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ごまの「アニメ批評日記」

『ストラトスフォー』

キッズステーションで2003年1月9日(木)夜11時半より放送のテレビアニメです。

更新:2003-06-09

2003.06.06 第13話「FINAL APPROACH」

第七オービタルステーションにたどりついた美風達が香鈴を救出。直後、巨大隕石の迎撃任務につく、という話。

その1

静羽の資格マニアなキャラ設定は、
今回やむを得ず巨大隕石迎撃任務につく際のやりとりにおける
「資格とってないけど本当にいいのかなぁ?(静羽)」や
「まだ試験通ってないからこのエンブレムはおあずけね(静羽)」「ま、仮免ってことで(美風)」
という台詞を言わせるためのものでした。

また香鈴の計算能力の高さも、
今回における、アクシデントであわや迎撃失敗というところで、
迎撃任務続行を決断、その決め手となる「いけるよ」「届くよ」という台詞のため。
どちらもシリーズ中にきっちり伏線がはられており、
作り込みの細かさで受け手を唸らせる演出でした。

本編の方は、基地到着→感染者に応戦→香鈴の救出、そして隕石迎撃任務で大きな山場を迎えるという、
まるで映画を見ているかのような息もつかせぬ展開で楽しませました。
ここで注目したいのは、第12話同様、
「人類(地球)の危機」を煽るという、危機感による話の盛り上げ方をしていないところ。

今回あったのは下地島基地に軟禁状態の如月教官の説明と御厨ランの短い一言だけで、
司令代行を務めた久保千鶴をはじめ、第七オービタルステーションでは口にされていません。

とはいえ巨大隕石襲来による危機そのものは事実としてしっかり描いており、
香鈴の救出劇、美風が香鈴に手をさしのべて友情を確かめ合う一幕などと合わせると、
隕石迎撃任務の大きな山場を迎えた受け手は、
マクロ視点による「人類の危機」という状況を理解しつつも、
「人類の危機が回避できるかどうか」という緊張感ではなく、
純粋に主人公の美風達の動向に感情移入するという不思議な感覚を楽しむことができます。

即ち本作品は、
コメットブラスターを主人公の美風達の目標として見せておきながら、
サクセスストーリーという安易な物語構築とは違う別の方法によってそこに到達させる事を目的しており、
その方法こそが今回の緊急事態というわけでした。

主人公の美風達をコメットブラスターの任務につかせ、
かつ彼女達を危機的状況に追い込むための道具として人類を危機に陥れるという逆転の発想をした上で、
そこへの疑問の余地に気づく暇を与えない細かい作り込みを行い、
最終的には美風達の友情と青春という等身大の人間描写に帰結させたところが凄いと思いました。

その2

個々のシーンで一番印象的だったのは、冒頭の香鈴のモノローグ。
父の死の以後、何も感じなくなった香鈴が、
一緒にいたい人が出来たことで再び現れた恐怖感を吐露するものだったのですが、
香鈴の視点による、のっぺらぼうな人の姿を回想として続けておいてから、
美風を遠目に見る香鈴の姿を描くことで、
美風が香鈴の大事な人であることを、直接的な台詞を一切入れずに説明していて上手いと思いました。

これ以上接近すると爆発に巻き込まれるという状況における美風の
「そう…(迎撃の為にこのまま接近して)いい?」に対する香鈴の「ちょっとやだ」という台詞。
「絶対嫌」という全否定ではなく、もちろん肯定でもない。
そこには、人類の危機を救うという大義ではなく自分達の為の行動の結果として人類が救われる
という等身大の人間描写が集約されていて、
なんでもないようでいて実は本作屈指の名台詞ではないかと思いました。

ちょっとしたところでは、輸送用の機体でステーションに向かう途中のシーン。
美風が機内の狭苦しさへの不満を口にするところに、ブースターの切り離しのカットが続きます。
絵の構図・動き・音・タイミング・話の流れを絶妙に組み合わせて、間抜けな雰囲気を演出していました。
作り手の笑いのセンスの高さを感じさせます。

今回残念だったところは、美風達が美春司令と対峙するシーン。
はじかれた自分の指輪が視界に入り美春司令が放心状態になったことで、
美風たちが感染させられそうになるピンチを脱出するという演出だったのですが、
この演出が成立するための説得力がありませんでした。

美春司令=佐古主任の妻と一目で分かるところまではいいとしても、
指輪が彼女の物であること、また彼女の心理に影響を与える物であることということを、
美風が瞬時に理解するというのは無理がありました。
指輪に名前が書いてあるとか、指輪の形をちょっと変わったものにするとかして、
美春司令の指輪であることを瞬時に分かる説得力をもたせた上で、
美春司令には佐古主任に未練がないことを直接的な言葉で美風に語る
という一幕を入れれば良かったと思います。

あと、細かいところで気になった事を3つ。
オービタルステーションに到着した際に宇宙遊泳でおどける美風の描写が羽目を外しすぎに見えてしまう事。
岩崎教官の「お前達の空だ」は真面目で誠実なキャラにはあってましたが、蛇足気味だった事。
そして、やっぱりデフォルメは無かった方が良いと感じられた事です。

改めて作品全体を見渡しますと、
各話における個々のシーンでの演出が、伏線というつながりの線で網の目のように張り巡らせてあり、
各話毎に一週間隔てられてしまうのが実にもったいないと思ってしまえるほど、
作品としての完成度の高さを感じさせられました。
全話通しで鑑賞すると5時間25分。7月末に一度やってみたいと思ってます。

最後に訂正。前回(第12話)のコラムで、
種子島基地にたどりつくための「美風&静羽の『逃避行』」の為に作られたのではありませんでした。
第11話に続き、またしても「してやられた」という心地よい敗北感を与えられました。

脚本:高山カツヒコ 絵コンテ:増井壮一 演出:山田弘和 作画監督:山内則康・桜井正明

2003.05.24 第12話「ENGAGE! 」

その1

第七オービタルステーションに連れ去られた香鈴を救うため、美風達が種子島基地に向かう、という話。

今回の本筋は上記の通り種子島基地を目指す美風達の「逃避行」。
幾多の障害を乗りこえる姿に時間を割きさえすれば簡単に一本作れるところを良しとせず、
まるで美風達のストーリーラインの方が本筋ではないと錯覚させてしまうほどに
下地島基地やオービタルステーションの方の展開を作り込むことによって、
非常に中身の濃い一話に仕上がっていました。

一番印象的だったのは聴聞官の描写。
結局のところ美風や下地島基地の味方的存在だった彼でしたが、
それが判明するまでの演出が絶妙。
下地島基地を制圧しようとする武装兵たちの後ろから現れたところでは、
あたかも敵の一員かのように思わせる立ち居振る舞い。
美風達の行方を探ろうとする査問官の後ろで、
通信モニターに残っている美風との更新記録にいち早く気づいて
受け手の不安感を大いに煽る効果を発揮しています。

この時、モニター上に美風との更新時の音量波形を残すことで、
しきりに後ろを振り返る通信士の仕草と合わせて
瞬時に状況が把握できるようにしているのも上手い工夫です。

査問官に気づかれないように交信記録を削除したところで、
受け手は作中の通信士同様に、聴聞官が前回同様味方的存在であることに気づくわけですが、
そこに「あなた(聴聞官)はあくまでオブザーバー」という査問官の台詞をたたみかけて、
受け手は「さもありなん」と頷かせられると同時に更なる安心を得るという仕掛け。
受け手を不安→安心と誘導する見事なエンターテインメントでした。

ここではもう一つ、
美風と静羽が、自分たちの味方をしてくれた聴聞官に対する不信感を拭わないという、
前回のラストシーンとのつながりにも注目です。
件のシーンを見たときは、単なる美風たちの若さの描写かと思いきや、
ここで聴聞官の立ち位置を今ひとつはっきりさせなかった事が、
今回における受け手の不安への誘導に役立っていました。

その2

全話の評価★★★★★

次に印象的だったのはオービタルステーションの描写。
非感染者5名たちの「船を奪取しての脱出は無理。通信で救援を呼ぼう」という会話から、
実際その通りに展開していくにも関わらず、
会話の直後に一人の「おなかすいた」の台詞で他の者が感染を疑うという
インパクトのあるシーンをつなげることでカムフラージュ。
「ハンガーに向かっている模様」とのステーション内放送が流れる強行突破シーンを、
後から美春司令や感染者たちによる「脱出に見せかけて真のねらいは通信室の確保か」
と同様の驚きを受け手にも与える演出効果になっていました。

ただし一連のシーンでは、
下地島基地の描写と合わせて時間の流れが逆行していて違和感を感じるところがあり、
この演出意図の是非は微妙なところだと思いました。

ところで下地島基地が受信していた
第七オービタルステーションの非感染者による同ステーションの危機を伝える音声通信では、
「このままでは迫り来る彗星に対して地球は全くの無防備」という
次なる重要な展開への示唆をサラッと挿入しているところが絶妙。

その台詞には「バーン!」という重要性を示す効果音、
「地球が危ない」という説明的な台詞などはなく、
大義ではなく自らの救援を求める非感染者たちの切実な訴えや、
「美春は無事なのか!」という佐古主任の私的な不安の叫びなどの方を強調。
人間的にリアルな表現であるとともに、
「地球は全くの無防備」という部分を間接的に表現している効果となったいました。

マニアたち4人の尋問シーンもちょっとした見どころ。
本気とも冗談ともつかぬ態度でのらりくらりと尋問を交わしていくマニアたちは、
いよいよ自分達の目的(美風達の行方)について白状させられそうになりますが、
この時、他の3人のマニアの「やばい」という表情(+効果音)で緊張感を盛り上げておいて、
思わず「香鈴ちゃん」と言ったマニアに他の3人が最初の態度で引っかき回してうやむやに。
「いかなる状況にも対応できる、実は凄い奴等」という安直な方向にもっていかず、
あくまで一般人のマニアというキャラクターのリアリティを貫いた上での尋問回避という展開が良かったです。
このシーンでは、それまで無かった尋問官の間抜け面な表情を最後に写すことで、
尋問の失敗を表現しているのも面白いです。
この一連のシーンでは「口数が減った」という尋問官の台詞を入れるタイミングが早かったことが小ミス。

その3

唯一気になったのは、出撃が一段落したときの如月副司令の描写。
戦闘服姿のままで、美風たちの通信に食い入るところは、
副司令という立場ゆえに張りつめた状態を維持しているという説得力がありますし、
疲れ切っている彩雲との対比で経験の差を示しているという描写にもなっていて良かったのですが、
彩雲が美風たちとの同行を嘆願してしまうところで素にもどってしまったのがいけませんでした。

如月が疲れ知らずのスーパーマンというならば、そのような描写を、
でなければ疲れをおしてオーバーワーク気味であるという描写を入れるべきでした。
疲れからため息をつきつつも次の瞬間集中力を取り戻す如月、
というワンカットを入れるだけで印象は大分変わったと思います。

岩崎&藤谷の方は、翼&空の疲れ具合の対比と佐古主任とのやりとりで
そのあたりの演出ができていたので良かったです。

その他、本編の見どころとしては、
美風&静羽の「逃避行」における、
飛行機→トラック→クルーザーの運転というマルチぶりを見せる静羽。
資格マニアという前フリがここでも生かされています。
というより今回の出来から考えて、今回の展開からキャラを作ったような気がしますが、
いずれにしても楽しませる演出でした。
ただ2カットあったデフォルメは無くても、というより無かった方が良かったです。

感情を捨てて理性に生きる」と説くも、
香鈴に目ざとく指輪を見られた美春司令が指輪を放り投げるところは、
それを反射的な行動とすることで、消し去ることのできない佐古主任への思い、
との整合性を保っていて上手いと思いました。

細かいところでは、感染者と非感染者の追撃戦で、
非感染者がオービタルステーション内の娯楽施設を使って防戦するところが面白かったです。

脚本:高山カツヒコ 絵コンテ:なかたゆきひろ 演出:高山功 作画監督:藤沢俊幸

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2003.05.17 第11話「TARGET MERGE 」

危機管理機構に連れ去られてしまった香鈴を取り戻すために、美風と静羽が本土まで追いかけていく、という話。

今回ちょっと注目したのは、車中における美風と査問官との会話のなかで出てきた
「たとえ仕組まれた出会いだったとしても、香鈴は私たちの大切な友達」という美風の台詞です。
本シリーズは訓練生の美風達がメテオスィーパーたる宇宙を目指して進んでいくという展開ながらも、
サクセスストーリーというドラマチック指向ではなく、
日常や友情に重きをおきつつリアルに描いているところが秀逸なのですが、
このシーンがひとつの象徴だったように思いました。

このシーンでは、香鈴を侮辱されたと感じた美風の怒りを強調するために台詞の前にタメを作ったり、
友情を強調するために台詞を絶叫に近いものにする、
といった演出をいきおい考えてしまうところなのですが、
本編では会話の流れのなかの台詞としてごく自然に感じさせていました。
これによって台詞自体の陳腐さを消すのと同時に、
美風達の若くて青臭い人間性をも表現する良い演出だったと思います。

また、この台詞がある会話では美風達が機構側に追いかけられている、
と錯覚させる「偽のカーチェイス」が描かれるのですが、これが実によくできています。
「偽のカーチェイス」の真相そのものは古典的な演出手法だったのですが、
査問官と美風の会話に注目させて真相を気づきにくくさせています。
一方このシーンを美風と査問官との会話という視点で見ると、
「偽のカーチェイス」とその為のBGMが、
車中にただ座っている二人の会話という条件的な映像面での退屈さを緩和するという、
互いに補完しあう演出効果を発揮しています。

おまけにこの「偽のカーチェイス」、美風と査問官が一緒に映っているカットをよく見ると、
その車がマニア達が乗っていたワゴン車であることが分かるようになっていて、
受け手に「してやられた」という心地よい敗北感を与えるにくい演出でした。
あと、美風との会話のなかで査問官が煙草の空箱を握りつぶしてますが、
飛来する隕石群(ウィルス)に対する怒りの間接的でかつ自然な表現で好印象。

静羽の代理として如月副司令が出撃するシーンでは、
脳天気にふるまう藤谷と心配そうな岩崎、という如月に対する態度の描き分けが面白いです。
出撃前の直接の会話では岩崎と如月がフランクに呼び合わすことで、
全く描かれることのなかった長年苦楽を共にしてきた二人の関係を上手く暗喩させていました。
ただ何と呼び合っていたのか聞き取りにくかったのが残念。
あと如月副司令出撃という非常手段を受け手に納得させるリアリティが不足していたように思いました。 アリス(テイトク)主役の第6話の冒頭あたりに、
操縦資格継続のための規定の飛行訓練シーンを入れておけば説得力がもたせられたのではないでしょうか。

脚本:もりたけし 絵コンテ:大久保富彦 演出:佐藤昌文 作画監督:飯飼一幸

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2003.05.10 第10話「MISSION APORT 」

美風たちがコメットブラスター試験に向けて勉強の中、突如全オービタルステーションからの通信が途絶える、という話。
本作では、個々のシーンやカットでの受け手の印象を綿密に考慮して、演出意図通りに受け手を意識誘導する、
という作り手のモチベーションの高さがひしひしと伝わってきます。
今回においても、オービタルステーションにおいて
着々と感染者(?)を増やしていく美春司令と、それに気づいて立てこもる非感染者(?)
という状況を極限までそぎ取った少ない台詞で演出していたのが見事でした。
パソコンを前にした美風達の会話で査問委員会を喚起させておいて、
下地島基地に実際に表れる委員を、入り込んでくる車で表現させるところもいい感じです。
また、美春司令と香鈴を交互に登場させて、感染という状況説明を互いに補完しているのも上手いです。
ただ、感染によって香鈴に生じた美風への感情がどういうものか
という直接的な説明を省いているのはやりすぎではないかと思いました。
香鈴の方はむしろモノローグを多用して説明的な方向にもっていった方が良かったと思います。

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2003.05.01 第9話「VAPOR TRAIL 」

美風たち下地島基地の一行が温泉に慰安旅行に行く、という話。
遅くても美風の「運転手さんお願いします」の所まででハッキリ分かる番外編的展開。
そしてただの番外編かと思いきや、メインと思われる香鈴の病状(?)の進行をはじめ、
如月と岩崎の会話やマニア達による伝聞という形での機構内の不穏な動き、
隕石についての解析など、作品の重要な要素を上手くおさらいしていました。
それでいて表面上は慰安旅行という和やかなムードを維持していたのは見事でした。
藤谷や佐古たちの留守番姿は殺伐とした雰囲気が良く出ていて面白かったです。

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2003.03.24 第7話「MACH SPEAD 」

佐古整備主任が一人黙々と作業を進めている宇宙機「ストラトスゼロ」を復元して飛ばそうとする、という話。
ロケットの組立はミクロ単位の精度を要求される職人芸と聞いたことがあります。
そこからすると美風のような搭乗員の訓練生がおいそれと手伝えるというのは嘘臭く感じます。
本作の時代背景ではクリアされてるということなのでしょうが、説得力が欲しいところ。
今回は、そんな本編よりもメテオスイーパーの描写に要注目。
宙司令がベティーにキスするところは、
宙司令が宇宙から飛来する宇宙人と同種で、彼女は人間の若さを吸い取ってる、
或いは宇宙から飛来するウィルスに感染していて他人にうつしている、
などとオカルトめいたことを妄想してしまったのですが、どうやら本線のようです。
ベティーが大食いするところに香鈴をフラッシュバックさせるのが上手い描写で、
前の迎撃任務の際に気絶して、その後大食いしていた香鈴も感染(?)しているという説明になっています。
番外編と思われた前回、
提督捜索中の香鈴が猫を怖がってたところも、宇宙人またはウィルスに関連しているのかもしれません。

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03.11 第6話「CHECKING SIX 」

美風について基地にやってきたアリスが如月教官が運んでいたデータチップの1つを持ってどこかに行ってしまう、という話。
アリスが全面に出ていた予告編でも既に分かりますが、
広陳の看板娘・御厨ランがアリスによって起こされて一日が始まる、というのんびりとした導入、
「しばらくは隕石群は地球に来ない」という如月教官の報告からも、
本編を一休みしての番外編的一本だと分かる展開。
如月教官や佐古主任の恋模様や各キャラの性格を網羅しつつアリスの行方を追う、
という番外編らしい楽しい話でした。
番外編ということで「Aika」「ナジカ」で培ったパンチラ大盤振る舞いなのも面白いです(共にスタジオファンタジア)。
ひょっとすると、アリスを主役にすえたのは、パンチラが出せるよう下から見上げる視点を多くする為かもしれません。
主人公の美風もそうなのですが、今回の「こっちに来ませんように」というどこか不真面目な香鈴の描写では、
ステロタイプな一本調子に納まらない、という真に人間的に描こうとしているところが好印象なのですが、
その為にはキャラクターの説明不足な感もあります。

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03.05 第5話「GO AROUND 」

命令無視のミサイル発射による沖縄本島での査問会に美風が呼び出される、という話。
危機管理機構内部の人間による会話によって、
彗星群が単なる彗星ではなくどうやら人為的もしくは有人のものらしいという駄目押しがされ、
彗星撃墜のみだったシリーズ展開に膨らみがでてきました。
同時に下地島サイドの人間を追い落とそうとするかのごとく機構内部の対立めいたものも出てきました。
今後の展開へどのように影響していくのか楽しみです。
飛行中の録音データを繰り返し再生したり、
あからさまに事実をねじ曲げようと誘導尋問する機構内部の人間の描写は見応えがありました。
ただ、下地島の人間の描写がおざなりだったのは気になりました。
前回美風といざこざがあった翼が沖縄行きの機に登場する美風を励ますところや、
美風を罵倒した彩雲&静羽が証人喚問で美風を救うところ等は、
心境の変化をきっちり描いて欲しかったと思います。
岩崎&藤谷が沖縄行き機のパイロットを勤めることで美風が驚くところも、
直前の仕込みが足りないように感じました。

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02.26 第4話「TALLY HO! 」

前回の隕石迎撃によって一番待機となった美風達に、250万tのメアリー彗星の迎撃任務がまわってくる、という話。
待機ローテーションの入れ替わりによる怒りから射撃訓練で勝負を挑む翼と美風の対比が面白いです。
一心不乱に宇宙を目指してきた翼との対比で、
ピンクカード(罰)をもらいながらも、どうにか真面目に宇宙を目指すことになったという美風のこれまでを浮き彫りにしつつ、
この勝負による翼との対立が与えた心理面の影響が、
中止命令を無視した無理な攻撃位置からのミサイル発射という「暴走」に上手くつなげています。
軌道を自ら修正する彗星、美風が撃破の瞬間に見た人為的な造形、それを裏付ける石渡島の調査の様子など、
単なる彗星迎撃ではない今後の展開が見えてきました。
美風たちが主役のため、どうしても予定調和に見えてしまいがちなメテオスイーパーの描写ですが、
今回は迎撃直前からの映像を省略することで緊張感を保っていました。
あと、広陳店主・御厨リンが好調な美風の様子を風になぞらえて表現しているところが印象的。
風という要素を演出の強調として、これまで使ってきたことが効果を発揮していると思いました。

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02.07 第3話「DECISION HEIGHT 」

宇宙への思いを強くしていく美風が、その思いから「実機による迎撃訓練」にて暴走、という話。
早朝自主トレから授業風景と美風の変貌ぶりを見せたあと、
乗り気なさげに行った「通り池」では、ダイビングして水中に飛び込んだ瞬間、
迎撃成功したときを回想しつつ、美風が眼前の水に宇宙を見るという描写があります。
水中を宇宙に見立てて、そこにいる美風が宇宙に行くことを欲するという面白い演出です。

その後の実機訓練では宇宙への思い故の暴走として、
コメットブラスターの実機で地上182300フィートまで上昇する展開。
規則の上限150000フィート、岩崎教官による記録179200フィートという数値を、
迎撃成功パーティにて示すことによって、
ぐんぐん上昇を続ける美風の行動に不自然さを感じにくくさせていました。

上昇後は計算ミス(というより単なる無謀)による燃料切れから、
下地島からグアムに変更。
しかもその行く手には台風が立ちはだかる、
という見せ場が用意されていて楽しみがつきません。

燃料切れゆえ、減速をギリギリまで回避するためのノーフラップ・ランディング、
空母着艦用のアレスティング・フックなど、
マニアックな要素を盛り込んでいるところも面白いです。

前回、風が後押しした美風が滑走路のラインを「踏み越える」という描写。
今回は美風自身が自らの意志で・・という演出だったのですが、
シーンに時間をかけすぎで、くどさを感じてしまったのが気になった点。
ラインに一瞥をくれる程度のサラリとした描写でも十分意図は伝わったと思います。

あと、グアムに向かって台風を突破する決意を示す美風の台詞が、
ギャグっぽく、いかにも唐突だったのも気になりました。
香鈴に「美風、楽しそう」と言わせるためという意図は分かるのですが、
キャラクターの一貫性はもたせて欲しいです。

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01.28 第2話「FOX ONE 」

コメットブラスターが打ち漏らした隕石の処理任務が美風にまわってきた、という話。
コメットブラスターの打ち漏らしと先行したメテオスイーパーのトラブル
によって美風にお鉢がまわってくるという展開は変わり映えのするものではありませんでしたが、
「バードストライク」という専門的なものを感じさせるトラブルとしたことで、
不自然さはさほど感じられず良かったと思います。ただ知らない人には分かりくい描写ではありました。
滑走路にあるラインを踏み越えられずにいる美風の背中を、風が後押しするというのは面白い演出。
ただ美風の台詞でそれを説明してしまったのは、折角のいい雰囲気を台無しにしていました。
あと、コメットブラスターの隕石処理の描写は成功と失敗という違いはあるものの、
第1話とほとんど変わらないもので冗長な印象で退屈しました。
嫌々ながら出撃した隕石処理の成功によって現れた
「もっと上に行きたい(宇宙を見てみたい)」という欲求や、
地上に引き返さずにしばらく上昇を続けるという行動によって、
美風の心境の変化を示したのは秀逸な描写でした。

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01.14 第1話「INTIAL POINT 」

隕石が頻繁に地球に飛来するという時代、その地球衝突を阻止するための迎撃部隊とその訓練生を描く、という物語。
衛星軌道上から迎撃するメインのコメットブラスター、地上から後方支援するメテオスイーパー、そして地上にいる主人公たち訓練生、
というキャラクターの配置は一見「女神候補生」を連想するのですが、
コメットブラスターと訓練生の間に後方支援役の実働部隊を置いたのが秀逸なアイデア。
訓練に明け暮れるだけでなく、場合によっては出動もありうるという展開が不自然にならないような説得力を持たせており、
色々と話が膨らみそうで期待ができます。
今回は、世界観やキャラクターの描写に前編を費やしましたが、
隕石飛来を天気予報風に報道しているのが上手い演出で、
頻繁に飛来していることや、それに対する人類の認識という目に見えない部分が表されていたと思います。

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更新:上記参照 作成:2003-01-20 文責:ごま(goma)
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