アニメコラム「最終兵器彼女」

アニメコラム集「最終兵器彼女」

ファーストインプレッション

放映日2002年7月4日

あらすじ

主人公シュウジは北海道で暮らす高校生。
雪降るある日、シュウジは見はらしの良い高台に来る。
そこはシュウジとその彼女ちせ、つきあう二人の「はじまりの場所」だった。
話はさかのぼり、シュウジがちせから告白を受けた5日後に。
かわいいちせからの告白に、シュウジはいったんそれを受けるも、
初体験である男女のつきあいに窮屈さが強まっていた。
数日後、交換日記を断ったシュウジはちせを高台に誘う。
そこでシュウジはつきあいをやめようと切り出した・・

レビュー

原作は高橋しん。「週刊ビッグコミックスピリッツ」に連載された漫画のアニメ化。
時代は現代或いは極めて近い近未来。舞台は北海道。登場人物は普通の高校生とリアルな設定。
タイトルが示す通り、物語は戦闘状態に陥ったその舞台で、
どういうわけか人間兵器になってしまった彼女ちせとシュウジを描く、
例のないラブストーリーという展開が描かれていきます。

第1話はその物語を描くためのプロローグともいえる存在で、
荒唐無稽といっていい物語の本筋に入るために、
シュウジとちせの恋のはじまりから、本心をぶつけ合った上での本当の意味での恋のはじまり、
そして突如訪れる戦闘状態、ちせの人間兵器化という衝撃の事実というところまで、
半ば駆け足でストーリーが展開していきます。

そのせいか今回のラストシーンにくる、
ちせの人間兵器化というオチを「B級映画」的にとらえれば、
第1話全体が、リアルな高校生の恋における心の動きをとらえた
「青春映画」として、かなり完成度の高いつくりになっています。
作り手も意識しているのか、どことなく「尾道三部作」のような雰囲気が感じられます。

逆に30分の枠に詰め込み過ぎたのでは、という見方ができるのも事実です。
起承転結がハッキリした全体的な完成度とは裏腹に、
細部を見渡してみるとアラが目につきます。

シュウジの描写では、恋への窮屈感に説得力がありません。
交換日記への窮屈感は納得できますが、それが恋の全体ではないでしょう。
これはシーンを増やせば簡単に解決がつきます。

ちせの描写では、その行動原理に共感できない部分が多かったです。
交換日記を他人に見せるデリカシーのなさ
(このシーンでは他人に見せる前に自分が見ていないというリアリティの無さも問題)もそうですが、
一番問題だったのは、シュウジの「別れの告白」の次にくる
「わたしも疲れた。端からそんなつもりじゃなかったから」という泣き叫び。
シュウジの「別れの告白」と等価の罪として作り手は描いているつもりのようですが、
「自分の窮屈さ」を理由にしたシュウジの告白には何ら罪はなく、
「友人にけしかけられたこと」を理由にしたちせの告白とは意味が違いすぎます。
現実としてはあるのかも知れませんが、あくまでフィクションである以上、
ちせをあえて悪人ぽくに仕立てる必要はなかったと思います。
「シュウジへのあこがれ」をより強調することで、
あのシーンの目的は達せられたのではないでしょうか。

作画面では、スタッフが「GONZO DIGIMATION 」ということで非常に美しかったです。
原作の人物のタッチへの異常なまでのこだわりは、
似せているという技術的な評価はさておき、
こだわりそのものはアニメにおいては好みの問題で特筆すべきでもないと思いますが、
背景がそのタッチに合わせたものになっていたのは、
雰囲気を出すという意味で高く評価したいところです。
欲を言えば戦闘状態に入った街の描写で、
キャラクターが存在しないシーンではデジタル特有の写実的な背景となっていて、
雰囲気から引き戻される感じを受けるのが残念でした。

本作も第1話ということで、細かい動きが多くアニメーションとして存分に楽しめました。
省略した動きもいくつかありましたが、
見せるべき所では必ず動いていて、見切りという点でも良かったと思います。

作成:2002-07-26 文責:ごま
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