、全体的に間延びしているきらいがありましたが、
ルチャマスターの長台詞は台詞自体の面白さと雰囲気の盛り上げなどで間はとれていたので、ここの評価は微妙なところ。
逆に「おもしれえヤツだなぁ」の台詞の後ルチャに倒されるナンパ野郎のところは、もっと「引き」で間をとっても良かったと思います。
【トリミング】写真の原版を引き伸ばすとき、周囲の不要な部分を省いて画面を整えること。 「口絵の写真を―する」
【書割】芝居の大道具の一。木枠に布や紙を張り、建物や風景など舞台の背景を描いたもの。〔何枚かに分かれていることからの称という〕
(共に『大辞林第2版』より)
脚本:横手美智子 絵コンテ・演出:小村敏明 作画監督:石川晋吾
2003.11.18 ■ 第2話「吠えろ!崎山香織!!」
全話の評価 ★★★★☆ 公式のあらすじ
自称「未来のスーパーモデル」の崎山香織がふとしたことから摩季に挑む、という話。
今回の見どころは摩季と崎山が地下道でストリートファイトするところ。
スピードの強弱に加えて、今回はアップとロングの切り替えを意識的に使い、
動きが分かりやすさとスピード感の両立で迫力が伝わる映像になっていました。
単なるケレン味ではなく迫力を出すための構図
特に構図の取り方が絶妙。
崎山が回転しながら吹っ飛ぶカットでは、摩季と崎山の全身がフレームに収まっているなど、
単なるケレン味ではなく迫力を出すための目的がよく感じられます。
この時、崎山の頭が少々はみ出ているところも外に向かう動きの勢いがでていて良いです。
この一幕、枚数的には限られた絵の速い繰り返し動きを出していましたが、
直後摩季が立ち上がるところは枚数を使っていて一連のシーンが美しくまとまったように思えます。
摩季の引き立て役崎山が絶妙
ストーリーは、自己中心的で一風変わった性格の崎山が、
自称女王として「元体操女子の女王」だった摩季に対決を挑むことで、
女王対女王という構図を持ち出して摩季の過去を少し見せつつ摩季の引き立て役になるというもの。
引き立て役ということでの間の抜けた面白さを醸し出しつつ、対決に向かってそれなりに盛り上がるという演出。
独特のアクセントでしゃべる崎山の演技をベテラン声優が上手くこなしていたのも、この演出に大きく貢献していました。
摩季たちが打ち解けていく様子が自然に描写
細かいところでは、摩季が最初にストリートファイトするときの、
明るい繁華街→路地に入っていく→路地裏の暗さ、という雰囲気の切り替わり。
路地裏のファイトを終えて偶然滝川たちと鉢合わせしたときの会話での、滝川達に対する摩季の微妙な距離から、
食事シーンで打ち解けている様子が自然に描写できていたこと。
崎山に対する滝川と乾の「飯食わせ!」が受け手の予想していた以上に馬鹿っぽいリアクションで笑えたこと、などが印象的でした。
他、カメラマンが崎山にいちいち蹴り(張り)飛ばされるところを丁寧に描いていたところや、
美奈のバストの話題で盛り上がる野郎共の熱気の描写が面白かったです。
脚本:藤井文弥 絵コンテ・演出:伊藤尚往 作画監督:武田和久・袴田裕二
2004.01.16 ■ 第4話「目立て!月雄と麗一」
全話の評価 ★★★★★ 公式のあらすじ
伸之助をデビュー戦につれていったストリートファイトで、土方野郎の月雄・自転車を武器にする麗一と対戦する、という話。
伸之助VSヌンチャク男、VS麗一、VS月雄、マキVS月雄と対戦が多かった分、
個々の対戦における密度はそれほどではありませんでしたが、
要所要所を構図をキッチリ決めることで面白さを損なうことなく全体がまとまっていました。
伸之助VS麗一では突進する自転車の上を飛び越えるところ、
伸之助VS月雄では「百一裂拳」を打つときの伸之助の背後からの構図、
マキVS月雄では月雄を壁に叩きつけたマキがその直上の壁で反転しようとするところ等が構図として決まっていました。
マキが高空ジャンプしたときに「背後に写り込む月」という構図も「月雄から見た上からの攻撃」を示していて面白いです。
キャラクターの描写では、
冒頭伸之助がマキを誘うところで見せた美奈の嫌そうなところ、
伸之助VS月雄の最中に時折入るマキの表情が徐々にやる気になっている事を示しているところが細かくできていました。
マキVS月雄の対戦に入る直前「マキちゃんはエアマスターなんだ」と蓮華に言わせる会話の流れにも注目。
予め月雄との関係を作っておくことで、蓮華に伸之助を倒した月雄に対する怒りの台詞を言わせる自然な流れを作り、
マキ自身の性格では言うはずのない「エアマスターなんだ」という台詞につなげています。
背景は魚眼レンズのような構図を用いたりと美しく描けてました。
ただマキの最後の技の時の背景が手抜きだったのが残念。
あと今回アップを多用しすぎで、この点でも動きの面で物足りなさを感じた要因です。
脚本:藤井文弥 絵コンテ・演出:古賀豪 作画監督:飯島秀一・袴田裕二
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