アニメコラム「あたしンち」

アニメコラム集「あたしンち」

ファーストインプレッション

放映日2002年5月30日まで

あらすじ

タチバナ家は、3LDK築15年の3階建て分譲マンションの3階に住む4人家族。
主人公みかんは高校2年生の女の子で「テディベア研」に所属。
母はいつも何か歌っている九州出身の専業主婦。
父はずぼらな性格、九州出身のサラリーマン。
弟ユズヒコは中学3年生。
こんなごく普通の一家を舞台にどこの家庭でもありそうな、
ちょっとした事件やネタを面白く描く・・

レビュー

原作はけらえいこ。読売新聞日曜版に1994年から連載中の漫画のアニメ化。
日常のちょっとしたネタを描く作品といえば、
「サザエさん」「ちびまる子ちゃん」などを思い浮かべますが、
この作品では、これら以上に日常的(俗っぽい)で、視聴者の共感を得られる
より現代的な作品といえます。

この作品の見所は、何といっても日常の中のちょっとした出来事を
面白おかしくピックアップしているところ。
本編に散りばめられるネタは、
どれもが見ていて「そういうことあるある」
と、クスッと笑えるものばかりです。
この作品では、それらのネタを、少し変わった性格な母をはじめとする
キャラクターたちの行動にデフォルメさせることで、
より面白さを増すという構造になっています。

具体的には、 流行についていけなくなりつつある母と子供とのジェネレーションギャップや、
姉と弟の性別や性格の違いによるギャップ。
日常的な出来事や、その時の行動における考え方の違い、など。
視聴者側もそれぞれ、価値観を同じくするキャラクターに感情移入できるため、
正に家族で楽しめる作品となっています。

これらは原作自体に既にある良さで、
普通、原作のアニメ化というプロセスにおいては、
どうしてもその魅力がいくらか削がれるという現象が発生するのですが、
本作のアニメ化に際しては、原作の良さを生かし、
ある意味、原作以上に原作らしい作品に昇華させていると言えます。

これはどういうことかというと、
原作の連載上の制約に大きく起因しています。
実は原作は、新聞日曜版という紙面の都合上、
1本が全てが均等な25コマという制約をうけているのです。
したがって、作品によってはどうしても間延びしたり、
テンポが悪かったりする部分が出てしまうのですが、
アニメでは、1本25分(主題歌、CM込み)の枠の中で
メリハリをつけるなどして上手く処理しています。

また原作をより面白くするためのアレンジにも積極的で、
例えば、第3話のおまけネタ「母のティータイム」では、
原作がティーバックを使い回す、という1コマ漫画だったのを、
都合3回使い回した挙げ句、まだ使うつもりだったのがシンクに落ちてパァ、
という演出で大爆笑モノとなっていました。

スタッフは、 監督がギャグ演出には定評のある大地丙太郎と、
制作は「クレヨンしんちゃん」のシンエイ動画による
原作通りでかつ安定した作画という組み合わせで楽しませてくれます。

放映決定からのスケジュールは結構厳しかったらしく、
放映当初は知恵を絞った工夫を感じさせるも、
間延びしたテンポであったことが否めませんでしたが、
第7話に至って軌道に乗ってきたという印象で、
今後が大いに楽しみな作品です。

( 更新:2002年6月15日 文責:ごま )