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ごまの「アニメ批評日記」

『THEビッグオー 〜secound season〜』

テレビ東京系で2003年1月6日(月)深夜1時25分より放送のテレビアニメです。

更新:2003-04-19
第15話 〜 第20話 : 第22話 〜 第27話

2003.04.19 第22話「Twisted Memories 」

アランが差し向けた囚人ベックが主不在のロジャー邸を襲撃し、ドロシーを奪う、という話。
前回見逃してしまいました。
エンジェルや、彼女とドロシーの絡みに関する辺りの話はよく分からくて残念です。

今回の白眉は、ゴードンとアレックスのローズウォーター親子が会話するシーン。
父としての優しさを求めるアレックスに、老人性痴呆症のような受け答えぶりを見せるゴードンという図なのですが、
これまでに築いてきた「トマト」の伏線と、一面の麦畑という牧歌的な風景、哀しげなBGMが、
この二人のやりとりと絶妙に合わさって上っ面では決して表すことのできない残酷さを描いています。
父への愛を語るアレックスの台詞を受けてゴードンが言う「君は私の息子だね」
は屈指の名シーンを言えるのではないでしょうか。
両者に扮する石塚運昇・納谷五朗の名演ぶりも必要不可欠な要素。
特に石塚運昇。事実上の支配者でありながら満たされない思いを抱えるという「トマト」であるアレックス、
という難しい役どころを見事に演じきっています。

このシーンでは、これまで何度か描かれた麦畑にいるゴートンという存在が
麦畑=ドーム、麦=アレックス達息子やドームの人となぞらえるためのものだと分かります。
畑について語るゴードンの台詞に意味あり気なものを感じさせることで、
より一層味わい深いシーンになっています。
ロジャーがめまいをするところにも麦畑のカットが挿入されてますが、
このような演出を受け手に分からせるための念押しの意味も込められてるのかもしれません。

その他の見どころとしては、
まず今回さらわれてしまうドロシーの表情。
微妙な描き込みによってアンドロイドであるドロシーに「憂い」「諦観」
という感情めいたものを感じさせています。

また、これまで幾度となく「謎の」超人的活躍を見せてきたノーマンが今回も見せてくれます。
今回、動的な活躍は全くといっていいほどなかったロジャーに替わって、
マシンの集団の迎撃を一手に引き受けてるところは、
アクションシーンとしてのみどころになっています。
この一連のシーンで「この、くそったれめが」と言うところは、
これまで、どんなときも揺るがなかったノーマンの紳士然ぶりを崩すことによって、
今回ただならぬ自体であることを間接的に表している隠れた名シーンだと思います。

囚人ベックの使い方にも、作り手の緻密な計算が伺えます。
和風テイストなギャグ調話に駆り出された(と見えた)あたり、単なる色物キャラにも見えたのですが、
アランに動かされるという今回の役どころを見ると、
彼自身きちんとした役どころを予め背負っていたことが分かります。
そう考えると単なるギャグ調話と思われた第18話も、
第2期シリーズ未登場のベックを再度周知させるためという目的が見えてきます。

ダストン大佐がロジャーとの別れ際、
「また、お前の家の暖炉で飲み交わしたい」と言うところも注目。
一見、その台詞はロジャーの無事帰還を祈るダストンのエールに聞こえます。
それでも物語上は全く問題ないわけですが、
第一期10話の件のシーンではダストンがロジャーに相談していることを憶えていると、
この台詞は「自分に相談しろ」と遠回しに言っているようにも聞こえます。
実際の演出意図はハッキリしませんが、
このような部分にも本作の奥行きの深さを感じさせます。

映像では、ドロシーを呼び戻そうと手を伸ばすロジャーのカットに、
同じポーズをとるビッグオーが横から入り込んでくるカットが面白いです。

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更新:上記参照 作成:2003-04-19 文責:ごま(goma)
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