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ごまの「アニメ批評日記」

『E'S OTHERWISE』

2003.10.24「E'S OTHERWISE」第26話「来るべき黎明」

全話の評価 ★★★☆  公式のあらすじ

「カルヴァリオの秘石」の発動で人類を滅そうとする曳士と、それをくいとめ妹・光流を取り戻そうとする戎との攻防、という話。

戎と明日香が(何故か裸で)キスしようとする「あのED」を毎度毎度見せられていたおかげか、
「どんなにクサいラストでも許す」というか、いかに二人のハッピーエンドにもっていくか、
期待させる流れだったと思うのですが、肩すかしのようなラストでした。
映像的にも、戎と曳士の戦いを光の線で表現したり、エピローグを止め絵で示したEDなど、
工夫というより枚数的に苦しいという印象の方が先にくる作りでした。
「きっと戎は帰ってくる」と信じる明日香と光流とのラストシーンも、EDの後にもってきた方がしっくりした形で終われたように思います。

人間と能力者の対立と共存の物語、対立構図の描写は絶妙

最後の一話としては今ひとつでしたが、シリーズ全体を見ると良くまとまっていました。
本作は能力者が乱舞する映像による印象から単なるヒーローもの(ぶっちゃけた話「スクライド」の二番煎じ)かと思いきや、
実は人間と能力者の対立・共存など、キャラクターの内面に比重を置いた精神的な部分での物語だったわけですが、
ここのところの描写は終始絶妙だったと思います。
またアシュラム、教会、ゲリラそれぞれの陣営の主張や行動、対立構図などをしっかり描けてましたし、
それぞれの立場を背負って数多く登場するキャラクターもまんべんなく動かせていました。

世界観をしっかり描いた第5〜9話

シリーズの構成でひとつ注目したいのは第5〜9話の扱い。
ここでは勇基のところに居候する戎のその後しばらくの能力を生かした生活ぶりを、
ユーモアたっぷりなコミカル調で受け手を楽しませつつ描いています。
この間のエピソード、一見シリーズ上無駄な番外編的なものに見えてしまうのですが、
実は(普通の)人間と能力者の二つの存在、それをとりまく組織間の対立構図という世界観を単身アシュラムを飛び出した戎が理解していく形になっていて、
その後の展開を違和感なく自然に、かつ戎の行動を一本筋の通ったものとして受け入れさせる要因として機能していました。

話全体のボリュームを考えるとあと1クール欲しかった

ただその分、当初の戎のアシュラム時代の話が実質3話分でしかなかったのが痛いです。
最終回を迎えた今だからこそ、全体を見渡してバランスはとれていると言えるのですが、
シリーズ開始当初はハッキリ言って駆け足な感が否めず、この時点で進行についていく気持ちが萎んでしまうのは作品として大きく損をしていると思いました。
話全体のボリュームを考えるとやはり26話(2クール)では少なく、あと1クール欲しかったところ。
戎のアシュラム時代や、クライマックスの戦いなども膨らみがもたせられたでしょうし、
まんべんなく動いてはいたものの話数が足りなくて仕方なく削った感のある、戎・神龍・勇基以外のキャラ描写(特にマキシム・マリア)の深みを出すことや、
戎と神露、戎と明日香のロマンスなどが十分可能だったと考えると勿体なかったと思います。

本作独特の世界観を表現する作り手の気概の高さ

とはいえそのように思えるのは物語全体を上手くまとめていたからこそであり、
26話という話数、ストーリー、絶対必要なキャラクター描写など、
限られた条件下で本作独特の世界観を表現することができていて、作り手の気概の高さも感じられました。
シリーズを最初からもう一度じっくり見てみよう。そんな風に思わせる作品でした。

脚本:千葉克彦 絵コンテ:横田耕三 演出:下田正美 作画監督:浜津武広

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更新:2003-10-25 作成:2003-10-25 文責:ごま(goma)
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