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最新アニメコラム

テレビアニメ番組の各話または全体の批評を、日記より更に突っ込んで書いていきたいと思います。

2004.02.01

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アニメ批評日記はこちらに移転しました。
変わらぬご愛顧の程よろしくお願いいたします。

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2004.01.30

カレイドスター」第30話「もう一人の すごい 新人」

全話の評価 ★★★★ 公式のあらすじ

そらとレイラの「幻の大技」に感化されたロゼッタが、エージェントから脱走するかのようにカレイドステージへやってくる、という話。

前回と違ってロゼッタ一人が主役であったこと。そしてシリーズ本編の重要度は前回の二人と比べて高くないこと。
と条件的に恵まれた面はあったものの、コミカルとシリアスのバランスを取りつつ、ロゼッタの掘り下げもあって楽しめる一本でした。

注目したいのはロゼッタを自室に匿ったそらが、戸外を見渡して追っ手の有無を確認するときメイと顔を合わせる一幕。
メイがそらを心底敵視しているということを「バウバウ!」と噛みつこうとする犬の姿で示していますが、
これはそらのライバルとして敵対関係にせざるをえないメイを、
そのままストレートに描くのではなくコミカル表現を用いることで、
受け手によるメイへの不快感を払拭するためのものであり、
より明るい雰囲気の中でのライバル関係を感じさせる演出になっていました。

またここでは、玄関を開ける直前にそらの表情とBGMがコメディ調に変化するワンクッションをおくことで、
直後のコミカルなカットに自然につなげているのも上手いです。

ラストのメイの顔面にケーキが落っこちてくるというシーンもこの演出とつながるもの。
表現そのものは歓迎会を拒んだメイへの罰的なオチをコミカルに描いたもので、
止め絵からゆっくりズームアウトする間の取り方が絶妙で笑いを誘うものでしたが、
スターの座をめぐって競いあう関係であっても、最後には仲違いは解けるであろうというそらとメイの関係性を暗示してるようにも見えました。

本編に絡むところでは、
「最近のそらの演技に元気がない」というポリスとカロスの会話や、
ディアボロ練習中のロゼッタが自分を見ることができたと勘違いしたフールによる
「私の新たな目的は真のスターとなるものを…」という台詞、
今回のクライマックスでの「ステージは観客と一緒につくるもの」というロゼッタの台詞など、
今後のそらが進んでいく道筋を、そらが不在のところや直接関係ない場面において示すさり気なさが良かったです。

今回は他にも笑えるシーン満載。
メイの出身地説明を兼ねたサラの「通信講座の猫拳」や掃除機に吸い込まれたフールなどは、
三枚目の演技がいつもながら絶妙で面白いです。
あと、ロゼッタがいる自室にそらが戻るときの合い言葉「カレイドスター」「すごいすごい」「すんごい」には大受け。

少々納得いかなかったのはロゼッタがそらに「エージェントに追われてる」と言うくだり。
「エージェントは分からず屋」「そうそう。しかも(鞭打ち)千回」と、「おかしい。エージェントは肉親?」と受け手には真相を匂わせる要素となっていますが、
立場的には上のはずのロゼッタが追われているという変な状況自体に、そらがツッコミを入れなかったのは変。
ツッコミを入れようとするも遮られるかのようにロゼッタがまくし立てるような会話の流れにすればスッキリまとまったと思います。

脚本:平見瞳 絵コンテ:佐藤順一 演出:福多潤・唐戸光博 作画監督:鈴木雄大・井上哲

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2004.01.29

「京極夏彦 巷説百物語」第5話「塩の長司」

全話の評価 ★★★★☆ 公式のあらすじ

腹痛に苦しむ当主・塩屋長次郎の屋敷へ百介が潜入して事の真相を暴く、という話。
謎解き話のお手本のような展開。謎解き要素の散りばめ方が良かったです。

冒頭で受け手に強く印象づけた人肉を食べているシーン(ちらりと見える衣服で死体と分からせている)を伏線に、
盗賊団の首領・百鬼丸と崖から落ちて、という十二年前の経緯を番頭・平助が語るくだりで百鬼丸によるすり替わりを、
塩屋にあらわれた又市と百介が互いに顔を背け合うところでは、百介が屋敷に来たところから既に百介と又市たちの打った一芝居であったことを、
真実が判明するクライマックスに至る前から先読みできて楽しめる構図となっていました。

ちょっとしたところで面白かったのは、百介が塩屋長次郎の屋敷に転がる直前の場面切り替え。
真相は、最初に茶店に入った又市たちが白庵・黒庵婆の依頼を受け、その直後婆の言により百介も芝居に合流するというものでしたが、
合流するところを省くことで最初に又市らとはぐれた百介が辺りをさまよって屋敷にたどり着いたと錯覚させる作りとなっています。

一つ難をあげれば、長次郎と百鬼丸が双子の兄弟だったという真相のひとつ。
番頭・平助がすり替わりに気がつかない説得力をもたせる設定でしたが、
平助による伝聞の回想である、伏線的描写が二人が斬り合うカットで二人の顔が似ているというものしかないというのは謎解きの要素としては不十分でした。

声優の使い方は微妙なところ。
塩屋長次郎と百鬼丸の声優が同じなのは、似た声の兄弟を演じた声優の演技の上手さを感じさせますが、
このことを糸口に「兄弟ではないか」と気づいてしまうのは却って興ざめな感がします。
白庵・黒庵婆さんの若い姿との演じ分けは面白かったです。

脚本:藤岡美暢 絵コンテ・演出:細田雅弘 作画監督:山崎健志

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2004.01.27

円盤皇女ワるきゅーレ 十二月の夜想曲」第5話「ワルキューレ・ゴースト」

全話の評価 ★★★★ 公式のあらすじ

街で偶然(?)出会ったワルキューレそっくりで妖気を漂わせる美少女に和人が惹き込まれていく、という話。
ワルキューレ・ゴーストの表情の付け方や背景描写など、
秋菜が言うところの妖気が映像的に表現できていて、和人が惹き込まれている感じが良くでていました。

旅行代理店の前の和人の後ろからゴーストが現れるカット。
ウインドウにぼんやり写り込んだゴーストが、間をおいてクッキリ浮かび上がる映像は、注視する和人の視線の表現であると同時に、神出鬼没なゴーストの怪しさが出せる演出だったと思います。

ラストシーンにおけるゴーストのワルキューレに対する「幻の恋人を手に入れた気分はどう?」
という台詞は、冒頭に登場した漫画「こうさぎぴょんこちゃん」が今話の人物設定をなぞっているのと、
前回のムーンライトフェスティバルでのハイドラの配役「幻の恋人役」と合わせて、 シリーズストーリーの行方を暗示するキーワードとして上手く印象づけできていました。

細かいところでは「探偵ごっこ」のような2回の尾行シーンが面白い。
映像的には最初はハイドラと秋菜。2回目はそれにワルキューレと真田を加えただけのものなのですが、
尾行のアクションに加えて、そのチープさが逆に馬鹿馬鹿しさを増していて良かったです。 電柱に隠れるところでワルキューレの動きだけ緩慢なのも面白いです。

ワルキューレ・ゴーストにハイドラ、秋菜、ワルキューレが吹き飛ばされる映像がありましたが、
どれも真後ろからの構図だったのは単調に見えてしまうので印象が良くなかったです。

脚本:月村了衛 絵コンテ:川崎逸朗 演出:下司泰弘 作画監督:柳沢テツヤ

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2004.01.26

「君が望む永遠」第4話

全話の評価 ★★★

孝之と水月が同棲を互いに決意して仲がきちんとまとまりかけた時、3年間病床で眠り続けていた遙が目を覚ましたという一報が入る、という話。
「アニメランキング」で書きましたが、頭の中だけで考えたご都合主義というか場当たり的な演出が本作では目立ちます。

今回の話では遙が目を覚ましたという電話がかかってくる一幕が象徴的。
この直前、孝之と水月は明るく食卓を囲んでいたのですが、電話の後一転して暗い部屋のシーンに。
即ち、食事を片づけて(これは普通に食事を済ませたとしてまだ許せます。)、
わざわざ食卓を片づけて、わざわざ窓を開けて、わざわざ部屋の明かりを消して落ち込んでいるわけです。

こういうの普通はスタッフ間の行き違いで済ませられるものですが、本作は徹頭徹尾こんな演出なのが困りもの。
この場面では孝之と水月が沈んでいるという表現を、ならば部屋は暗い方が良いと部分的にしか考えていないから本編のようになってしまうわけです。
他にも水月の孝之に対する微妙な意識が移り気に二転三転するところも、その意識がつながっているようには思えず、
その場の状況(話の展開)にあわせて作り手に都合良く変化しているようにしか見えないのです。

物語設定は決して悪くないのですが、このような演出ではどのキャラにも共感することができず、 あかの他人の訳の分からぬ恋愛模様を冷ややかに眺めるだけの映像になってます。

脚本:金巻兼一 絵コンテ:もりたけし 演出:宮田亮 作画監督:竹内哲也

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「京極夏彦 巷説百物語」第4話「舞首」

全話の評価 ★★★★☆

原作は京極夏彦。角川書店刊の小説のアニメ化。「後巷説百物語」が第130回直木賞受賞。

江戸時代を舞台に「人間の業」を妖怪話を織り交ぜて描く作品で、アニメ版では世界観の描写と声優陣の名演が特筆もの。
映像では曲線や斜めの構図を多用していびつな背景描写とすることで、怪談風の世界観を上手く表現しています。

今回の話は、主人公・百介が出会った美女にまつわる話。
父による性的虐待によって歪んでしまったお吉を描いています。
お吉の表情や仕草、お吉役の清純っぽい演技で、
百介や網元、そして又重郎を魅了した魔性の美女として受け手に印象づけできていました。
既存のアニメでは特定のキャラが美女あるいは美少女といっても、作品内の他のキャラと比べて差別化できてないことが往々にしてあるのですが、
本作ではその辺りが上手くできていたと思います。
また又重郎を敵として見せつつ、お吉との因縁を匂わせ、又市らの存在を意味ありげに描いたことも効果的でした。
妹・お玉が既に骸であったという事実が明らかになる過程も上手く描けていて、クライマックスに生きてました。

最後のお銀の「(お吉の気持ちは)あんた(百介)には一生分からない」が締めくくりの台詞となっていましたが、
これは少々理解に苦しむもので最後の最後でしっくりこないものが残ったのは残念。
お吉・又重郎・お玉の三者の存在を謎解きの要素として入れている以上、
考えて解釈しないと分からないようにすることもなかったのではないでしょうか。
百介には分からないが、受け手には分かりやすいくらいの演出の方が良かったと思います。

脚本:藤岡美暢 絵コンテ:工藤鉱軌 演出:菅井嘉浩 作画監督:徳倉栄一

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2004.01.25

「カレイドスター」第29話「新しい すごい ライバル」

全話の評価 ★★★★

レイラの脱退により観客減のカレイドステージに、「客が俺の為にいる」と豪語する人気サーカススター、レオン・オズワルドが加入する、という話。

新シリーズの幕開けとなる今回はその趣旨、即ち主人公そらが進むべき方向性を提示する重要性をもつ話。
それを会話や独り言といった台詞が直接的に説明していくわけですが、台詞の使い方のセンスがよかったのが印象的。

そらがステージに合流する冒頭の一幕では、
ステージの現況やそらの立場・思いを説明くささを感じさせることなく自然な会話の流れで表現されていました。
後半、そらの一人二役の早変わり演技を見るレオンの台詞には、レオンによるそらへの評価、ひいてはレオン自身の今後の動向について、
刻一刻と推移する表現がなされており、受け手に緊張感をもって注目させる演出効果になっていました。

ちょっとしたところで注目したいのは、楽屋でフールがそらの衣装替えを手伝うシーン。
ここではフールの今後の動向を踏まえつつ、エッチなフールを使ったコメディというのが表面的なシーンでしたが、
ここで先にフールが着ぐるみのファスナーを下ろす映像のアップを先に見せておくことで、 直後のステージシーンにおけるフールの同じ行動を台詞だけで受け手に理解させており、
「着ぐるみから衣装への早変わりパフォーマンス」のスピード感を損なうことなく表現する演出にもなっていました。

全体的には上手くまとめたという感じがするものの、本作としては物足りなさを感じる一本でした。
最大の原因は二人の新キャラを同時に登場させたこと。
一本にまとめることで今後の物語の方向性を受け手に分かりやすく示すという意図なのでしょうが、
そのおかげで展開を駆け足で追うだけの映像になってしまってました。
ストーリーの奥行きやキャラの掘り下げなどを個々のシーン、カットに込める本作の魅力ともいうべき演出の上手さがあまりなかったのが残念です。

脚本:吉田玲子 絵コンテ:佐藤順一 演出:平池芳正 作画監督:福島豊明・金崎貴臣

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2004.01.21

「魁!! クロマティ高校」

全話の評価 ★★☆ 公式のあらすじ

昔で言うところの「ツッパリ」不良高校生たちが、ごく普通のことや些細なことで悩んだり困ったりする様子を描く、という話。

原作は野中英次。週刊少年マガジン連載中の漫画のアニメ化。
ワルに決めてる不良達の姿と、その会話のギャップで醸し出すコミカルさを楽しむ作品。

個人的には原作も知ってますし、今回のアニメ版もそれなりに楽しんでいます。
しかし一アニメとして見た場合、残念ながら評価に値するとは言えません。
第8話までを見てみましたが、アニメで見せる必然が全く感じられないからです。

映像的には原作を絵コンテに申し訳程度に動く程度の作画で、極端な話動かなくても、
即ちそれが挿し絵であったとしても、
更にいうと絵もなくてスピーカーから声や音だけ聞いたとしても、
結果として受け手が得られる印象としては何ら変わらないと思います。

またアニメスタッフが独自につけた動きにしても「林田やアジシオ太郎の髪の毛が動いたからなんなの?」で、
アニメ独自のネタに至っては「わざわざ『デ・ジ・キャラットにょ』のキャラが出てきたから、林原めぐみをチョイ役として使うのは笑いなの?」
といずれもギャグの体をなしてない笑えぬものでしかありません。

ついでにいうと若本槻夫の声と演技で笑いを取る演出は、
「サイボーグ009」第21話以来、いくつかの作品で見られたもので食傷気味というか、 作り手のひねりのなさ、安直な発想を感じさせます。

第8話の「メカ沢の初期化」の一幕でかないみかの声を使ったりするあたりといい、
オタク向けのネタふりということなのでしょうが(『デ・ジ・キャラットにょ』の監督らしいといえばらしい)、
余計なオタク風味付けをした上に、それが全く面白くないというお寒い状態を作り上げています。

あとこれだけ動きの少ない映像にも関わらず、人物の表情のデッサンがしばしば狂っているのはある意味致命的。
OPの冒頭、教室で本を読む主人公のカットを見たときは何かの悪い冗談かと思いました。

結論としては、声優の演技や効果音など音声中心にギャグを楽しめば十分な作品だと思います。

監督:桜井弘明 キャラクターデザイン・総作画監督:音地正行

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2004.01.16

「エアマスター」第4話「目立て!月雄と麗一」

全話の評価 ★★★★★ 公式のあらすじ

伸之助をデビュー戦につれていったストリートファイトで、土方野郎の月雄・自転車を武器にする麗一と対戦する、という話。

伸之助VSヌンチャク男、VS麗一、VS月雄、マキVS月雄と対戦が多かった分、
個々の対戦における密度はそれほどではありませんでしたが、
要所要所を構図をキッチリ決めることで面白さを損なうことなく全体がまとまっていました。

伸之助VS麗一では突進する自転車の上を飛び越えるところ、
伸之助VS月雄では「百一裂拳」を打つときの伸之助の背後からの構図、
マキVS月雄では月雄を壁に叩きつけたマキがその直上の壁で反転しようとするところ等が構図として決まっていました。
マキが高空ジャンプしたときに「背後に写り込む月」という構図も「月雄から見た上からの攻撃」を示していて面白いです。

キャラクターの描写では、
冒頭伸之助がマキを誘うところで見せた美奈の嫌そうなところ、
伸之助VS月雄の最中に時折入るマキの表情が徐々にやる気になっている事を示しているところが細かくできていました。

マキVS月雄の対戦に入る直前「マキちゃんはエアマスターなんだ」と蓮華に言わせる会話の流れにも注目。
予め月雄との関係を作っておくことで、蓮華に伸之助を倒した月雄に対する怒りの台詞を言わせる自然な流れを作り、
マキ自身の性格では言うはずのない「エアマスターなんだ」という台詞につなげています。

背景は魚眼レンズのような構図を用いたりと美しく描けてました。
ただマキの最後の技の時の背景が手抜きだったのが残念。
あと今回アップを多用しすぎで、この点でも動きの面で物足りなさを感じた要因です。

脚本:藤井文弥 絵コンテ・演出:古賀豪 作画監督:飯島秀一・袴田裕二

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2004.01.15

「ガンパレードマーチ」第11話「言い出しかねて」

全話の評価 ★★★★★ 公式のあらすじ

両思いなのに進展しない仲をとりもつ為に5121部隊の面々が講じた策である、クリスマスパーティの買い出しに速水・芝村が出かける、という話。
買い物を続けていくうち変化していく芝村の心境が見どころ。
冒頭では既にバレバレの女子達の冷めた視線を浴びても、自分の速水に対する気持ちを認めようとしなかったものが、
買い出しを疑似デートとして楽しみ、最後には速水の告白を受け入れるような態度まで変化していく様子が描かれています。

この演出のポイントのひとつは、芝村が策に感づくまでの描写。
洋服店の前では指示書に書かれていた「コーディネート」という文字を懐疑的に復唱、
続く周囲を見渡す様子に何か不審なものを感じていることを示します。
そして店内での試着中での気絶して騒ぎを起こした田辺の発見や、
次の宝石店という展開と、そこでの加藤の発見によって感づき、
ふっきれたかのように、面々に指示された買い出しという事の成り行きを楽しむ、
という心境の変化として上手く順序立てしていました。

洋服店で田辺が芝村に見つかる展開として、
これまでの話数で描いた田辺の貧乏ぶりをきっかけに遠坂を引っ張りだし、
憧れの遠坂と密着する緊張感によって気絶させるというのも上手いつなげ方でした。

また一連の展開のなかで芝村の心情を他のキャラに代弁させているのも、
映像的に楽しめる上に、寡黙な芝村のキャラ設定を損ねない上手い工夫。
宝石店では原の「後は成り行きでどうとでもなるわ」の台詞に呼応するかのように、
策に感づきつつ疑似デートを積極的に楽しもうとしている姿が描かれてます。
戻ってクリスマスパーティの会議のシーンでは、
芳野先生が語る「クリスマスの思い出」の中の「前の日からドキドキしてね。着ていく服を悩んだり…」 の台詞を自室で衣装を選ぶ芝村に被せることで状況説明しています。
この一幕では「『どうしよう』って友達と相談したり」の台詞を猫と目が合う速水に被せていて、
直前の芝村にカットと合わせるとちょっとした笑いのポイントとなっています。

高級レストランに行く直前の「次は?(芝村)」「これで最後だよ(速水)」「そうか…(芝村)」
歩道橋での会話もちょっとしたようで重要なシーン。
芝村のちょっと残念そうな台詞がレストランでの「楽しかった。今日は楽しかった」で始まる芝村の告白へと、
受け手が感じる芝村への心理状態を自然につなげていました。

全体的な流れとしては、
積極的に買い物を楽しむところからレストランでの告白まで、せっかく速水が告白できる状況を芝村が作ったにも関わらず、
速水の余計な一言が台無しにしてしまい最終回に続くというものでしたが、
前半終了直前での街頭インタビューでの「大切なパートナーだ」という芝村の台詞を
種明かしのようにラストにもってきたのも唸らせる演出。
冒頭の「仕事上のパートナー」という同じテレビ局の番組収録での台詞と
対比させることで芝村の気持ちを表現していて良かったです。

その他、噴水前のベンチで、占いに書かれていた「30分以内の告白」を気にしつつの、
告白しようとする速水とそれを待ち受ける芝村という描写も面白かったです。

脚本:水上清資 絵コンテ・演出・作画監督:入江秦浩

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更新:上記参照 作成:2003-05-29 文責:ごま(goma)
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