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ごまの「アニメ批評日記」

『D・N・ANGEL』

2003.05.28 第1話「復活のダーク」

「D・N・ANGEL」第1話

14歳の誕生日を迎えた大助が伝説の怪盗ダークとして覚醒する、という話。

シリーズ全体のストーリーへの伏線ともいうべき冒頭のシーン(プロローグ)は
背景をも含む細かい描き込みによる美しさとスピード感で大いに期待したのですが、
本編にはいると別作品のような展開で驚かされました。

「怪盗+恋愛」の要素で即座に思い浮かんだのは「怪盗セイントテール」ですが、
そちらが二人のキャラによる三角関係なのに対し、
本作では姉妹を含む三人のキャラによる四角関係に発展しそうなのが相違点。
加えて白天使と黒天使の対立(?)という設定がどう絡んでくるのかが一応の注目点。

今回はそれぞれのカットにおける独特の構図の取り方が好印象。
上から見下ろしたり下から見上げたりと、目まぐるしい転換で、
ベタベタでお約束のラブコメ展開を飽きさせずに見せていました。
梨紗が車を降りて歩き出すところが異常に動いているのも印象的。

ケーブルカーのシーンでのCGはご愛敬といったところですが、
その道中に梨紅の自転車通学姿が横切るところは映像的に面白かったです。
ただ地形的な構図としては現実的にどうかという疑問はありますが。

大助が手紙を上手く渡せない原因となるホーム改装工事辺りの描写は、
正直手抜きっぽい印象でした。
あのシーンでは大助の乗車位置と改装工事の位置を車両前方において、
梨紗の前を通り過ぎていく方が演出意図といてはより面白くなったと思います。

怪盗ダーク絡みの展開では、
第1話ということで割ける時間も少なかったせいか、
怪盗モノらしい手の込んだ仕事ぶりがなかったのは残念。

配役は実力派から中堅・ベテランで揃えた陣容で、
主人公以外は安心して見ていられます。

肝心の主人公は「千と千尋」のハク役で知られる入野自由。
「千と千尋」ではキリッとした立ち居振る舞いでそれほどでもありませんでしたが、
本作の優柔不断な性格だとアラが目立ちます。
ただし台詞棒読みといったような単に演技が下手なのではなく、
キャラクターの感情表現を受け手に伝えるだけの感情の込め方ができているのが救い。
見ていてそれほど嫌味は感じず、むしろベテランを相手に頑張ってるとも言えます。
今後伸びていって欲しい役者です。

脚本:荒川稔久 絵コンテ・演出:羽原信義 作画監督:山岡信一

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2003.06.20 第5話「ダブルクッキング」

大助と梨紗がクラスで二人、調理実習の居残り授業を受けることになるが、変装した梨紅が身代わりで来る、という話。
ダークが全く登場せず、大助は学校についてきたウィズに翻弄されるという番外編的展開。
そっくりな双子が互いの役を演じる「入れ替わり」の嘘臭さ(でも漫画やアニメにはありがち)や、
家庭科教師のキャラ設定が無理矢理なところなど、一見すると乱暴な作りなのですが、
その内容には作品の流れに沿った人物関係やキャラクターの描写が盛り込まれていて、
1話完結のコメディとして楽しめる上に、物語の大筋にも絡んでいるという秀逸な話でした。

今回の話のキーポイントは、
大助(ウィズの変装)が(梨紗に変装した)梨紅に「ダイスキ」というシーン。
気になる存在である大助から、
いつもと違う服装(フリルのエプロン)を「大好き」と言われた(と思い込んだ)ことで、
いつもは着ないかわいいフリル系の服を着てみようと思ってみる、
けなげな乙女心を見せる梨紅というのが一番の見どころです。

居残り授業が家庭科なのは、梨紅に普段着ない系統の服を着せるため。
家庭科教師が男性だったのは、
「エプロン似合ってるぞ」という男性視点の台詞を自然に言わせるためと、
そこから同じ台詞を大助に言わせるため。
一見乱暴にみえた本編の展開は、このキーポイントにたどり着かせる為でした。

家庭科なのに熱血教師という変なキャラ設定だったのは、
加世田先生を厳しい先生にすることで、
実習前の「エプロン忘れたら加世田先生に何言われるか」という生徒の会話を自然に入れ、
肝心の「エプロン似合ってるぞ」という台詞が唐突に感じられないようにするとうい仕掛けです。

そして、キャラ設定を作った上は「キャベツを刻むなビートを刻め」などと、
台詞や立ち居振る舞いを面白おかしく工夫し、
コメディとしても楽しめる形に仕上げていたのは好印象でした。

ラストシーンで、
「私たち(双子だけど)全然似てない」「でも、誰も気づかなかったね」
と、お互いを演じて一日が終わった後の梨紗と梨紅がこぼすところは、
オチとしても秀逸でしたが、
一人の人格として見て欲しいと思う双子ならではのリアルな感情描写で良かったです。

好きな梨紗と二人で居残りを命じられた大助による、
ダークの出現を心配して「うれしいけど困っているところ」や、
柄にもなく部屋にお茶を運んできた梨紗の態度に困惑する梨紅など、
細かいキャラクターの描写による映像も見どころとなっていました。

今回はカットの切り替えも印象的でした。
「学校が火事になれば良かったんだわ(梨紗)」→「家庭科室から漏れる煙」
「大助に変装するウィズ」→「梨紅にかつらを被せる梨紗」
など、コメディ風にテンポよく見せていました。

ひとつ残念なのは、居残りが翌日になっているのが不自然なこと。
梨紗と梨紅が入れ替わりの準備をさせるためという「作り手の都合」なのですが、
今日居残り→先生に急用ができたので明日に変更
という形にすれば簡単に不自然さが回避できたと思います。

脚本:中 弘子 絵コンテ:開本菜織 演出:広嶋秀樹 作画監督:おおのつとむ

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2003.07.10 第9話「ちいさな恋」★★★★★

町のペットショップで見かけたロップイヤーラビットにウィズが一目惚れし、何度も会いに行こうとする、という話。(→公式のあらすじ

この作品では、美術品をめぐって怪盗ダークが活躍する話と大助の恋の行方という二つの話が軸になっていますが、
美少女変身アニメ等における玩具登場の為の必殺技や変身シーンのバンクというしばりがなく、
またそういうバンクシーンに頼らない、即ちダークの登場にもこだわらない作り手の姿勢が、
ダークがほとんど登場しない大助の恋を中心とした話という形で大きく生かされています。

今回はウィズのうさぎへの恋に絡めて、大助と梨紅二人の様子をたっぷり描くという展開。
梨紅に対する大助の思いが、好きな梨紗の姉あるいは単なる友達というものから、
恋愛対象に向かって変化する(かもしれない)きっかけとなる話に仕上がっていました。

正統派ラブコメディの真髄

これまでの話では、梨紅の大助に対する「気になる存在」という気持ちを描いていて、
今回は大助の方に、梨紅に対するそういう気持ちが芽生えます。
恋愛のプロセスにおける細かい描写で、まず好印象です。

そしてこれを大助・梨紗・梨紅という構図から見ると、
大助と梨紅、現時点における互いの描写はまだまだどっちつかずで、
3人の恋愛の行方を知りたい見極めたいという受け手の欲求をおおいに煽っています。
受け手は「おそらく大助と梨紅が結ばれるのだろう」と予測しつつも、
今回のようなどっちつかずの二人の関係をやきもきしながら楽しめるという仕掛け。
またこれを「大助と梨紅が結ばれて欲しい」という、おそらく作り手の演出意図による欲求で見ると、
大助に対する梨紅の好感度が上下する様をハラハラしながら楽しめるようになっています。
これぞラブコメディの真髄ではないでしょうか。

さり気ない梨紅の恋愛感情の描写

今回の話を見ると、梨紅の恋愛感情の描写が少々淡泊にも見えますが、
実はさり気なく、そしてしっかりと描かれています。
教室においてペットの話題の際「日溜まりで人参食べてるのがピッタリ」と、
大助に対して一歩踏み込んだ台詞を言っていますし、
大助のスケッチ中に現れた「やっぱり上手いね丹羽くん(「やっぱり」に注目)」や、
代わりのうさぎで妥協しようとする大助に対しての「丹羽くんだって梨紗じゃないと嫌でしょ」
という台詞には、梨紅が常に大助のことを見ているということがにじみ出ています。
これらは梨紅の感情描写としては非常に気づきにくいですが、
気づいてみると味わいのある描写ですし、
これまでの積み重ねで補完できるようになっているので気づかなくても問題ないと思います。

ダークが「(ウィズ捜索などしなくても)俺が呼べばすぐ飛んでくる」
とあざ笑うところは話が設定の説明にもなっているのと同時に、
オチがついて話がきれいにまとまったと思います。
ただ「全く名コンビだな、大助と梨紅は」は少々直接的で「見ていて飽きない」程度にして欲しかったですが
「梨紅に惚れたな」という直接的過ぎかつ陳腐とまではいかなかったので、
可もなく不可もなくというところでしょうか。

可愛らしいウィズの動きと独特の効果音

映像では、今回一方の主役ということでウィズの動きが特筆もの。
大助のスケッチ中に現れる梨紅に気づいて鞄に隠れるところや、
ペットショップ前で梨紅に見られて大助に鞄に押し込まれるところ
(特にうさぎ見たさに最後まで抵抗を試みる動きに注目)は、
ウィズの可愛らしさが良く出ていて面白かったです。
冒頭の買い物に出かける前のシーンでウィズが買い物かごに入るところでは、
途中から枚数を省略して一枚絵をスライドさせる動きになっていますが、
ウィズがかごに飛び込んでる感じは出ていて可愛らしかったです。

あと効果音やBGMが今回ノリにのっている感じ。
大助がペットショップから逃げるところは少々やりすぎな感もありましたが、
朝市で大量の野菜を持たされたときの大助のいかにも重たそうな足音や、
学校での女の子達と大助の会話中の「それはオズ」のツッコミに入る「カーッ」という効果音が面白かったです。
BGMも雰囲気を演出しつつ出しゃばらず、と良い感じにまとめられていました。

今回の話は、これぞ正に正統派ラブコメディ。
冒頭でも述べたとおりダークの登場にこだわらない本作の作りでは、
「怪盗編」と「恋愛編」という感じで各話によってストーリーの骨格が大きく変わっています。
そのなかにあってキャラクターの気持ちを丁寧に描いている「恋愛編」の今話は、
これひとつだけなら「五つ星」ものの出来映えでした。
「怪盗編」だけしか見てない、という人には是非見て欲しい一話です。

脚本:翁妙子 絵コンテ:坂田純一 演出:大槻敦史 作画監督:平山英嗣

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_2003.07.16 第10話「ある音楽家の肖像」

全話の評価★★★★

名音楽家の遺品のヴァイオリンを大樹が約束として受け取った葬儀の日、大助の心がバイオリンに取り込まれ過去に飛ばされる、という話。(→公式のあらすじ

大助の心が取り込まれたことで大助の肉体に出現したダークを無意識に感じ、
同時に生じる胸の鼓動を大助によるものと錯覚した梨沙の描写は、
シリーズストーリー上の押さえておきたいポイントとしてまずまずの出来。

「過去の世界で日付が変わっちまったら、大助はもう戻って来られねぇ」
話そのものの見所は、時計台の鐘による迫る大助帰還のタイムリミットのカウントダウン描写。
刻まれる鐘の音とカットの切り替えのタイミングが決まっていて、緊迫感が出ていました。
ただ現実的には最初の鐘が日付変更の瞬間であり、不自然な表現だったのが実に残念。
細かいところでは「丹羽くんと一緒に来て良かった」という梨沙の台詞の意味を大助が取り違えるという描写や、
大樹がバイオリンをのぞき込むときのバイオリンの方から見上げた構図などが面白いです。

しかし全体の印象は今ひとつ。
お祈りをやり直そうとする梨沙の行動につなげる為の、葬儀での非常識な振る舞い描写が過剰でしたし、
過去から現実に戻った大助が見た「魔性のヴァイオリンを手に幸福なバンデンバーグ」というカットが唐突でした。
「大助が魔性のヴァイオリンを止めようとした行動」
或いは「"ヴァイオリンの事ばかり考えていた人でした"という妹の否定的な述懐」
を受けてのものか、ハッキリしなかったのが原因だと思います。

ヴァイオリン演奏シーンも、表現に演奏の善し悪しの違いがありませんでしたし、
映像自体もアニメとしてのありがたみが感じられませんでした。
他にも、過去のシーンの最後に降る雨は必然性がなかったり、
ヴァイオリンの大きさがカットによってまちまちだったりと、随所にちぐはぐな印象。

脚本:村山桂 絵コンテ・演出:二瓶勇一 作画監督:堀たえこ

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*2003.09.07 第14話「新たなるライバル」

プール深すぎ

帰国子女の女の子、桧尾みおがクラスに転入し、大助に一目惚れする、という話。(→公式のあらすじ

露出度大、ニセ外国人口調、大助に猛アタック、という桧尾みおのキャラクターは、
美少女アニメに麻痺している以外の人にとっては嫌味のきついものでしかありませんが、
翻弄される大助や梨紅らレギュラーキャラのリアクションの方を強調したり、
映像やBGM、効果音をそれっぽくすることで、
コメディとして見ていられるレベルに上手くまとめられていました。

コメディシーンでは、
桧尾みおが給食を喉に詰まらせるところ、プール直前の梨紅とみおの洗顔勝負、
大助が保健室から飛び出し迫るみおから逃走するところ等、
今回もノリノリでありつつも出しゃばらないBGM・効果音との組み合わせが絶妙で楽しませます。

さて今回のクライマックスは、ダークと梨沙のキスシーンと、それによって深く落ち込む大助の描写。
冒頭のダークがトワにキスするところから、日渡の人工呼吸、「(みおに)キスの一つもしてやれ」というダークの台詞、
とキスシーンをさり気なく意識させる伏線をつなげていたのが面白いです。
自室で落ち込む大助のシーンでは、梨沙の肖像画に幕をかけるという象徴的行動が描かれますが、
この時の大助の失恋直後の気持ちを表現する画面の揺らし方は、
静けさを強調する虫の声、青で統一された色調と合わせて屈指の好演出。
この演出は記憶に留めたいところです。

その他、冒頭の日渡と大助の描写で現状をコンパクトに説明していた点や、
プール授業で大助とペアを組もうとするみおに対し
「相手の気持ちを無視して強引にやりすぎじゃない」という梨紅の台詞が、
彼女自身の性格描写になっていることも良かったです。

桧尾みおのキャラ設定以外はなかなか楽しめる内容でしたが気になった点が三点。
まずプール授業で梨紅に対する大助の「原田さんのお姉さん…だよね」という台詞が極めて不自然だったこと。
過去の話で描かれた二人の関係との整合性がとれていません。
またみおとの取り合いとなったプール授業で「原田さんと組む」と言われて赤面、
直後「最初に決められたペアを守るべき」と言われて素に戻る梨紅の気持ちを言葉にしてしまったのも安直な演出でした。
あと、桧尾みおの名前が聞き取りにくかったです。
転入時に黒板に名前を書くカットを入れておけば簡単に回避できたと思います。

脚本:荒川稔久 絵コンテ・演出:榎本明広 作画監督:石川健朝

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*2003.09.17 第15話「バーベキューパニック」

夏休み中の大助の家に、別荘に行く途中の梨沙と梨紅が車の故障で偶然立ち寄る、という話。(→公式のあらすじ

ダークとキスしてご機嫌の梨沙、目の当たりにして必然的に失恋し気持ちの整理がついていない大助、
そういう事情を全く知らぬがゆえ、何もできないでいる梨紅という三者三様の気持ちを、
大助の家での桧尾を交えた賑やかな集まりの中に散りばめてあるのが見どころ。

賑やかな中、平静を装いつつも心中おだやかでないところが見え隠れする大助、
こういった状況下でのリアルな人間描写がなされていました。
この点では桧尾の使い方は良かったと思います。
ただ大助家では少々キャラが煩雑過ぎて、心情描写で受け手の印象を邪魔しているようにも見えました。
トワの出番は極力無くし、桧尾の出ている時間も減らしてすっきりさせた方が、
クライマックスの夕日のシーン等、大助や梨紅の心情を見てよりしんみりできたと思います。

冒頭、大助との思い出の場所(ペットショップ等)を巡ってみる梨紅や、
失恋の痛手を紛らわすために働きづめする大助という導入部は、
本編で描かれる二人の心情に、より注意を促す演出で好印象。
ただ「何かから気を紛らわすような」というトワの台詞は説明的で安直な演出。
この時の二人の会話に梨沙の肖像画をワンカット入れる、という方法で十分描けたと思います。

コメディ部分では、テンポの取り方が非常に良かったです。
買い物帰りで聞こえたタイムサービスの声に引き返すところ、
荷物を持って欲しいと言われた笑子が逃げるところ、
寝起きの大助が「なんで起こしてくれなかったの?」と言った後、梨沙・梨紅の存在に気づくところ等、
一瞬間を置いてから次の行動に移る描写が面白かったです。

受難のウィズ

また笑いを指向したシーンで、リアリティに拘らず最良の描写を選択しているところも注目。
ウィズが飲んだ不味い青汁を吐き出すシーンは、
漫画的表現なら「吹き出す」ところをコップにもどすことで面白くしてます。
一方、大助と父の会話を祖父大樹が眺めるシーンは、
アニメ的表現でもあるリアル指向なら目玉を左右に動かすところですが、
こちらは片目開きを左右交互に繰り返す表現になっていて面白いです。

あと、大助と父・小助が朝起きだしてくるとき、腹をかくという親子そっくりな癖をつけているのも、
気づくことができればクスッと笑える、ちょっとした味つけです。

ひとつ気になったのは、桧尾にベッドの中を覗かれようとしているところへ、
テラスから梨紅が注意を引いて大助を救出するところ。
梨紅の叫び声が聞き取りにくく、彼女の行動が最初よく分かりませんでした。

脚本:中弘子 絵コンテ・演出:大槻敦史 作画監督:立田眞一

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*2003.09.30 第18話「星降る夜の二人」

捻挫した足で走りまくる梨紅

臨海学校で南の島にやってきていた大助と梨紅の仲が急接近し、遂に結ばれる、という話。(→公式のあらすじ
第17話と前後編の作りですが、まるで「この話数で二人が結ばれなければならない」とでも言わんばかりの性急さを感じました。
第14話では梨沙に失恋したショックが、第15話では梨沙への気持ちの整理をつけようとしているところが丁寧に描かれていました。
とすれば次にくるべきは、梨紅に気持ちが向くという大助の心情の変化や、
お互いに好意をもっていながら告白には至らない微妙な関係の様子を
第14話・第15話のラストシーン同様に丁寧に描くということではなかったでしょうか。
本編は大助の心情の変化と結ばれるまでの流れを、前後編という一くくりにしたことが逆効果で、
見ようによっては大助が優柔不断、或いは単なる惚れっぽい人間という風に受け取れます。

肝心の内容そのものも、崖から転落した梨紅を大助が背負って昇ったり(超人です)、
雷に驚いて大助に抱きついてしまったり、転んで偶然抱き合ってるところを梨紅に見られたり、
更には告白したその夜にキスしてたりと(梨沙はともかくこの二人の性格ではありえない展開。もっと初々しいはず)、
三流ラブコメ的陳腐で嘘臭い展開の数々が残念でなりませんでした。

クライマックスの「私のことなんかほっといてよ」の梨紅の台詞の後の間の取り方や、流星をはじめとする夜空の描写など、演出・作画部分はロマンチックな盛り上がりを表現できていて良かったと思います。

脚本:荒川稔久 絵コンテ:西澤晋 演出:林有紀 作画監督:本橋秀之

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更新:2003-10-06 作成:2003-06-09 文責:ごま(goma)
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