碁会所めぐりで見つけた「なじみの碁会所」で、
ハンデ戦の不利を覆すという稽古をしていたヒカル。
今度はわざと持碁(引き分け)にするという稽古に挑む。
一方その頃、プロ棋士のアキラは都議会議員を相手に四面指しの指導碁を打つことに。
身の程知らずで傲慢な議員だが、囲碁普及に尽力しているため、
この日の主催者はアキラに「わざと負けてくれ」と頼む。
議員以上の実力者だった秘書を含んだ四面指しを前にアキラがとった行動は・・。
原作漫画を友達の家にある「週刊少年ジャンプ」でたまに読むわたしが、
強烈な印象とともに記憶しているのが今回のお話。
格下を相手に、対局中つねに「双方の地の数」を計算しつつ持碁にもっていく。
作中で説明されている、上位棋士のプロならば出来て当然のこととはいうものの、
常に最善手を打つとは限らないアマ相手にそれをするのは凄いことだと
素人が聞いても分かることです。
この「わざと持碁」という題材を、
ヒカルとアキラのそれぞれの描写で、物語の中へ見事に組み込んでました。
アキラの描写においては、
「わざと負ける」という、相手が相手なだけに承服しかねる要請の解決法と、
自分の実力を試すという目的によって「四面指しでのわざと持碁」を。
ヒカルの描写においては、「わざと持碁」がどういうものかを説明しつつ、
ヒカルが普通の対局から二面指し、三面指しでそれを達成していくという
ヒカルの成長の過程として使われています。
またこの2つの描写が二人の実力差を示しているのと同時に、
2つの描写が単にお互いの進行を妨げるのではなく、
お互いに補足しあって盛り上げる効果を果たす演出
として機能しているのも見逃せないことです。
これらは原作に既にある要素で、
今回のアニメ化においても、その良さが十分に引き出されてました。
ただ一点、アキラが四面それぞれの地の計算を同時に行うところは、
時間の経過とともにシーンが変わっていくアニメであるがゆえに、
原作と比較して緊迫感に欠けるきらいがありました。
原作通りに「地の計算をする心の台詞」を淡々と読み上げるのではなく、
なにかもう一工夫してアニメ独自の表現による緊迫感を演出して欲しかったです。