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ごまの「アニメ批評日記」

2003年のアニメをふりかえる

2004.01.11 前編

年頭の肩慣らしとして、かなり遅めの一年回顧をしたいと思います。
昨年一年もたくさんのアニメが放映されました。
まずはその作品のなかからのベスト6を。

第6位「ボンバーマンジェッターズ」
本作最大の功労者はマイティ絡みの描写の秀逸さ。
使命感や正義感といったきれい事ではなく、一人の人として生々しくリアルに描くことを全面に押し出したことにより、
受け手を引きつけ感動的な物語として大団円を迎えることに成功していました。
部分的には屈指の出来ばえの話数が多々ありましたが、
3クール目以降は大筋の流れを追うだけの展開が多く、メカード絡みの描写に面白味もなく間延び気味だったのが残念。

第5位「.hack//黄昏の腕輪伝説」
「.hack//SIGN」と同じ世界観で作られた続編的な設定の物語でしたが、
前作ではなしえてなかった「ネットゲーム」の表現に成功していたことを大きく評価。
ほぼ全面的にネットゲーム内の世界で物語を進行させつつも、
それが映し出されているだろうモニターの前にいるプレイヤーの姿を感じさせていたのが、 本作ならではの味わいが出ていて楽しませていたと思います。
可愛らしいキャラがコロコロ動く作画も全体的に美しく、楽しめるものとなっていました。

第4位「THEビッグ・オー 〜secound season〜」
最終回で種を明かされてみれば正直ガッカリしたところもありましたが、
シリーズ中はメガデウスの存在理由やパラダイム・シティの成立など謎の数々をはじめ、
現実世界への「なぞらえ」を匂わせる部分もあり、受け手の興味を引き続けるには十分な内容でした。
肝心となるメガデウスの描写も、その巨大さ力強さが良く出ていて魅力的で、
大人を楽しませるロボットアニメとして成立していました。

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2004.01.13 後編

第3位「ガンパレードマーチ」
ハードなロボットアクションで幕を開けた物語は、コメディとシリアスを違和感なく行き来しつつ進行し、
終わってみると戦場ラブストーリーとして綺麗にまとまっていました。
全く別な話の各話のエピソードに前後のつながりをもたせている完成度の高さや、
日常会話における台詞など、自然な描写のなかに物語に必要な要素を散りばめていたのが見事。
コメディとシリアスのバランス感覚に加え、笑いのセンスも高く、何度も楽しめる話に仕上がってます。

第2位「piano」
本筋としてはピアノを通じた少女の成長物語ですが、
この作品の真の魅力は、その成長要因となる周囲の人間の描写の素晴らしさです。
オープニング映像の家族でのドライブシーンも暗示していますが、
主人公の成長は親兄弟や親友・ピアノ講師ら周囲の人間に暖かく見守られているという要因があってのことで、
人物描写におけるちょっとした表情の変化や何気ない仕草にそれが繊細に込められています。
それを感じ取れることができれば、本作の奥深さが分かると思います。

第1位「ストラトス・フォー」
人類への驚異である巨大彗星群の迎撃というエンタテインメント性を有しつつ、
主人公たちの青春を等身大にあったリアルなものとして描いている作品。
物語におけるいくつものテーマや重要な要素が、
うっかりすると見落としてしまいそうな程のレベルで各話にまんべんなく割り振ってあり、 それらを伏線的なつながりでオーバーラップさせつつ話が作られています。
全編通して見ると、まるで一本の映画を見るかのような完成度の高さを感じることができます。
放映延長を考慮したのか大小様々な謎が残りましたが、真相の説明や脱出の描写など頭でっかちな演出にこだわらず
美風たち主人公の視点ですっきりまとめたクライマックスも良かったです。

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2004.01.14 総括

「週80本!」と作り手のキャパシティが危惧され続けて迎えた昨年でしたが、
作画クオリティの面では全体的に見てそれほど目立った問題もなかったように思います。
もっとも首都圏のみ放映の作品ではちょっとした事件もあったようで、
何事もなく思えても現場の方のご苦労は相当のものなのだろうと推察されます。

しかし演出面では、同一作品での話数による出来不出来の差や、特定の話数のみ非常に良い出来、
といったひずみのようなものを多く感じた一年で、
作画はともかく演出面では多作品放映による人材不足が伺えました。

またこれも多作品放映の影響でしょうか、
現在連載中の漫画原作作品において原作における話数のストックが少ない状態でのアニメ化が少なくなく、
原作の進行に影響を及ぼさないようと配慮した結果、
まとまりのないクライマックスで受け手に肩すかしを食わせる例が見られたのは、もう少しなんとかして欲しいものです。

そんななかでも先に挙げた上位6作品をはじめ、
楽しめた作品楽しめた話数に出会って過ごせたのは、日記を書くうえでもまずまず良い一年だったと思います。

印象に残った話数(★★★★★は殿堂入り級)
「ストラトスフォー」第11話「TARGET MERGE 」
「ストラトスフォー」第12話「ENGAGE! 」
「piano」第6話「生き生きと-con fravana-」
「ガンパレードマーチ」第8話「四月になれば彼女は With Your Masket,Fife,And Drum 」
「THE ビッグオー第2期」第20話「Stripes 」
「.hack//黄昏の指輪伝説」第1話「伝説の勇者」
「ボンバーマン ジェッターズ」第37話「蘇るMAX」
「ボンバーマン ジェッターズ」第45話「ゼロとシロボン」★★★★★
「カレイドスター」第21話「謎の すごい 仮面スター」
「D・N・ANGEL」第9話「ちいさな恋」★★★★★
「カスミン(第3期)」第5話「カスミ、泳ぐ」
「高橋留美子劇場」第6話「君がいるだけで」
「エアマスター」第1話「飛べ!エアマスター」★★★★★

最後に話題や前評判の高さにふさわしく「面白かった」作品に拍手をおくるべく、
「黄金木苺賞ランキング」ベスト3を。

黄金木苺賞 第3位「ギャラクシーエンジェル(第3期)」
溢れぬ才能の持ち主を大役に抜擢。その有無による出来の差はどれほどかという実験的作品。
下位互換としての前シリーズ内作品の焼き直しや、今はなきB級アニメ誌も裸足で逃げ出すパロディ満載の話数など、
前々シリーズの担当話数で見せた才能をいかんなく発揮し、前シリーズで築き上げた資産を食いつぶしていきました。
大発生した、訳も分からず面白がろうとする宗教化したファンや、アニパロの元ネタ知識を披露して悦に入るオタク達の喝采を浴び、
形の上では大成功で幕を閉じ、近く第4期シリーズが放映されます。

黄金木苺賞 第2位「宇宙のステルヴィア」
某人気アイドルもどきの容姿と、キャッチーなニックネームの主人公が大人気を得たSFありのラブコメ作品。
その盛り上がりが最高潮となるシリーズ半ばに起こった、予想外の伏兵キャラとのキスシーンがファンに衝撃を与えました。
ただキスに至るその伏兵キャラの思考回路が変なのは別として、実際のところこの点に関しては話の積み上げがなされておりファンの被害妄想とも。
主人公の性格・思考・主義主張・恋愛感覚や能力が、
その話数の内容・演出意図に合わせるかのように目まぐるしく変わる主人公や、
BGMが象徴している押しつけがましい演出が麻薬的に受け手を魅了していました。

黄金木苺賞 第1位「機動戦士ガンダムSEED」
大々的なプロモーションの後押しを受けて登場した人気「シリーズアニメ」の何度目かのアニメ化作品。
シリーズ第1作を見て育った戦争を知らない作り手達によって生み出された「リアルな」戦争ドラマが、
同じく戦争を知らない子供達に「リアリティ」とともに強い感銘を与えました。
主要な登場人物が一人も漏れることなく、それぞれ他の誰かと恋愛・友情・敵対などの何らかの因縁を必ず形成しているドラマ作りには、
まるでパズル製造工場を見学しているかのような驚きを感じさせます。
このような作品を見て育つ子供達は「幸せ」であるというより他ありません。

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更新:2004-01-18 作成:2004-01-18 文責:ごま(goma)
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