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ごまの「アニメ批評日記」

『カスミン(3期)』

NHK教育にて2003年4月9日(水)夜7時より放送されたテレビアニメです。
前作『カスミン』(2期)のアニメ批評はこちらにあります。

2003.06.25 第5話「カスミ、泳ぐ」

ノーズクリップのヘナモン、ハナコとハナエによってカスミとかえでがシンクロナイズドスイミングをさせられる、という話。(→公式のあらすじ

雪乃がカスミにちょっかいを出す今期独特のワンパターンな背景に加え、
突然現れたハナコとハナエにポトポットとあらいさんがシンクロをさせられるあざとい導入、
教室でみんながカスミの肩を叩くところの使いまわしだったり、
ハナコとハナエによるかえでへの嘘の説得が間延びしていたり、
と序盤から中盤にかけてはチープさばかりが目立つ作りでしたが、
ハナコとハナエが「本当の事」による説得をはじめるところから一変しました。

何といっても今回の見どころは、
「シンクロ発表会」を決意したところからBGMと共に始まる約1分間の特訓シーン。
登校、給食当番、縁側でお茶を飲む、掃除当番、階段の踊り場、下校(?)と、
学校という日常生活のなかで繰り広げられる練習風景が抜群のアニメ映像になっています。

普通、特訓→本番という今回のような展開の際は、
特訓を止め絵の連続で稼いだ枚数を本番に割り当てるのが常套手段ですが、
これを逆にしたのが秀逸なアイデア。
日常生活の様々なシチュエーションでシンクロさせることで、
コミカルにかつバリエーション豊かな映像を楽しむことができました。
またこうすることで、
短い時間を使って必死に特訓し上達するというリアリティにもつながりましたし、
実際のシンクロではなくイメージトレーニングということで、
素人の二人が上手くシンクロできることの説得力も出ていました。

シンクロの映像では本物のシンクロナイズドスイミングと同様、
カスミとかえでのシンクロする動きがアニメーションとして楽しめますが、
その全体像という形で漫然と見せるのではなく、
固定視点のフレームに二人のキャラが入り込んできて、また出ていく、
見せたい身体の部分だけを見せる、
といった画面の枠を上手く使った映像表現も注目の演出です。

もうひとつの見どころは、
「もう一度シンクロを」と願うハナコとハナエによる説得シーン。
形としては、ハナコとハナエの境遇を聞かされた人情家で負けず嫌いのかえでが、
ノーズクリップ再起に向けて先走るというもの。

こういうシーンではえてして同情要請一辺倒の描写になるものなのですが、
「(代わって五輪出場したノーズクリップが)金かしら銀かしら。よく分からないわ」
「(古いノーズクリップが捨てられることは)この世界ではよくあること」
「(捨てられてもいいのか、と問われて)基本的にはそうですけど…」
といった淡々とした語り口、そしてその際の声優の演技によって、
ハナコとハナエの「同情して欲しいんじゃない」という言葉通りのことを見事に表現していました。

それでいて、この一幕での「ゴミ箱の中にいるハナコとハナエ」のカットでは、
新品のノーズクリップに交換するごく当たり前の風景として描かれた直前のカットと、
さり気なくかかる寂しげなBGMによって、
「同情して欲しいんじゃない」ことを理解しつつもジーンときてしまうのが、
更に味わいを増す上手い演出だったと思います。
これは古くなって見向きもされなくなった道具にスポットを当てるという、
本作の基本構成にも沿ったものになっていて、その意味でも好印象でした。

最初にチープさが目立つと書きましたが、
全体を振り返ってみると、
終始カスミやかえでが表情豊かに描かれていたのは好印象でした。

ひとつ疑問に思ったのは、本番における二人の水着。
蘭子の水着に比べてとりたてて見栄えが良くなるわけでもなく、
あえてスクール水着にした意味がよく分かりませんでした。
本番も蘭子のお古の水着で構わなかったと思います。

脚本:吉田玲子 絵コンテ・演出:小原正和 作画監督:中村和久

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2003.11.07第26話(最終回)「霞家の人々」

全話の評価 ★★★★ 公式のあらすじ

ヘナモンカゼの混乱に乗じて人間界進出を目論む霧一族と霞家の対決、という話。

演出面では、桜の花びらを食べさせる霞家の住人達や霧間への仙太郎の主張に、キャラの個性が良く出ていたのが印象的でした。
ただシリーズ全体として今回の最終回を見ると、
雪乃とカスミの関係性をひたすらメインで描いてきて、霞家と霧一族の対決を最後にもってきたのは工夫ということなのでしょうが、
第13話「カスミ、霧の者になる」を伏線的エピソードとしてみても唐突な感が否めず、シリーズを続けるためのシリーズという域は出てなかったと思います。
とはいえ、今回の霧間に対する仙左右衛門の主張はこれまでの全シリーズでの積み上げを感じさせるものでしたし、
第5話のような屈指のエピソードも見られたので、それなりに満足のいくシリーズだったと思います。

脚本:吉田玲子 絵コンテ・演出:本郷みつる 作画監督:高橋英樹

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更新:2003-11-10 作成:2003-07-05 文責:ごま(goma)
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