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ごまの「アニメ批評日記」

『妄想科学シリーズ ワンダバスタイル』

更新:2003-07-05

2003.06.03 第1話「プロジェクト始動」

「ワンダバスタイル」第1話

全話の評価?

デビュー直前のアイドルグループ「みっくすJUICE」の4人が、九十九博士の月面着陸挑戦プロジェクトに参加する、という話。

アイドルグループを組んで再起を図ろうとする売れない歌手4人が、
その立場の弱さゆえに月面着陸挑戦という怪しげなプロジェクトに参加させられつつも、
月面上でのコンサートを夢見るという設定は面白くなりそうな予感を抱かせます。

今回は、キャラクターのプロフィールを描きつつプロジェクト参加に至るまでを描いていたのですが、
「キャラ萌え」を意識していためか尺が余ったためか(或いはその両方)、
テンポが悪い上に時間の流れの通りにダラダラ進行する展開で、
全体的に間延びしていて面白くなかったです。

象徴的だったのが感情と動作があっていないキク8号の描写で、
キビキビした台詞で映像ももう少しテンポよくした方が面白かったと思います。

唯一面白かったのは路上で宣伝するフォーク歌手のシーンでしたが、妖精ネタで台無しに。
キャラクター設定と台詞で十分楽しめたのに、
余計な要素を入れてしまうのは作り手の自信のなさの現れでしょうか。

時間の流れの通りにダラダラ進行するのではなくて回想の形で進行した方が良かったのでは。
例えば「突然ですが私たち4人はアイドルなのに月面着陸に挑戦することになりました」などと言わせつつ、
九十九博士の下に集合するところを冒頭にもってきて、
九十九博士のところで一人一人キャラ紹介しつつ、
回想の形で本編の冒頭〜集合するまでを描いた方がメリハリがついたと思います。

時代背景は60年代後半から70年代前半(昭和40年代)頃ということで、
同時代の世相に加えてサイケデリックな要素をとり入れているにも関わらず、
全体的な色調が極めて淡いのはいかがなものでしょう。
「みっくすJUICE」を強調したいという「キャラ萌え」意識の影響なのでしょうが、
そのような作り手のご都合主義が伺えてしまうのは印象良くないです。

脚本:滝晃一 絵コンテ・演出:高本宣弘 作画監督:原将治

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2003.06.10 第2話「H2CO3にカンパイ!」

#見せるためだけに何本もスパークリングワインを持ってくる博士…@モモチ

炭酸ガスの圧力放出を推進力にして月面を目指す、という話。
例えば漫才がそうなんですが、面白いネタで人を笑わせるとき笑わせる本人は笑いません。
たとえ面白いネタであっても、笑いながらやったり、
「今から面白いことを言います」と前置きしたりとかすると台無し。
本作はその台無しを徹底的にやってしまった作品だといえます。

炭酸ガス放出で宇宙を目指すという馬鹿らしさも、その際の燃料投入シーンもネタとしては申し分ないのに、
前者は建設風景などのロケット発射までに至る経緯を示すシーンが端折られ、
後者はネタそのものが十分ギャグとして成立しているのに、
ラムネ業者やお婆さんが直接投入するというしつこいギャグ描写で秀逸なネタを台無しにしています。
正に作り手自身が笑いながら作っている、
或いは笑いを押しつけているといった印象が強すぎて全く笑えません。

ロケット発射に至るまでの経緯を真面目にキッチリ描き、
燃料投入は先にシステマチックな感じで描いてから、その背後に本編の業者の姿を見せる、
という演出にすれば本編のものより遥かに面白くなったと思います。
本作は脚本の秀逸さを絵コンテ・演出・監督が駄目にしているのが明らかで、
脚本がかわいそうだと思いました。

ついでにいうと情けない声でしゃべる九十九博士の演技も押しつけがましく感じます。
正真正銘真面目な演技をさせた方が、その真面目さとのギャップで笑えるはずです。

BGMに加えてキク8号の裸を何か(人・モノで)隠すというギャグ演出により、
本作の作り手が映画「オースティン・パワーズ」を意識しているということがハッキリしました。
しかし、キャラクターの方が動いて障害物にタイミング良く入り込むことで隠し、
かつ隠すモノが性器を暗喩していることでも面白さを演出している映画に比べると、
説得力のないマネージャーの頭の動きで隠す本作の描写は安っぽすぎて笑えません。

キク8号による回想で、タンポポの種子が空に舞うなか九十九博士がキク8号に語るところは、
本人の真面目さと現実の価値観とのギャップで笑える形になったましたし、
「原チャリ」が真面目な声でキク8号地上落下の被害を語るところも同様。こちらはテンポも良かったです。
九十九博士の五寸釘もネタ・テンポともに面白かったのですが、声が…。

脚本:滝晃一 絵コンテ:高本宣弘 演出:久保太郎 作画監督:藤井まき

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2003.06.23 第4話「時速千六百キロメートルの恐怖」

全話の評価★★★

静止衛星の軌道上から地球の自転速度を利用して月を目指す、という話。
ヘリウムガスで上昇→みっくすジュースが変声(着想としてはシリーズ屈指)という前回もですが、
自転速度で月へ→天王星行きからの生還、という今回の話もSFギャグコメディとしては楽しめる筋立てです。
特に今回は、第1〜2話のようなマネージャーの寒いボケ&ツッコミが少なく、
九十九博士もほぼ進行役に徹していたので、幾分ましな作りになっていました。
冬出ゆりが率先して困難に立ち向かおうとするところはひとつの見どころなのですが、
これまでの四人は異口同音に文句を言うだけ、即ち一人でも話が成立する程度にしか描かれてない故に、
話が今ひとつ盛り上がりを書いていたように思います。

脚本:滝晃一 絵コンテ:しまづ聡行 演出:新田義方 作画監督:柳伸亮

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更新:上記参照 作成:2003-06-09 文責:ごま(goma)
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