アニメコラム「サイボーグ009」9
第37話〜第38話第43話〜第45話 |

アニメコラム集「サイボーグ009」9

第42話ミュータント戦士編「明日へ…」

放映日2002年8月11日

サイボーグ戦士とミュータント戦士の戦いに決着がつく、という話。
見応えもありましたが、物足りなさも半分というのが正直な感想。
最初のシーンでは話をもちかけたミーから、サイボーグ戦士たちが009がいる時代に飛んで合流。
そして一緒にいるであろうリナが同調跳躍をして全員一緒に現代に帰ってくる、というプランが提示されます。
ここでは「罠ではないか」と当然起こりうる疑念で食ってかかる002がいい味をだしてます。
ミーは「ガモ博士にバレるとまずいので」と同行を拒否しますが、
リナの救出という希望を前回切実に描いたことに比較すると、理由づけが弱かったように思います。
フィルがガモの手中にあるということに触れても良かったのではないでしょうか。

中盤では、サイボーグ戦士とリナが同調跳躍に挑む姿が描かれます。
ここでは未来という「現代の結果」に失望した009の雑念が跳躍を失敗させるのが面白い演出。
本編では真っ直ぐすぎる(或いは子供じみている)009の心が却って徒となっていることかのごとく、
他の戦士達からいさめられるのですが、未来にいる時間が長かった故の雑念とも考えられ、
むしろこういう理由だという009寄りのフォローもあっても良かったのではと思いました。
003がリナに渡したペンダントが跳躍補助装置でもあるというのは、
003の優しさが功を奏したという意味においては良い演出でしたが、出来過ぎな感もありました。
ここに至るまでの段階で上手い伏線が張れなかったものでしょうか。

終盤は、009とケインとの対決が一番の見どころ。
互いの信念をぶつけあった末に、結果として009が勝利を拾うのですが、
やはりここは009にケインを倒してもらってスカッとしたかったです。エンタテインメントですから。
リナがケインを道連れに同調跳躍するというオチは容易に想像できただけに余計に残念。
ケインを009が倒したとしても、その後の展開は同じように済ますことは十分できたと思うのですが。
リナとケインは同調跳躍。フィルは最後のカプセル脱出に力を使い果たし、
ミーは変わる未来というタイムパラドックスによって消滅、
とミュータント戦士たちがそれぞれ違う形で姿を消していくのは上手いと思いました。

全体的を見渡して思うのは、あと1話くらいかけて欲しかったということです。
ギルモアとガモ博士、001とガモ博士という構図でももう少しドラマが欲しいところですし、
未来からの同調跳躍で、それに最適なフィールドにたどりつくための苦難でも、
話を膨らますことはできたと思います。

第41話ミュータント戦士編「悪夢の未来」

放映日2002年8月4日

009とミュータント戦士のリナが一緒に未来に飛ばされる、という話。
起承転結でいうと転にあたる話で、思わぬ方向に転回したという感じです。
消されていたはずの記憶を取り戻したリナによって、
リナ達は未来から来た超能力者であること、リナ達も未来でブラックゴーストに苦しめられていたこと、
その未来を修正するために過去にやってきたこと、そこで会ったガモ博士に洗脳されてしまったこと等々、
リナ達の実状が一気に明らかになります。
009とリナが飛ばされたその世界も、
飛ばされる瞬間のリナの意識によって「リナがもといた未来の世界」だったという展開が上手いです。

未来の世界にブラックゴーストが驚異として存在する、
即ち009たちの戦いが無駄であるということを瞬時に悟った009の憤りも見どころとなってました。
ただ、確かに009にとってはその憤りが第一なのは必然としても、
009もリナも同じ敵と戦っていた、
という点に009の意識をもっていっても良かったのではないかと思いました。
あと、リナが記憶を取り戻したのはブラックゴースト襲撃の衝撃が原因のようですが、
少し強引な展開のように思います。

一方もとの世界の方では、リナを慕うフィルの気持ちにより、
ミーが009とリナを引き戻そうとすることを決断し、
多くの意識の集中という理由付けでサイボーグ戦士側にも協力(取引)を請います。
009とリナとの会話にも少し触れられてましたが、
この協力を請うシーンでは、一線を置いたケインの姿を見せることで、
ミュータント側に入る亀裂の予感を見え隠れさせています。これも次回の注目点。

第40話ミュータント戦士編「シンクロワープ−同調跳躍−」

放映日2002年7月28日

ミーを戦略の中心にしたミュータント戦士とサイボーグ戦士との戦闘、という話。
任意の相手と意識を同調することで時間を自由に跳躍することができる、
というミーの能力が明らかにされ、ミュータント陣営は今回戦略の中心に据えてきました。
時間を跳躍できるという時点で反則的な強さだとも思えますが、
その辺りはミュータント戦士の弱点同様、何かバランスをとってくるのでしょうか。今後に注目です。

今回の一番の見どころは、やはり戦闘シーン。
サイボーグ戦士全員の意識を同調させてまとめて跳躍するという
一発狙い的ながら恐るべき作戦をミュータント側がたててきたのですが、
同調できる範囲を限定して、そこへ誘い込まなければならないという条件づけをしているのが、
敵側にも戦略性をもたせて楽しめる要素となっています。

更に注目すべきは、作戦をそのまま進行させるのではなく、ケインとフィルに勝手な行動をとらせたこと。
「倒せるものなら倒してもいい」「まだるっこしいのは性に合わん」と、
前回同様の正攻法での勝負にさせたことで、
ミュータント側は作戦がなかなか上手くいかないミーの心境が伝わってきますし、
サイボーグ戦士側はミュータント側には見られない仲間の連携を強調することもできました。

009が予め打ち合わせたルートを疾走し、
ケインが追走のためのサイコキネシスに集中したところを他の戦士が叩く
という009の加速装置を軸にしたサイボーグ戦士たちの作戦遂行は見応えがありました。
この時点で対策を見せてしまって後の話は大丈夫か、といういらぬ心配もしてしまいましたが。
そこはそれ、また何か違う見せ場を用意してくれるのでしょう。

その他のシーンでは、
ガモ博士が息子001をブラウン博士に売り渡したのは
研究資金と引き替えだったことが回想で明らかになります。
ここはもう少し話に膨らみが欲しいところですが、後の回で出てくるのかもしれません。
回想シーンへの場面展開は少し唐突過ぎたきらいがありました。
少し間を置くような演出があれば分かりやすくて良かったと思います。

ミーがラビリンスのことを口にした際、
ガモ博士は「何のことだ?」と言い、ミーの説明で「そうだったな」と納得する、
という話の流れも気になるシーン。
ミーの意味ありげなリアクションといい、不審に思うリナの描写といい、後の展開の伏線だと思われます。

第39話ミュータント戦士編「新たなる刺客」

放映日2002年7月21日

サイボーグ戦士たちの前に、ブラックゴーストのミュータント計画による戦士が現れる、という話。
サブタイトルにもある通り「ミュータント編」に突入。
第1回といことで、戦闘では敵の驚異的な強さを見せつけるという、
これまでのシリーズでも見られましたが、いわば定石通りの演出。
この強敵にサイボーグ戦士達がどうやって勝利するのか、後の展開を期待させます。

更に今回特徴的なのは、ミュータント戦士の特性。
攻撃では「計画」によって強化された超能力、防御では同じく超能力による「サイキックバリア」、
これらを使っての驚異的な戦闘力ではあるのですが、
サイキックバリアを破ってしまえば生身の人間並の防御力しかなくなってしまうことです。
サイボーグ戦士たちにも十分勝機があるということを示すと同時に、
戦闘時におけるサイボーグ戦士達がとるであろう戦略性にも楽しみがもてます。

本編では、009に対峙したケインが「生身の人間並み」ということを語っていますが、
回想をはさんでのその前のシーンで005がケインにタックルをかけるところや、
その後のシーンで防御のために放った006の炎が一瞬フィルに及ぶところなど、
映像によって垣間見せているところは上手い演出だと思います。

その他にも作り込みの細かさで感心させるシーンが随所に。
ミュータント戦士達のもう一つの弱点であるタイムリミットによる急速な老化現象は、
冒頭の子供のぬいぐるみを拾い上げるシーンに、その姿が伏線として張られてます。
張々湖飯店に逃げ込んできた男が所持した切符を見たギルモア博士が
「ロシアかやはり」と意味ありげに呟くところは、
前回の話と合わせてガモ・ウィスキーの存在を喚起させる演出。
009たちの危機を救った001の「頭の手術後に圧力をかけた」
という敵を知り尽くしたかの攻撃も同様です。

ひとつ気になったのは、 ミュータントたちが001を騙ったテレパシーでサイボーグ戦士達を全員集合させたところ。
戦略的にはサイボーグ戦士を一人づつ各個撃破する方が効率的なはずなのですが、
好意的な解釈をすれば「今回は挨拶程度の攻撃で済ませるつもりだった」か
「タイムリミットがあるので速攻をかける必要があった」のどちらかでしょうが、
なにか説明的な描写が欲しかったです。

( 更新:2002年9月5日 文責:ごま )
第37話〜第38話第43話〜第45話 |