アニメ批評「HAPPY☆LESSON」第11,13話「HAPPY☆LESSON ADVANCE」第5話

ごまの「アニメ批評日記」

「HAPPY☆LESSON」

2002.06.17 「HAPPY☆LESSON 」「クラクラ☆夢の大変身!」

きさらぎママが、自らの怪しげな実験により他のママの人格に次々と変わっていくという話。
きさらぎママ一人による「物真似オンステージ」といった感だったのですが、
台詞と真似ることの両立が結構苦しい印象があったものの、
作画・演出が上手くサポートしている形になっていて楽しめました。
展開としては「物真似(キャラの入れ替わり)」がダラダラ流れる形でしたが、
それぞれの「物真似」に、
繰り返し映像による面白いキャラの動きが挿入されていたことが、
飽きさせない要因だったと思います。
ストーリーの大枠は、はづきが歌手への意欲を取り戻す話と同じ。
今回、他のママたちは「物真似」に関して投げやりな態度で、
チトセが直接的にきさらぎママを救済した形になってましたが、
救済は他のママやみなづきあたりに任せて、
最後に背中を押される形でチトセが声をかけるという形も一策だったと思います。
とはいえ本編でもコメディ部分の比重は高く維持されていたので、
これはこれでいいと思います。

2002.06.29 「HAPPY☆LESSON 」第13話(最終回)「ウルウル☆秘密見ちゃった!?」

チトセと先生たちの同居生活が、遂に委員長にばれた、という話。
本作の商品・イベント展開からして、間を置いて何期もの長きにわたって「放映したい」
という作り手側の意図が見えているので、
チトセ・委員長・先生たちの関係をいじることのない形で終わらせる本編の展開は予想通り。
チトセが「先生たちに救われた」と語る「いい話」には無理気味の感動演出だと思いましたが、
もとより本作で感動しようという気はないので「ま、いいか」というろころです。
ただ、記憶(一部)喪失で現状を維持させるというオチそのものはともかく、
それで委員長の涙ながらの告白とそれに至るまでの葛藤を消してしまう
という演出はいかがなものかと思いました。

「HAPPY☆LESSON ADVANCE 」

2003.11.22 第5話「ソワソワ☆修学旅行」

全話の評価 ★★★

こよみ学園の修学旅行でチトセへの「愛の告白」を果たそうとする七転ふみつき、という話。
七転による告白の成否を全編に渡って描くラブコメ展開は話として一本筋が通っていましたし、
全体的なテンポもよく、元々本作が志向していた「ドタバタホームコメディ」に近いノリが出ていてました。
ここまでのシリーズ一番の出来だったと思います。

笑えるものからつまらないものまで様々あった笑いのネタ(ギャグ)ですが、
てんこ盛りに詰め込まれた内容をテンポよくまとめていて退屈させません。
七転がチトセをバンジージャンプに誘ったときの、気がつけばチトセがいない→BとC二人組に入れ替わってる→トリオでバンジージャンプ直前というカット回しが象徴的。
「トリオって言うな!」「九龍くんは女子×3」の七転の台詞をはじめ、
ツッコミ部分の台詞に関しての間の取り方も上手く決まっていました。
バンジージャンプの一幕での、九龍が七転の写真を撮ったリアクションやチトセに話しかけたときの七転の、
ムニュッとした顔や身体の形の変化など映像的な面白さも笑いを演出していました。

印象に残った演出としては旅館の布団部屋の一幕。
呼び出されたチトセを描いておいてから、扉が開くカットに切り替わると「九龍くん?」という台詞とともに七転が入ってくるというつなぎで、
受け手は瞬時に九龍が二人の仲を取り持とうと案じた一計であることが気づくようになっていて好印象でした。

全体的に七転の仕草が細かく描写されていて、彼女の恋心の緊張感に感情移入できる要因となっていたのも良かったです。
最後、車中で眠っているチトセを七転が膝枕するところのリアクションが同様に決まっていたのと、
生徒全員が居眠りしているところがリアルに描けていて、
それを見渡して「ま、いいか」という七転の台詞まで良い雰囲気のシーンに仕上がったと思います。

脚本:吉岡たかを 絵コンテ:西村純二 演出:江島泰男 作画監督:渡辺真由美・森川均・岩崎泰介

2004.01.31 「HAPPY☆LESSON ADVANCE」第9話「ホカホカ☆カンナと二人きり」

全話の評価 ★★★☆

チトセとカンナが怪我した子犬とともに過ごす二人っきりの二日間、という話。
五人のママのチトセへの家族愛を、動物への愛情になぞらえることを根底のテーマに、
チトセとカンナによる子犬の看病が作品的な見どころ。

「舌をスプーン状に変形させて」「味見をしましたわ」「保温機能」等、
とんちんかんな台詞を連発するカンナとのやりとりによって滑稽に見せることで、
この手の心温まる話における照れくささを緩和しつつ作品の主題を表現していました。

どちらかというとダイレクトに主題が伝わらなくてもいいというレベルでしたが、
少なくとも、なんとなく家族愛が連想できる演出にはなっているので、こういうのも良いと思います。

一方の温泉組は笑いのネタ満載で楽しませていました。
まず、なんといってもチトセロボの扱い。
ロボットであることに誰も気づかないという馬鹿馬鹿しさも笑わせますが、
「こら待て」「バッキャロー」「あったりめーだろ」「ざけんな」の限られた台詞で微妙に会話が成立しているところも上手い笑いの演出です。

偶然を装ってチトセを逆ナンパしようとするカンナの
「健康のためウコン茶を飲みませんか」「間に合ってます」の会話は意表をつく上手いネタ。
はづきの大股開きの部分をお銚子で隠すきさらぎ「これはやりすぎ」は、
お銚子が動くところが映像的な面白さ。
入浴中のふみつきのところに湯の中から忍び寄る影で、
先に出ていたきさらぎのペットの大蛇と受け手に思わせおいてBCが出てくるところもやられたという感じです。

脚本:吉岡たかを 絵コンテ:鈴木行 演出:高島大輔 作画監督:水上ろんど

2004.02.07 第11話「ガヤガヤ☆はづきのマイショップ」

全話の評価 ★★★★

芸能活動を休んではづきがオープンさせた雑貨屋を手伝うチトセと客のながつきが、一枚のスカーフを巡ってケンカする、という話。
むつきを巡るチトセとながつきの対立というシリーズストーリー上の転機となる重要エピソードで、
むつきがチトセの心情を理解できないことで落ち込ませるための一本。
その為の展開として、チトセとながつきのケンカの対処におけるむつきとはづきの対照的な描写が秀逸。

むつきの描写では、二度言う「仲良く助け合うのが家族」の台詞でママのなかでも一際家族思いのところを印象づけ、
チトセとながつきのケンカに狼狽えつつ止めに入ろうとする動きを自然に見せています。
一方はづきはケンカを爆竹で割ってはいる一見雑な扱いをしてるように見せながらも、
二人が兄弟のように思ってることの理解をながつきとの会話での「根が素直なとこもちーちゃんだね」の台詞でまず示し、
わざとチトセ兄妹とながつきだけになるよう放っておき、ケンカも気がすむまでやらせるという余裕の放任ぶりで、
チトセに対する理解の高さを上手く表現していたと思います。

大した量でもないのに二人で買い出しにでたはづきの行動が意図的であったことを、
むつき曰く「それなら私一人でも」の台詞の会話でわざとらしくなく示していたのも、
二人のチトセに対する理解度の差の表現という点で良かったです。
またこの買い出し中のむつきとの会話に出てくる「3つ目の夢。温かい家庭(はづき)」を、
前半におけるチトセとの会話のなかで謎かけのように残した「夢が2つともかなった(チトセ)」「3つよ(はづき)」の答として出してくるところも、
はづきの家族思いのところを絶妙のタイミングで印象づけできていたと思います。

笑えるシーンとしては、うづきとさつきの「今日の晩飯当番(さつき)」「がんばろーね…(うづき)」という会話が、
冒頭のはづきの大食漢ぶり(むつきが当番)を受けたものとなっていて面白さが出ていました。

脚本:土井佐智子・吉岡たかを 絵コンテ:ひろたたけし 演出:所俊克 作画監督:岩崎泰介

更新:2004年02月27日 作成:2002年6月18日 文責:ごま