主人公、花菱薫は厳格な実家を出て東京で一人暮らしをする大学生。
その薫のもとにとつぜん美少女、桜庭葵やってきた。
薫の幼なじみである葵だが、来るなりなんと「薫に嫁ぐ」と言い出す。
そうして薫、葵を中心とした下宿「桜庭館」での生活が描かれる・・
原作は文月晃。週刊「ヤングアニマル」連載中の漫画のアニメ化。
実際いくつかのサイトで見たのですが「寸止めアニメ」という言葉があるらしいです。
主人公の男とヒロインをいい雰囲気にして、「あわや」と思わせるシーンを
あの手この手で作って視聴者に媚びるという意味でしょう。
要するに「エッチしそうでしない」ということ。
この手の作品の一側面をとらえてると思いますが、
わたしは本作のような構造を「精神AV」と読んでいます。
視聴者の投影である主人公が何の努力や行動を起こすことなく、
美少女ヒロインから一方的に好意を寄せられ、いたれりつくせりの奉仕を受ける。
そこには、人格をもった男と女が結びつくための過程、
少女漫画によく描かれる、主人公が恋する相手へのアプローチの数々、
またその際の一喜一憂や相手の心に踏み込むことによって傷ついたりする、
というその過程は一切省かれ、
無条件かつ無限に受ける愛情の数々が、即物的に描かれることになります。
それにより視聴者が精神的に癒される、というのがこの手の作品がもてはやされる要因でしょう。
癒される部分が肉体的から精神的に置き換わる以外の構造が同じなので、
上のように「精神AV」と呼んでいるわけです。
そういうアニメの存在自体を否定するつもりはないのですが、
作品として視聴できる、語れる価値を見いだすことはできません。
アニメ誌の紹介には「従順」「相手(男)を立てる」「男の理想」などという言葉が踊っています。
こういう言葉を恥ずかしげもなく使う記者のセンスも甚だ疑わしいですが、
こういう取り上げ方しかできないところがこの作品の限界を示しています。
設定を見ると名家で厳格に育てられたことや、その際の体罰など、
薫にトラウマがあることを今後描きつつラブストーリーの行方を描くということらしいですが、
本質的な作品構造が上記では、「AVとカンヌ受賞作を続けて見ろ」というようなもので、
今のところ「精神AV」を描くための方便以上のものを感じることはできません。
本作のみどころは何といっても作画。
アニメーション制作は今節「あずまんが大王」も担当している「J.C.STAFF 」。
カラフルな色使いの割に嫌味にならないようにまとめているところや、
和風のテイストを上手く現代風にアレンジして盛り込んでるところが特に見事です。
ハイクオリティで安定した作画で毎回楽しませてくれます。