『piano』1〜5話 ごまのアニメ批評日記

ごまの「アニメ批評日記」

『piano』

第1話 〜 第5話 : 第6話 〜 第10話
更新:2002-12-12

12.12 第5話「心をゆらして-con brio-」

優希が滝沢先輩と口ゲンカして失恋の危機に陥る、という話。
恋人ができることは、それまでにあった友達との時間が減るということを意味します。
今回の話では、滝沢先輩との恋模様における優希の感情の変化や、
恋人は大事だけど、美雨との友情も大事にしたいという気持ちが良く表現できていたと思います。
冒頭の3人の登校シーンで、美雨の取り合いになる他愛のない会話は、この年頃の女の子らしさを描くとともに、
本編での感情が揺れ動く優希の現れともなっているのが上手い演出でした。
美雨が優希の前でピアノを弾くシーンは、一見単なる優希への励ましであるように見えますが、
ラストまで見ると「気持ちを演奏に込める方法をつかみかけている」という描写であることが伺えます。
少し分かりにくい描写ですが、分かってみると唸らされます。
ただいきなり演奏に入る美雨の行動が少し唐突に見えたのが残念。

12.09 第4話「快活に-con allegrezza-」

夏休み中の陸上部の陣中見舞いにやってきた滝沢先輩に優希が告白する、という話。
本筋そのものはよくある恋愛話でしたが、楽観的から悲観的になる優希の感情の推移がリアルに描けてました。
優希への美雨の絡ませ方も単に応援というだけでなく、
発表会という事情を平行させることで、美雨が主人公とした話のひとつとして仕上がっていたと思います。
CDをプレゼントに選ぶ展開においては「優希が既にもってるかもしれない」という不確定要素を、
アイスクリーム屋における「この人」という台詞(つまり優希はよく知らない)によって解決しており、作り手の細かい配慮が伺えます。
優希から美雨へのお土産のキーホルダーも、すぐに使っているという美雨の性格描写の他に、
場面転換や心象描写、事実の暗喩っぽい使い方などなど細かい演出に大活躍で面白いです。
あと、なんといっても家族の描写が秀逸。
今回は、母が美雨の成長を願い気にしているところがよく表れていました。
カレンダーの花丸を美雨の恋絡みと勘違いし、真相を知るやガッカリするという動きをさりげなく、
父に対して誤解を招く台詞を言うところはハッキリと、というように表現にメリハリをつけることでリアルな家族風景になっていたと思います。

12.02 第3話「はつらつと勢いよく-con spirito-」

進学にも影響する陸上部のタイムトライアルにむけて調子の上がらない滝沢先輩を思う優希、という話。
タイムトライアルにおける美雨と優希のやりとりで、
陸上の事はよく分からないけど優希のことを心から応援しているという美雨や、
優希が伴走する先輩の好成績に喜びを分かち合う優希の気持ちの表現を演出できていたと思います。
言葉足らずな説明をする美雨と母との会話もリアリティがあって面白かったです。

10.07 第1・2話「感情を込めて-con sentimento-」「やわらかみを持って-con tenerezza-」

CSキッズステーションによる、11月の本放送に先駆けての先行放送。
ピアノのレッスンに通う中学二年の女の子、野村美雨(みう)の日常を描いた物語。
何気ない日常描写を丁寧に描くというと「フィギュア17」が真っ先に思いつきますが、
非日常と日常が相互に補完しあう「フィギュア17」と違って、本作は徹頭徹尾、日常を描写し続けるようです。
非日常を盛り込むことこそを旨とする、といっても過言ではないアニメという媒体においては新鮮な試みともいえます。
大なり小なり、何かしら事件が起こることになれているアニメファンにとって物足りなさがないわけではありませんが、
主人公の美雨と父母による家族の日常対話には非常にリアリティがあり、
ホームドラマ的な観点で見れば楽しめると思います。
本編では、美雨が即興で弾いたピアノ曲に才能の可能性が見え隠れするところと、
何故か美雨の飼い猫のことを知っていたピアノの先生の過去という伏線が張られていて、
このあたりは飽きさせない工夫になっていました。
気になったところは、ピアノの先生が無愛想ながらも親身であるところの説明があまりないこと。
作中では6年間レッスンしているという事実だけが理由らしい理由となっていましたが、
回想シーンを入れて説得力を増してみても良かったと思います。
ちなみにサブタイトルはどちらも音楽用語らしいです。

第1話 〜 第5話 : 第6話 〜 第10話
更新:上記参照 作成:2002-10-08 文責:ごま
© 2002 ごま あらゆる内容の無許可転載・転用を禁止
Copyright 2002 goma. All rights reserved.Please do not reproduce without prior permission.
当サイトへのご意見・ご感想のメールお待ちしてます。