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ごまの「アニメ批評日記」

『カレイドスター』

2004.01.25 第29話「新しい すごい ライバル」

全話の評価 ★★★★

レイラの脱退により観客減のカレイドステージに、「客が俺の為にいる」と豪語する人気サーカススター、レオン・オズワルドが加入する、という話。

新シリーズの幕開けとなる今回はその趣旨、即ち主人公そらが進むべき方向性を提示する重要性をもつ話。
それを会話や独り言といった台詞が直接的に説明していくわけですが、台詞の使い方のセンスがよかったのが印象的。

そらがステージに合流する冒頭の一幕では、
ステージの現況やそらの立場・思いを説明くささを感じさせることなく自然な会話の流れで表現されていました。
後半、そらの一人二役の早変わり演技を見るレオンの台詞には、レオンによるそらへの評価、ひいてはレオン自身の今後の動向について、
刻一刻と推移する表現がなされており、受け手に緊張感をもって注目させる演出効果になっていました。

ちょっとしたところで注目したいのは、楽屋でフールがそらの衣装替えを手伝うシーン。
ここではフールの今後の動向を踏まえつつ、エッチなフールを使ったコメディというのが表面的なシーンでしたが、
ここで先にフールが着ぐるみのファスナーを下ろす映像のアップを先に見せておくことで、
直後のステージシーンにおけるフールの同じ行動を台詞だけで受け手に理解させており、
「着ぐるみから衣装への早変わりパフォーマンス」のスピード感を損なうことなく表現する演出にもなっていました。

全体的には上手くまとめたという感じがするものの、本作としては物足りなさを感じる一本でした。
最大の原因は二人の新キャラを同時に登場させたこと。
一本にまとめることで今後の物語の方向性を受け手に分かりやすく示すという意図なのでしょうが、
そのおかげで展開を駆け足で追うだけの映像になってしまってました。
ストーリーの奥行きやキャラの掘り下げなどを個々のシーン、カットに込める本作の魅力ともいうべき演出の上手さがあまりなかったのが残念です。

脚本:吉田玲子 絵コンテ:佐藤順一 演出:平池芳正 作画監督:福島豊明・金崎貴臣

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2004.01.30 第30話「もう一人の すごい 新人」

全話の評価 ★★★★

そらとレイラの「幻の大技」に感化されたロゼッタが、エージェントから脱走するかのようにカレイドステージへやってくる、という話。
前回と違ってロゼッタ一人が主役であったこと。そしてシリーズ本編の重要度は前回の二人と比べて高くないこと。
と条件的に恵まれた面はあったものの、コミカルとシリアスのバランスを取りつつ、ロゼッタの掘り下げもあって楽しめる一本でした。

注目したいのはロゼッタを自室に匿ったそらが、戸外を見渡して追っ手の有無を確認するときメイと顔を合わせる一幕。
メイがそらを心底敵視しているということを「バウバウ!」と噛みつこうとする犬の姿で示していますが、
これはそらのライバルとして敵対関係にせざるをえないメイを、
そのままストレートに描くのではなくコミカル表現を用いることで、
受け手によるメイへの不快感を払拭するためのものであり、
より明るい雰囲気の中でのライバル関係を感じさせる演出になっていました。

またここでは、玄関を開ける直前にそらの表情とBGMがコメディ調に変化するワンクッションをおくことで、
直後のコミカルなカットに自然につなげているのも上手いです。

ラストのメイの顔面にケーキが落っこちてくるというシーンもこの演出とつながるもの。
表現そのものは歓迎会を拒んだメイへの罰的なオチをコミカルに描いたもので、
止め絵からゆっくりズームアウトする間の取り方が絶妙で笑いを誘うものでしたが、
スターの座をめぐって競いあう関係であっても、最後には仲違いは解けるであろうというそらとメイの関係性を暗示してるようにも見えました。

本編に絡むところでは、
「最近のそらの演技に元気がない」というポリスとカロスの会話や、
ディアボロ練習中のロゼッタが自分を見ることができたと勘違いしたフールによる
「私の新たな目的は真のスターとなるものを…」という台詞、
今回のクライマックスでの「ステージは観客と一緒につくるもの」というロゼッタの台詞など、

今後のそらが進んでいく道筋を、そらが不在のところや直接関係ない場面において示すさり気なさが良かったです。

今回は他にも笑えるシーン満載。
メイの出身地説明を兼ねたサラの「通信講座の猫拳」や掃除機に吸い込まれたフールなどは、
三枚目の演技がいつもながら絶妙で面白いです。
あと、ロゼッタがいる自室にそらが戻るときの合い言葉「カレイドスター」「すごいすごい」「すんごい」には大受け。

少々納得いかなかったのはロゼッタがそらに「エージェントに追われてる」と言うくだり。
「エージェントは分からず屋」「そうそう。しかも(鞭打ち)千回」と、「おかしい。エージェントは肉親?」と受け手には真相を匂わせる要素となっていますが、
立場的には上のはずのロゼッタが追われているという変な状況自体に、そらがツッコミを入れなかったのは変。
ツッコミを入れようとするも遮られるかのようにロゼッタがまくし立てるような会話の流れにすればスッキリまとまったと思います。

脚本:平見瞳 絵コンテ:佐藤順一 演出:福多潤・唐戸光博 作画監督:鈴木雄大・井上哲

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2004.02.04 第32話「氷の上の すごい 対決」

全話の評価 ★★★★

本当に輝いている自分を見せるためにメイが提案したスケートリンクを舞台に、ミナ・マリー役を賭けての対決が行われる、という話。
背後にせまるそらがレイラに驚異を与えつつ互いを高め合うという構図だった第一期(2クール目)までと比べ、
メイ登場以降、特に前回や今回は、そらとメイがスターの座を取り合う安直な構図が前面に出ていて見劣りしてしまいます。

とはいえ今回は、そらの弱点をケンやメリルに思わせぶりに語らせることと、
「そらには何かある」と前置きした上でパートナーにメイを選ぶレオンの意味深さが、
シリーズ展開にかかる伏線として受け手を引きつけることができたと思います。

個々の演出ではなんといっても冒頭の一幕。
「パートナーとして認めさせてやる」というそらのモノローグ→サブタイトル→そらには聞こえてなかったケンの助言という流れが巧妙。
最初そらのモノローグの時点では、受け手はこれをそらによるナレーションとして受け取ります。
ところがそらが存在に気づいてなかったケンの登場で、実はこれが一場面のなかのそらの考え事だったということだと分かります。
一つのモノローグでナレーションと考え事という二つの意味を受け手に与えているわけです。
そして、ここでサブタイトルを間に挟むことで、
考え事のために、その場にいたケン(アンナ)の存在にそらが気づいてなかったという状況に自然につなげていて、
そのことが、聞くことができなかったケンの助言の内容への興味が増す、
という3つの効果が込められた上手い演出でした(下の笑いネタへのつなぎを含めると4つの効果)。

直後の構図的にそらに隠れる位置にいたアンナがそらの移動によって現れるという描写も、
アンナが遠くから観察していたという感じがよく出ていて、「存在感薄っ!」という笑わせる台詞を引き立ててました。

映像的には、スケートリンクでの同一の構図においてキャラクターが遠ざかっていく動きが、
スケートで滑ってる感じを良く出せていて印象的でした。

初登場のときから気になっているのですが、メイが技の名前を叫ぶことが悪印象。
キャラクターを立たせるためなのでしょうが、声優の演技で十分表現できているので必要ないと思います。

脚本:上代務 絵コンテ:佐藤順一 演出:玉川達文 作画監督:福島豊明・金崎貴臣

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更新:2004-02-28 作成:2004-02-28 文責:ごま(goma)
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