アニメコラム「.hack//SIGN」中期インプレッション

アニメコラム集「.hack//SIGN」

中期インプレッション

放映日2002年5月8日まで

あらすじ

ネットゲームの世界。
多くのプレイヤーがネットワークにログインし、
プレーヤーそれぞれがファンタジー世界のキャラクターを演じる
という1つの仮想空間の中で、
ひとりログアウトできずにさまよう一人の「呪紋使い」がいた。
そのプレーヤー司と司をめぐる陰謀、仮想空間の異変の謎を描いていく・・

レビュー

フィクションとしてファンタジー世界を描いたアニメ・ゲーム作品は
これまでに数多くありましたが、
本作ではファンタジー世界を正にロールプレイするプレーヤーたちという現実を
ロールプレイする世界の中で描くという点がこれまでにない試みで、
視聴者はフィクションであるファンタジー世界を見ながら
現実を意識するという変わった感覚で楽しめます。

アイデアの勝利ということもできますが、
斬新なアイデアというよりはむしろ「大きな壁」があるので
誰もやらなかったというのが実際のところでしょう。

「ファンタジー世界をロールプレイ(RPG)」、
それは現実世界での「おままごと」にたとえることができます。
役柄に没頭し、我に返ることができなくなってしまった
おままごとをする内のひとりを元に戻すために、
他の仲間がおままごとの役のままで知恵を絞って行動する。
本作の描かれ方はこのようなものです。

そうして見ると、その描かれ方はひどく滑稽なものです。
単に現実世界であるということを示す、
本作ではモニターの前にいるプレーヤー本人を写すなどする
とかすれば話は簡単なのですが、
それでは本作の本作たる意味をなさないので出来ません。

したがって本作では、
現実として見たときのそういう滑稽さをいかにうち消すか
ということが求められます。
それが難しく「大きな壁」であるからこそ今までになかった作品なのですが、
第6話まできた現在そのあたりへの「答え」を出す姿勢が見受けられません。
このまま「おままごと」で終わるのか、或いはあっと驚く種明かしがあるのか、
そのどちらかで作品の出来が決まるでしょう。
(「アニメージュ 2002年8月号」掲載)

( 更新:2002年5月20日 文責:ごま )