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ごまの「アニメ批評日記」

『円盤皇女ワるきゅーレ 十二月の夜想曲』

2003.11.10第1話「時の鍵」

全話の評価 ★★★ 公式のあらすじ

突如現れた巨大な鍵「時の鍵」を使ってワるきゅーレが遊んでいると、鍵の力が暴走をはじめる、という話。

2002年7月の第1期(全12話)に続く第2期シリーズ。
今シリーズの鍵(正に鍵)を見せた他は、それを和人達に絡ませた日常の一コマというべき話で、
前作のおさらいによって世界観の説明をしなかったのは、前期が12話あるいは今期も12話しかないということでの割り切りでしょうか。
それでも朝食シーンの和人達の会話や、「ハイドラの封印解除」→「ワるきゅーレの変身」という流れには、
初めて見る受け手にも世界観や人物相関がなんとなく伝わるような配慮が感じられました。

今回はカット数が多く、それを生かしたメリハリやキレのある間の取り方で終始楽しめました。
ワるきゅーレを溺愛する真田さんの「(ワるきゅーレの夢に)出てない…」「留守番します…」の台詞のところや、
巨大化シロに真田防衛隊(?)があっさりと壊滅させられるところの間の取り方、
鍵を使いこなして鼻息荒いワるきゅーレ(2度)をあまり目立たせずに描いているところなど、
ともすればくどい演出で間延びしてしまうところで、テンポ良さが出ていて好印象でした。
正直な話、監督が「ワンダバスタイル」と同じ人とは思えない出来の良さです。

気になったのは台詞が聞き取りにくい箇所がいくつかあったことと、
変身シーンが一部改変されたことで、この時の絵柄がちぐはぐに感じられることです。
あと変身シーンでは、最初のところでなぜか驚く和人の瞳も改変した方が良いと思います。

脚本:月村了衛 絵コンテ・演出:高本宣弘 作画監督:川口理恵

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2003.12.04 第2話「機械皇女コーラス」

全話の評価 ★★★★ 公式のあらすじ

機械人間で余命幾ばくもないという皇女コーラスの希望を叶えるため、和人が恋人役を演じる、という話。

和人が恋人役を引き受けて以降の展開自体はありがちな人情喜劇でしたが、完成品は別物。
今回のポイントは最初にライネがコーラスの嘘を見破る一幕。
ここで(事実としては)嘘を見破られたコーラスはわざとらしく機械のふりを演じますが、
ライネが信用の置けない人物として作中では通っているため、和人達はライネの言にとりあいません。
しかしコーラスの言動描写は嘘であることを映像的に示していて、受け手は事実を知ることになります。
ところがライネの「フカシよフカシ」という台詞がサラッと出ていたり、信用が置けないライネのキャラクターから、
受け手に8割方嘘だと思わせつつも、何かあるかも知れないという含みを残すことで、
その後のベタな展開を退屈させずに楽しませることができていました。
前作から築き上げたライネのキャラクターを、作り手が効果的に使いこなしていたということも成功の要因だと思います。

脚本:月村了衛 絵コンテ:柳沢テツヤ 演出:小林浩輔 作画監督:中島美子

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2004.01.18 第3話「電波皇女コーラス」

全話の評価 ★★★★ 公式のあらすじ

和人たちに秋菜が報せた「不吉な予感」に、コーラスが地球に訪れる危機を大々的に訴えるが誰も相手にしてくれない、という話。

秋菜の「不吉な予感」というシリーズ上の重要な伏線を匂わせつつ、コーラスの「狼少年」ぶりとライネのオチを組み合わせた一本。
誰も信用してくれないなか延々続くコーラスの演説が笑えるところで、
台詞や行動内容と演技でコーラスの「電波」っぷりを上手く表現できていました。前話との組み合わせも効果的。
ただ中盤話の流れが一本調子で物足りなさもありました。
ライネを使うのなら、もっとコーラスの対比として前面に押しだし、
そのまともぶりを強調して暗黒星団宅配便につなげる方が、本編・オチともに更に盛り上がったのではないかと思います。

脚本:月村了衛 絵コンテ・演出:岩崎太郎 作画監督:堤弘子

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2004.01.23 第4話「学園惑星の乙女たち」

全話の評価 ★★★★
ワるきゅーレへの憧れを募らせるライネと、それを見守るルームメイト・コーラスの学園時代(中等部)の思い出、という話。

今シリーズの出来の良さを象徴するような一本。
直接的には、早くも見え隠れするコーラスの変人ぶりを随所に配しつつも、
憧れのワるきゅーレに手紙を手渡すまでのライネの乙女心をしっとりとした雰囲気でつづる展開で、
学園生活時代のルームメイトだったと今回明らかになるコーラスの、良き友人ぶりを併せて描いてます。
しかし既に織り込み済みである現在のライネと、前2話で描かれたコーラスのキャラクターをふまえると、
直接的な展開・描写とは違ったものが見えてくるというのが今回のミソ。
当時は純真さ100%だったと分かる学園生活時代のライネが、
自称「アララギ派」である天然ボケのコーラスの介入によって弄ばれる滑稽さを楽しむ構図になっていました。

ラストの「えぇえぇ、忘れませんとも」という現在のライネの独白は、本編のオチとしてまとまっているのと同時に、
コーラスによってライネの性格がねじ曲げられた、という想像も膨らむもので面白かったです。

脚本:月村了衛 絵コンテ:そーとめこういちろう 演出:花井信也 作画監督:田中正弥(公式サイトの修正データ)
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2004.01.27 第5話「ワルキューレ・ゴースト」

全話の評価 ★★★★
街で偶然(?)出会ったワルキューレそっくりで妖気を漂わせる美少女に和人が惹き込まれていく、という話。
ワルキューレ・ゴーストの表情の付け方や背景描写など、
秋菜が言うところの妖気が映像的に表現できていて、和人が惹き込まれている感じが良くでていました。
旅行代理店の前の和人の後ろからゴーストが現れるカット。
ウインドウにぼんやり写り込んだゴーストが、間をおいてクッキリ浮かび上がる映像は、注視する和人の視線の表現であると同時に、神出鬼没なゴーストの怪しさが出せる演出だったと思います。

ラストシーンにおけるゴーストのワルキューレに対する「幻の恋人を手に入れた気分はどう?」
という台詞は、冒頭に登場した漫画「こうさぎぴょん子ちゃん」が今話の人物設定をなぞっているのと、
前回のムーンライトフェスティバルでのハイドラの配役「幻の恋人役」と合わせて、
シリーズストーリーの行方を暗示するキーワードとして上手く印象づけできていました。

細かいところでは「探偵ごっこ」のような2回の尾行シーンが面白い。
映像的には最初はハイドラと秋菜。2回目はそれにワルキューレと真田を加えただけのものなのですが、
尾行のアクションに加えて、そのチープさが逆に馬鹿馬鹿しさを増していて良かったです。
電柱に隠れるところでワルキューレの動きだけ緩慢なのも面白いです。

ワルキューレ・ゴーストにハイドラ、秋菜、ワルキューレが吹き飛ばされる映像がありましたが、
どれも真後ろからの構図だったのは単調に見えてしまうので印象が良くなかったです。

脚本:月村了衛 絵コンテ:川崎逸朗 演出:下司泰弘 作画監督:柳沢テツヤ
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2004.02.02 第6話「メーム夜間飛行」

全話の評価 ★★★★
メームが土産としてもってきた宇宙入浴剤の副作用でワルキューレ以外の全員の年齢が若返ってしまう、という話。
「お姉さま」となったメームの街での出会いというロマンスと、
子供になってしまった和人たちの日常風景というコメディの両方が楽しめる一本。
印象的だったのは、ファミレスで和人たちがメームを発見するまでの流れ。
単純に街なかで発見させるのではなく、
和人側は、ワルキューレの料理が不味い→やっぱり不味い→みんなで外食、
メームは、お姉さまと呼ばせる→若返ってナンパでちやほや→食事でも、
とそれぞれのストーリラインをきっちり作っておくことによって、自然な展開として見せることができています。
これが「ていうか日頃の言動とえらく違ってない?」というリカの台詞をグッと引き立てていました。

ワルキューレが不慣れな家事一切を引き受ける展開への理由づけとして、
入浴剤によって和人が小さくなったので、その魂の分ワルキューレが大きくなったというのも説得力があって良かったです。

コメディ部分では、「お姉さま」を強要するメームとリカの会話や、
小さい和人にときめいて拉致しようとする秋菜、
外食に喜んでおいて取って付けたようにワルキューレをフォローする和人など、
笑えるネタが満載。表情の変化もキッチリつけてあって楽しめます。
個人的には拉致未遂の秋菜への「んまぁ〜、しらじらしい!(ライネ)」がツボにはまりました。

メームのストーリーはありきたりなロマンスといった感じでしたが、
深見の「あなたの本質が写ってない」という台詞や、仲良くなっても結局分かれることになる展開など、
ゴースト絡みのシリーズストーリーへの伏線ぽく感じさせました。今後に注目です。

脚本:月村了衛 絵コンテ:玉井公子 演出:夕澄慶英 作画監督:石橋有希子
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更新:2004-02-18 作成:2003-10-25 文責:ごま(goma)
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