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ごまの「アニメ批評日記」

『高橋留美子劇場』

2003.10.15第6話「君がいるだけで」

倒産失業中である仕事一筋三十年の男堂本が、病気の妻に代わって慣れない弁当屋のパートに挑む、という話。(→公式のあらすじ

原作は高橋留美子。「ビッグコミックオリジナル」掲載の短編漫画のアニメ化。
本作の映像では他の同氏原作のアニメ同様、人物のデフォルメを使うことなく、原作に忠実な絵柄で終始します。
これは原作キャラの絵柄自体がコメディ演出の際のデフォルメ顔を有しているからでもあります。
受け手としては原作をそのまま機械的にアニメ化していると解釈してしてしまいそうになりますが、
よく見るとアニメならではの演出が多数なされていることに気づきます。

アニメならではの表現がユーモラス

特に目につきやすいのは「うさぴょん(うさぎの着ぐるみ)」の描写。
影のつけ方や微妙な瞳の色の変化では中にいる堂本の存在感、感情の違いを表現できていました。
子供に対する両耳間の放電や小生意気な若者を投げ飛ばすときの耳の動きは、アニメならではの怒りの表現。
放電の描写の際、二回目では耳を隠し放電による光として表現しているのもちょっとした上手さを感じさせます。
着ぐるみ(の頭の部分)を脱ぐときの動きと機械音も遊び心があって面白いです。

他にも堂本が弁当屋に入ってくる時、店長らの会話に合わせて鬼の姿から一瞬で元の姿に変化するところ、
富士山が噴火する心情描写の際、背景に東京タワーと同時に出して最初は訳が分からない表現にしているところ、
店長が堂本に「クビだ!」という台詞のエコーの使い方で、心の中の台詞なのに実際の台詞であると受け手を意図的に錯覚させてるところ。
これらも上手い演出だったと思います。

笑顔の変化をきっちり表現、ラストシーンが決まっていた

あと作画で重要なのは堂本の笑顔の表現。
最初のぎこちない笑顔から段々穏やかな笑顔への変化が物語の軸となっているのですが、
この笑顔の違いがきっちり表現できていたのが素晴らしいです。
この表現ができていたことにより割と淡泊なオチであるラストシーンが美しく決まっていました。

声優陣の演技が楽しめる

それから何と言っても声優陣の演技が絶妙なのが楽しめる大きな要因です。
堂本、細田の二人のやりとりに性格の好対照なところがよく表現できていている他、
アッチャラ、パートのおばさんら脇役の演技もリアルな存在感が出ていました。
ナレーションも抑えた感じで出しゃばらず、かつユーモラスな雰囲気を醸し出せていたと思います。
海原雄山やヨミばりの堂本の邪悪な笑い声も印象的。

現在視聴済み11本のなかでは、屈指の出来映えだと思いました。

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更新:2003-10-25 作成:2003-10-25 文責:ごま(goma)
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