テレビアニメ番組の各話または全体の批評を、日記より更に突っ込んで書いていきたいと思います。
全話の評価 ? 公式のあらすじ
高校3年生の鳴海孝之が、女友達・早瀬水月の親友である涼宮遥と紆余曲折を経て「好きです」と告白してつきあうことになる、という話。
前半と後半でかなり印象が違う第一話でした。
前半は、客観的な視点でありながら、存在感が良く伝わってくる人物描写がとても好印象。
コンビニの前でじゃれあってる孝之・水月・平慎二のところは気のおけない友人という感じが出ていました。
水泳部の水月が練習中というシーンでの水の揺らめき具合、孝之お気に入りの丘での木漏れ日の描写は、
平穏でありながらもどこか不安定な青春の一コマ、という雰囲気を出していたと思います。
孝之をはじめ、第三者的視点で描かれているため、内面の描写がほとんどないのですが(水泳中の水月の回想シーンくらい)、
細かい仕草や表情、説明臭くないリアルな台詞まわしなどで、人物の心の動きが分かるのは見事でした。
特に遥の告白シーンの「なんだ。涼宮さんも呼ばれてたんだ。そっか…」のところは、
演技も良く、台詞と映像もピッタリ合っていて良かったです。
告白の直後、切り替わっての回想シーンは、全て水月によるものを意図しているようですが、
最初の水の描写が「遥→水月、切り替わり」のスイッチであることが分かりにくく、
途中まで遥の回想シーンと錯覚してしまいます。
映像そのものは構図も面白く美しかっただけに残念なミスでした。
後半は、うってかわってベタベタに甘いラブストーリー展開。
展開そのものや告白シーンのクサい台詞、リアリティのないキスへの流れなどはこの際置いておくにしても、理解に苦しむのが遥の性格・言動。
化石レベルの道徳観・男女観と、場を読めない非常識な言動がミックスされた人物像は、ハッキリ言って「かわいくない」の一言につきます。
これら理解不能な行動の数々で魅力的どころか単なるアホに見えてしまいます。
映画に誘わなかった孝之に水月と慎二が説教をするところや、以前の遥の笑顔がフラッシュバックした孝之が遥に告白する展開から、
孝之が遥の魅力に気づいていず、また水月への思いもあって遥と上手くつきあえない、
というのが、これらのシーンにおいて作り手が意図した構図なのでしょうが、遥の描写が全て台無しにしていました。
魅力的だけど内気で…というなら他にいくらでも描きようがあったと思います。
作り手はいったい何がしたいのかと問いたいほどでした。
全体的に見ると、オーソドックスなラブストーリーで、
伏線的な台詞も分かりやすい形でふんだんに盛り込まれており、
ストーリー的には今のところそれほどの期待は感じさせませんが、
前半のような「雰囲気を感じさせる演出」が今後も出ると面白くなると思います。
脚本:金巻兼一 絵コンテ:加瀬充子 演出:山田弘和 作画監督:藤沢俊幸
全話の評価 ★★★★ 公式のあらすじ
そらとレイラによる「幻の大技」のステージ本番、という話。
「幻の大技」に至るまでからエピローグまでの話の組み立てが完璧と言えるほど素晴らしく、
そらとレイラへの感情移入はもとより、登場キャラや観客と一緒に世紀の一大イベントとして楽しませることができていました。
散々渋っていたフールが遂にゴーサインを出すことから始まる本編。
まず最初に、戻ってきたカロスの下を去っていた団員達、舞台設営の様子、練習風景と、
流れるように描かれる本番直前の描写が本番前の緊張感と期待感を大いに盛り上げています。
そしてユーリによるレイラの父の説得シーン。
ユーリの説得が今回のカレイドステージが世紀の一大イベントであることを代弁。
ただ前回までのユーリの人物描写が今ひとつで、台詞の重みが台詞通りとまでいかなかったのが残念なところ。
ロゼッタにそらの練習風景を見せて驚かせるところは、
特訓以後のそらの成長ぶりを示しつつ、技のすごさの期待感をアップさせる演出。
ここでは最初の練習風景の使い回し映像となっていますが、
そらの汗を流線に見せることで使い回しとは思えない新鮮さが出ていて良かったです。
本番当日の控え室。
そらの「もしフールに認められてなかったら?」の問いに対するやりとりという一幕では、
そらとレイラの完成されたパートナーシップと同時に、
「失敗して死んでも構わない」ではなく「失敗を恐れない」というフールの設定した条件のクリアできた二人を描いていました。
そして今回何より「すごい」と感じさせたのは、本番直前、レイラの傷の手当をするシーン。
「幻の大技が成功したら、またお客さんが戻ってきます(そら、明るい展望を語る)」
「そうね(レイラ、どことなくそっけない返事)」
「そしたらまた、(※)素敵なステージを作りましょうね(そら)」
「(目をそらしつつ聞いているレイラ)」
この会話の※の部分に挿入されるケイトの後ろ姿が屈指の演出。
後に出てくる「もうカレイドステージに立つことはできないわ」という展開を示唆しており、
受け手は幻の大技の成否に加えてレイラの身の安否で緊張感が更に増すという仕掛け。
それをほんの僅かな時間のこのワンカットで何気なく描写したのは見事という他ありません。
佐藤順一演出の神髄を見たような気がしました。
で肝心の幻の大技ですが、
技の内容自体は確かに「すごい」で、幻のふれこみで数話引っ張っただけのことはありましたが、
映像の方が追いついていなかったように思います。
止め絵を回転させたカットもそうですが、
枚数を使ったカットの方も同一視点によって動きがパターン化していたことで安っぽく見えてしまいました。
背景を含めた画面全体の構成がシンプルだったのも安っぽさを際立たせてしまいました。
本編の出来なら、ケレン味たっぷりに描いた方がまだマシだったと思います。
もっと枚数を使えていたら、そらとレイラの動きを視点を変えながら見せることも、このスタッフならきっと可能だったことでしょう。
そう思うと残念でなりません。
最後の締めくくりは、
レイラが常々語っていた「最高のステージ、最高の喝采」が受け手の心にジーンと伝わってくるもの。
レイラの思いがそらに託されたというのも、良い終わり方でした。
脚本:平見瞳 絵コンテ:佐藤順一 演出:福多満・筑紫大介・唐戸光博 作画監督:渡辺はじめ・追崎史敏