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ごまの「アニメ批評日記」

『.hack//黄昏の腕輪伝説』

テレビ愛知で2003年1月8日(水)深夜1時25分より放送のテレビアニメです。

更新:2003-05-25

2003.05.21 第12話「伝説のはじまり」

「放浪AI」モルティにシューゴ達が最後の戦いを挑む、という話。

本筋に全く無関係だった小宮山が事件解決の糸として絡んできて、
そこから常識の裏をかく必殺技(腕輪)の使い方につながる。
前半は会話中心にして、後半の戦いに映像的な動きを集中させる。
このように作り手の工夫は感じさせましたが、
全体的に見ると普通に戦って終わったような、あまりパッとしない印象。
その要因として考えられるのは2つ。

ひとつは、このシリーズ全体の演出が一歩引いた第三者的視点だったので、
ともすれば淡泊過ぎる印象になってしまう危惧が正に現実化してしまい危機感が今ひとつだったこと。
最終回だけは、全キャラに感情移入させるような強い印象をもたせた方が良かったかもしれません。

もうひとつは、ネットの中という現実社会の一コマという表現に乏しかったこと。
第10話では、最後の戦いへの導入部にその表現がなされていることを指摘しましたが、
表面上は空想世界と区別がつかない本作の世界観だけに、
各話において随時「ネット=現実の一部」という世界観の認識を喚起させる演出が必要だったと思います。
あと、ラストシーンのシューゴとレナがモルティに特攻をかけるところの映像がチープだったのも大減点材料。

シリーズ全体としては、ハイレベルな作画や映像的な動きの面白さなどで十分に楽しめました。
そして、なんといっても本作が秀逸だったのは、
「ネットゲームは楽しいバーチャル世界である」という世界観の説明がきっちりなされていたことでした。
本作も広い視点で見ると、現実世界に起こった事件簿といえるわけですが、
ネットゲームの存在意義をきちんと描くことで、
本当は楽しい場所であるはずのネットゲームのなかで起きた事件、
という構図が上手く表現できていたと思います。
「桜の花イベント」「七夕イベント」などの一見本筋との関連性が薄いエピソードが、
このような世界観の構築に大きく貢献していたのも構成の上手さを感じさせます。

脚本:西園悟 演出・絵コンテ:澤井幸次 作画監督:菊池洋子

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2003.05.13 第11話「世界の終わり」

「放浪AI」という存在であるモルティがNPCを使ってシューゴ達を襲う、という話。
前半は倒してもキリがないNPCとシューゴ達の戦い、後半は次第に明かされていく事件の謎という構成。
後半明かされた、事件に関与した子供達の「死に対する興味」というその動機。
単なる愉快犯で済ませられるところへの一工夫という感じで期待させたのですが、
神威による状況説明の中の台詞で終わらせてしまっては興ざめです。
せっかくなら、例えば「なぜ人はネットに、ゲームに夢中になるのか?」
というような哲学的問いかけなどを入れて、もっと話に膨らみをもたせて欲しかったです。
前半のNPCの商人達との戦いは楽しむことができました。
人という有機質な存在をきちんと描きつつ、それを無機質に表現できていて面白かったです。

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2003.05.03 第10話「幻の都」

レナを助けるためにメンバーがシューゴの下に集結し未公開サーバーの町へ行く、という話。

展開の必然として盛り上がりには欠ける内容だったにも関わらず、なかなか楽しめました。
注目したいのは、今まで以上の危険を自覚しつつシューゴを支援することをメンバー各々が決意するシーン。
こういう場面ではいきおい友情という形の自己犠牲的なものをを強調して演出過剰になりがちなのですが、
台詞やモノローグを入れず控えめなBGMでそこを抑え、くどくならないようにしていたのが上手い演出でした。
集結したときの台詞とあわせ、自分が過ごすザ・ワールドの世界を守る、
即ちまずは自分の為という人間の感情として当たり前のことをも表現できていたと思います。

今回はバルムンクを離反したレキの謎の行動についても、その真相が明かされました。
真相そのものはレキなりにザ・ワールドの秩序維持を考えていたという陳腐なものでしたが、
「黄昏事件と今のバルムンクさんはどこが違うんです?」という台詞(これもそれ自体は陳腐ですが)で、
真相を提示したのは面白かったです。

映像的には鳳花の膝枕で寝てるときのミレイユの手の動きが面白いです。
ロングショットだったのが残念。もう少しアップの構図だったら言うことなかったのですが。
本作は毎回、ちょっとした動きで映像的な面白さを見せてくれるのがうれしいです。

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2003.03.24 第7話「黄昏の月」

レナの失踪について、バルムンクが4年前の事件との関連を示唆する、という話。
改造モンスターの投入などの画策によって、
4人の子供達の悪意VSレナを救おうとするシューゴ&バルムンクたちという構図が明確化。
そこへ前作同様、謎の存在であるアウラが絡んでくるという展開なのでしょう。
いわゆるハッカーである4人の子供達による画策はリアリティがある反面、
話が陳腐化してしまうおそれもあり、本作の世界観を維持するためのさじ加減に注目したいです。
今回登場した「碧衣の騎士団」。
その描写は、前作より後らしいという時間軸の関係(直接の関連性は不明)を明らかにするものですが、
ネーミングが無理矢理な印象。
映像ではシューゴが地面にはまって動けなくなるところが面白かったです。

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2003.03.11 第6話「湯けむりの罠」

行方不明になったレナをシューゴたちのパーティが捜索する中、何者かが温泉に誘い出し罠を仕掛ける、という話。
前回、見逃したので公式サイトを参照して粗筋をチェックしました。
前作でも重要キャラだったアウラ(真偽は不明?)がメールでレナを誘い出してさらったという展開のようですね。
で今回はレナ捜索のなか、シューゴ&レナのキャラクタープレゼントが管理者もあずかり知らないことであることが、
管理者バルムンク本人からシューゴに告げられ、いよいよ混迷の度を深めつつあるわけですが、
今回、世界観の描写で印象的なシーンがありました。
ひとつは雪原エリアと、そこに湧く温泉の描写。
シューゴが寒がるふりをすることから、
温度を体感させるシステムはないことが分かります(当たり前といえば当たり前ですが)。
この後のバーチャル温泉でドギマギするところも含めてなかなか面白い描写でした。
ただ、ふりで寒がるところは「リアルなグラフィックで寒そう」という理由づけをした方が更に良かったかもしれません。
本編のシューゴはわざとらしすぎたように思います。
もうひとつは、罠にはめようとしている子供達のリアルでの描写。
その姿をシルエットっぽく見せるのは本作では既出の手法ですが、
会話を抽象的にして、リアルの情報を詰めずにおくのは本作の世界観を維持する上手い演出だと思います。

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02.26 第4話「七夕の夜」

バルムンクが用意した七夕イベントの織姫役にレナが選ばれ、彼女のキスを巡って争奪戦が繰り広げられる、という話。
「桜の花イベント」に続いての管理者バルムンクが用意したイベントを舞台にした展開で、
そこに本作の基本設定である管理者のあずかり知らぬ「怪しい謎の存在」が事件として現れてくるわけですが、
「桜の花イベント」といい、本シリーズでは平常時のネットRPGの楽しさをキッチリ描いているところが好印象です。
「家族(レナ)と一緒に暮らしたい」という七夕の願い事はネタとしては陳腐ですが、
ラストシーンにちらりと見せるだけでさり気なく流したのが良かったと思います。
ほたるの願い事「プチグソがスコスコ育ちますように」は、「すくすく育つ」の意と思われますが、
外国人か帰国子女というほたるの正体(?)への伏線でしょうか。

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02.05 第3話「不死鳥の羽」

ネットゲーム内のペット「プチグソ」を預かった少女ほたるがプチグソの病気に気づき、シューゴと共に治癒アイテムを探す、という話。
プチグソは前作にも登場したキャラで、病気を治すという登場の仕方も同じ。
その分、前作を知る者には入って行きやすいストーリーでした。
強力なパーティに居候するだけでレベルを上げるというのはゲーム的にはリアリティがあり、
それでいて映像では滑稽にみせているというのは、なかなか上手い演出だと思います。
無理目のダンジョンを戦闘回避しながら進む、という展開の方はゲーム的なリアリティに欠けるのですが、
こちらは頃合いを見計らって砂嵐三十郎に助けに入らせて、と流石に作り手は心得ているようです。
砂嵐三十郎とほたるの出会いを第1話できちんと描いているところも好印象。

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01.25 第2話「カイトの腕輪」

シューゴとレナが「桜に花を咲かせる」というイベントに挑む、という話。
誰もが予想しえた「花咲爺」の昔話というオチへと進行していくなかで、
ワーウルフである凰花との出会いを「花咲爺」における犬の見立てであると、
受け手に思わせる(実際は何も関係なし)演出が面白かったです。
本編自体は出現するはずのないモンスター、という全体的な物語の核となるべき要素を提示しつつ、
レギュラーキャラを紹介して小さなイベントをほのぼのと進めるという雰囲気が良かったです。

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01.11 第1話「伝説の勇者」

伝説のキャラクターデータを手に入れた双子の兄妹がネットゲーム「ザ・ワールド」で事件に巻き込まれるという物語。
ゲームを原作にした作品で春の「.hack//SIGN 」に続き、今回はコミック版をアニメ化したもの。
前作がシリアス基調、説明不足で読解力を要求する作りだったのとは打って変わって、
コミカル基調、説明しまくりで気楽に見ていられる作りでもってきました。すごく両極端です。
説明的な台詞が頻出するのは萎えてしまいますが、
まだ分かりやすい方がストーリーや演出に集中できるので良いと思います。
映像面では等身の低いデフォルメキャラがまず目を引きます。
放映前は低年齢向きの作品かと思いましたが、そんなことはなさそうで安心。
第1回ということもあってか非常に動きのつけられた映像が印象的でした。
特に超将軍(?)から逃げる玲奈の動きが非常に細かく、アニメーションの面白さが出ていたと思います。
また前作では台詞のみにしてひた隠しにしていたリアル(現実)世界の描写を、
今回は映像で分かりやすく見せています。
ただ、やりすぎるとパラレルワールドに飛ぶ内容の既存の作品群と変わらなくなるので留意して欲しいところです。

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更新:上記参照 作成:2003-01-13 文責:ごま(goma)
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