アニメコラム「満月をさがして」

アニメコラム集「満月をさがして」

第18話「走れ!オーディションへ!」

放映日2002年8月10日

あらすじ

満月は病院を抜け出してオーディションへ向かうが、病室に笛を忘れてしまいタクトを呼べない。
一方タクトの前には、めろこが立ちふさがる。
めろこは「幽霊化につながる生前の記憶の復活」を心配すると同時に、タクトに告白するが、
タクトはそれを振り払って満月救出に向かう。
あきらめの悪いめろこの妨害を乗り越え二人はオーディションへ向かうが・・

レビュー

前回「すれ違う二人」と合わせて前後編といえる今回の話。
「タクトへのめろこの忠告と告白への対処」「運命を妨げる要素であるオーディション」
という2つの条件をどのようにクリアして
「オーディション受験」「タクトとの仲直り」を達成させるのかが注目のしどころでしたが、
一方は非常に上手く、もう一方は今ひとつといった出来でした。

「めろこの告白」を「57回目の告白」としてコメディに一変させ、
その後のめろこの妨害も半ばコメディとして進行。
それを一つ一つ乗り越えていくなかで、
「満月とタクトの仲直り」に納得できる雰囲気を作り上げたのは上手い作りでした。
元々めろこのタクトへの恋は作品の本流ではないので、
重苦しい雰囲気を払拭するのに使っても問題はなく、
むしろ「設定を上手に使って盛り上げた」という風に思います。

「運命を妨げる要素であるオーディション」の解決法が、
オーディションに間に合わず不合格という結果だったのは、
容易に予想のつく安直な作りで残念でした。
もう少し何かあるかと期待したのですが。

めろこがタクトを引き止めるシーンで、
めろこがそのまま引き止めていたら満月が死んでしまい、
結果的にめろこの失着になると視聴者に思わせてしまうのは作り手のミス。
せっかくお婆さんの台詞(とそれを見るタクト)を入れたのだから、
めろこの手を振り払うときにタクトにそのことを言わせるべきでした。

あと細かいところですが、決戦のオーディションなのに、
あの程度の満月の遅刻が不合格につながるのは
リアリティとしてはどうかと思いました。
その点でも「監督の几帳面な性格」で「説明」を入れた方が良かったと思います。

満月がオーディションに不合格という結果そのものは、
今後の展開に広がりをもたせる意味でも悪くないと思います。
オーディションに落ちて失意にある満月がどのように立ち直り、
再び前に進んでいくのか楽しみです。

第17話「すれ違う二人」

放映日2002年8月3日

あらすじ

オーディションはフルムーンと若松円の共演という予定外の形で決着するかにみえたが、
若松円の姑息な手段により一騎打ちで後日再勝負という結果に。
満月を意識し過ぎて冷たかった態度を改めようとしたタクトは、
満月のちょっとした言葉を、自分の生前を探っているように思い態度を硬化。
タクト本人も忘れている生前を思い出すことは死神のタブーであると、めろこまで満月を突き放してしまう・・

レビュー

前回のラストで共演を拒否する円の姿は、
狡猾な性格に合わないのではないかと思ってましたが杞憂でした。
突如ブリッ子に豹変してスタッフを丸め込む描写で、話の展開を上手くもっていきました。
後の食事のシーン。監督とマネージャーの会話を盗み聞き、
CMキャラに対するイメージにフルムーンがピッタリと分かるやいなや、
フルムーンの立ち居振る舞いを真似て監督をだますところ等、
キャラの立った敵役として見事に仕上がったという印象です。

さて、このオーディションの成り行きが本筋かと思いきや、
本編では、満月がタクトの「生前の記憶」という死神界のタブーにふれるところから、
満月、タクト、めろこの三人それぞれの心がバラバラになっていくところが描かれます。
もちろん(?)メインは海の一件以来、意識しあっていた満月とタクトなのですが、
めろこのタクトへの思い、それが一因でもある満月への態度や、
祖母として病弱な身体を心配するも満月には今ひとつ届かないおばあちゃんの思いなど、
様々な「すれ違い」が盛り込まれていて充実した内容でした。
それら多くの要素を盛り込みながらも自然な場面展開
(田中さんが倒れた満月を偶然発見するところは出来過ぎですが、
さぼり癖のある性格、厳格な祖母の使用人、というこれまでの設定・描写を生かしています)で、
かつそれぞれ利害という点では相反する要素が上手く絡まりあっていて楽しめました。
シリーズ屈指の回だったと思います。

強いて難を挙げれば、めろこの心の動きの描写に乏しかったことでしょうか。
田中さん同様、これまでの言動から今回のそれも動きとしては納得がいくのですが、
特に「担当を変えてもらおう」と言い出すところをはじめ、
満月に対する冷たい態度・姿勢には少し唐突な感がありました。
モノローグを加えるだけでも印象は大分変わったと思います。

「(二人は)どこか似ている」というめろこの台詞をはじめ、
いつにもまして今回これだけ満月とタクトの関係をあおる描写からして、
タクトの正体は○○○だったりするのでしょうか。

( 更新:2002年8月26日 文責:ごま )