昔々、自由の翼をもつ娘がおりました。
娘を愛する男は思いました。 「あの翼を縛ってしまえたら。そうすれば片時も離れずにすむのに」と。
けれども男が娘の翼を「魔法のショール」でくるむと、
たちまち翼は落ち、娘は死んでしまいました。
男は知らなかったのです。娘の翼は命の源だったことを。
チュチュの自分に対する気持ちを知るために、みゅうとがプレゼントを贈る、という話。
いよいよやばいと思ったるぅが、一日預かったプレゼントに仕掛けをほどこし、
クレールとなってみゅうとの恋路を妨害した挙げ句、みゅうとをさらっていくという展開で、
作品的にもクライマックスの到来を感じさせる話でした。
互いの正体を知ってしまったあひるとふぁきあ、今回チュチュの正体を知ったクレール、
とそれぞれの正体を明かされて改めて対峙する三者の構図で、表面上のストーリーとしては楽しめます。
ただ本作の場合、ドロッセルマイヤーの動向こそが本作たるべき要素だと思うのですが、
こちらの方の演出意図がよく分からなかったので見ていて困惑してしまいました。
「話に必要な役者は揃った。愛する心のない王子。死を恐れる騎士。覚悟のない悪役。
愛をつげられないプリンセス・・まだ何か足りない」
「その考えは危険だ・・」
「その行動は危険だ・・。ふぁきあはただの人間。チュチュはただのあひる。王子はただのお話」
と、形の上では要所要所に登場して意味深な台詞を吐くのですが、
その台詞が意図するもの、
そしてドロッセルマイヤーが話に介入しつつ傍観することで何をしようとしているのか。
てっきり、ドロッセルマイヤーと同一の視点から作品を見下ろしつつ、
彼の意志によって翻弄されるキャラクターを眺めるのが本作の主旨だと思っていたので、
彼の言動が理解できないことが少々苦痛に感じました。
彼ではなくあひる達のキャラと同一の視点で見て、
ドロッセルマイヤーの動向がどうなるかで受け手も翻弄されるという意図であるならば、
受け手の視点は作品内にもってくるような演出であるべきだったと思います。
今回のように冒頭から楽屋落ちしてしまうと、どうしても彼視点で見てしまうのではないでしょうか。
さて、今回の話で面白かったのは、まず猫先生や友人のぴけ&りりえが登場するシーン。
猫先生が愛と恋の違いを教えようとする行動、愛について大真面目に語るというコミカルさが、
みゅうとの不完全な心という本編のおける重要を上手く表せているのが上手い作りです。
ぴけ&りりえの台詞で「プレゼントを贈ると相手の気持ちが分かる」と
機械的に理解してしまうみゅうとも不完全な心の描写です。
本作はサブキャラの使い方が実に上手いと感心させられます。
それから雷の音の使い方も良かったです。
その一番の目的は、あひるがみゅうとに傘を持っていかせる為に天候の急変を演出するためでしたが、
前半るぅの心情描写に使うことで、今回の話全体に雷が鳴り続け、
ご都合主義的なものを感じにくくさせてました。
昔々、一人の娘がおりました。
娘はみすぼらしい服を着て、灰かぶり姫と呼ばれていましたが、
魔法で美しいお姫様になり、王子と踊ります。
そして十二時の鐘とともに、娘はガラスの靴を残して元の灰かぶり姫に戻りました。
王子はわざわざ娘を捜し出し、妻にめとりましたが。
でも、王子はその娘を本当に愛したのでしょうか。
ふぁきあが振るった剣によりペンダントを落としてしまい、チュチュにも人間にもなれないあひる、という話。
あひるとふぁきあを、というよりほぼふぁきあを軸に展開した今回の話。
ふぁきあの過去を回想しつつ、その心情を追っていく展開に雛鳥姿のあひるを絡めることで、
これまで対立するのみだったあひるに、ふぁきあの心情を理解させています。
またふぁきあの回想シーンでは、
戦士の生まれ変わりと思い込んでいるふぁきあ、両親を亡くしてカロンに引き取られたその生い立ち、
という現実世界としてのふぁきあの存在の「真実」と、
みゅうとふぁきあの幼少から今の姿と同じまま(成長していない)だったことが新たに判明しました。
クライマックスでは、間が悪くかけらに反応したあひるのペンダントにチュチュの正体をふぁきあが知って引き。
今回も、新たな事実の開示や次の展開を見せて興味を引きつける作りは見事だったと思います。
一方でみゅうとやるぅ(クレール)の存在がかすんでしまったのは疑問の残るところ。
るぅが軸と思えるサブタイトルに加え、「結婚式」という見せ場の予感を前半に示した割には、
あっけなく終わってしまったという印象でした。
みゅうとが自ら「式場」に赴くのも少し説得力にかけるように思います。
「行かなくちゃいけないような気がする」という本編のものより「知りたい」という台詞で、
取り戻したかけら絡みの心に起因する行動原理とした方が良かったのではないでしょうか。
一言でいうと、今回ちょっと内容を詰め込め過ぎでした。
ふぁきあが雛鳥あひるにペンダントに渡すところは、
チュチュの手がかりと認識していたふぁきあがあっけなく手放すのは少々変ですが、
これまでに二人のシーンを時折描いていたことで不自然さが軽減されていたと思います。
あと、細かいところではレッスンのときのキャラの立ち位置。
「恋してますね」と猫先生がいうところで、
離れて立っているるぅとふぁきあが同じフレームに入るカットが秀逸。