15年後の未来。珍しくもなんともないという存在のエイリアン。
見た目は異形の動物という感じのエイリアンは、
大きな被害を及ぼすことはないものの、いわば害虫のような何に置いても迷惑な存在。
舞台となる第9小学校ではエイリアン対策係が設けられていて、
学級委員同様にクラスの中の一人に割り当てがあった。
6年生の大谷ゆりもその一人。
エイリアン退治という仕事。
そのために要する共生タイプのエイリアン「ボウグ」を頭に被ることは
気弱な性格な彼女にとって苦痛以外の何物でもなかった・・
謎を謎のままで終わらせることが決して悪いことだとは思いません。
必要に迫られて設けられていたはずの「エイリアン対策係」が、
実は校長や教諭の怪しげな企みに関係しているということが、
当初から断片的に触れられるも明らかにされないまま終わってしまう。
これ自体については別に構わないと思います。
ですが作品の世界観や価値観についての説明がないまま終わってしまったことが、
上の「謎を残した」と組み合わさり、物足りなさの原因になってしまったかな、という気がします。
「結局エイリアンって何なの?」という根本的な部分の説明が欠落しています。
ファンタジーや不条理世界を楽しむという舞台ならそれでもよいのですが、
大谷ゆりをはじめ「対策係」になった女の子たちの内面を描写するのに、
その世界における「エイリアンという存在とは?」という価値観が欠落するのは、
大きなマイナスだったと思います。
気弱な性格の主人公が「対策係」で働くうちに人間として成長するという、
ありがちなストーリー展開を良しとせず、
最後の最後まで気弱なままで押し通したのは本作の自慢。
ホンの少し一歩足を前に踏み出した形で終わらせるまで
作品を引っ張ったのはなかなか見事でした。
ただし、勧善懲悪や主人公の成長などによる爽快感というものは一切なく、
主人公の内気さに終始いらだちを感じさせるつくりなので、
納得づくで見ないと辛い作品ではあります。
作画も原作・富沢ひとしの画風を生かした独特のもので、
滑らかなCG合成と合わせた美しいものに仕上がってます。