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ごまの「アニメ批評日記」

『なるたる』

*2003.09.10 第1話「それは星のカタチ」

夏休みに祖父母のいる離島を訪れた女の子・玉依シイナが海で不思議な生き物と出会う、という話。(→公式のあらすじ
この第一話では、謎の声とホシ丸以外は特に何事もない田舎の夏の風景が描かれています。
ところが色々と描いているのに作り手の主観が一切見えてこず、違和感を感じます。
一見、田舎の夏休みを満喫しているかに描かれている主人公・玉依シイナですが、
どこか無機質な感じで、こういう時の楽しい雰囲気が全く伝わってきません。
また、田舎の風景描写も細かくなされている割に郷愁が感じられません。

アップが少なくバストアップなど距離を置いてのキャラ描写を多用している点や、
音響的にも盛り上げを感じさせなかったことを合わせると、これら無機質な演出には、
例えば第三者的視点でシイナを描こう、というような意図があるのかもしれません。
いくらでも盛り上がれそうな今回の話をこれだけ平板に作るというのは、見方を変えればすごいことだとは思いますが、
現時点でそれが鑑賞して面白い、あるいは楽しめるかというと否定せざるを得ません。

白紙の状態で鑑賞したので、このようなことを特に感じました。
とはいえ、今回の演出。印象的といえば印象的ではあります。
今後は「不思議な力」をめぐる主人公たちというアニメならではの話が展開されるようですが、
どういった形で進んでいくのかしばし注目です。

脚本:小中千昭 絵コンテ:誌村宏明 演出:近橋伸隆 作画監督:牛島勇二

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2003.11.01第13話(最終回)「未来の子ども達へ贈る」

全話の評価★★☆ 公式のあらすじ

貝塚ひろこの操る「竜の子」が、彼女をいじめていた女の子達を殺戮する、という話。

最近の漫画原作付アニメの傾向である「続きは原作の方で」とでも言いたげな中途半端なまとめ方、
というのが一因ではあるのでしょうが、だとしても本作の作りは変です。
シリーズから見えてくるストーリーの要素は三つ。

「竜の子」の力で世界を改変しようとする子供達がシイナに関わってくること

冷酷無比に殺戮を行う須藤陣営と自衛隊・民間航空機との戦闘など衝撃的な映像が極めて印象的であり、
シイナの母の動きも伏線的に描かれていることから(1)が物語の主軸かと思われたのですが、第10話以降須藤陣営の動きが鳴りを潜めてしまいます。

いじめられっ子の佐倉や貝塚がなんらかの形で逆襲に転じること

(2)は佐倉の第2話からの登場から要素としては一応全話を通してますが、(1)の印象度が強すぎてサイドストーリー的な印象しかなく、第11話からの展開は唐突に過ぎませんでした。
また貝塚についても第4話のシイナが小沢に平手打ちされる一幕に伏線的な台詞がありますが、その後一切登場せず印象が弱く下手な伏線。(2)を主軸とするなら須藤陣営を「こういう人もいる」というゲストキャラ程度に留め、いじめの蔓延ぶりを強調した方が良かったはずです。

「竜の子」を得た子供達の群像

(3)は(1)(2)が並立していること、江角ジュンの単独エピソードである第10話の存在などが根拠ですが、これも(1)の印象が大きく、印象度の強弱からいってそういう風には見られません。

あと、鶴丸の交際相手や高野の後輩、佐倉や貝塚へのいじめ、シイナの母など主に女性の身勝手さというかダークな部分の描写も演出要素として考えられますが、ステロタイプで陳腐な演出や「女性による性的虐待」といういじめのリアリティの無さで意味不明な印象でした。

ちぐはぐになっているシリーズ全体の作り

また映像的に見ても、(1)主体による序中盤の不条理さから、それとは無関係ないじめの復讐を主としたカタルシスへ、とまとまりがありません。冷酷無比な殺戮がしたいのなら単にホラー作品にでもすればいいのでは、と本編を見る限りでは思えます。映像そのものも、テレビ放映アニメにしてはより残酷的表現へと工夫したつもりなのでしょうが、ハッキリ言って安っぽい映像の域を出てなかったと思います。絵柄も原作を踏襲したらしいという以外はこれというものがありませんでした。

以上、どこをどう見てもちぐはぐになっているシリーズ全体の作り。
どの要素を軸にするにしても現状よりましな作り込みはいくらでもできたはずですし、
本編の各話を生かすなら、先にいじめの話を大きくもってきておいて「だからこそ世界の改変を」と須藤陣営につなげるやり方もありました。
なのにそのいずれもせずにちぐはぐな道に進んで終わった全く不可解な作品でした。

脚本:小中千昭 絵コンテ:そーとめこういちろう 演出:宮田亮 作画監督:荒尾英幸

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更新:2003-11-10 作成:2003-09-16 文責:ごま(goma)
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