『ギャラクシーエンジェル(第3期)』第1・2話-アニメコラム-アニメ討論室-

アニメコラム集『ギャラクシーエンジェル(第3期)』 各話の主なスタッフデータ

第1話「捜索おやじ風創作おじや」
第2話「元祖エンジェルパフェ全部入り」

放映日2002年 10月 6日:コラム作成日2002年 10月 12日

あらすじ

本来エンジェル隊の役目だったロストテクノロジー収集任務をこなすツインスター隊。
エンジェル隊は3ヶ月前にふとした下らない理由で解散していた。
この間、状況に流されるまま窓際族を演じていたウォルコット。
そこへツインスター隊のメアリー少佐からもたらされた一報は「リス・虎」
自らの老後ためにエンジェル隊再結成を図るウォルコットだったが・・

レビュー

2001年のCS版第1期全26話、2002年春の地上波版第2期全18話(他スペシャル1話)に続く、期待の第3期放映。
しかし、その第1回放送は、事前に得られた情報である「新キャラ登場」「ヴァニラいじり」具現化への、
あらかたの不安、弊害の予感が見事に的中した形となりました。

「新キャラ登場」の弊害としては、
まずキャラクター配置構造の平板化ということがあげられます。
これまではエンジェル隊の五人のキャラどうしの掛けあい、
五人全員による掛けあいはもちろん、二人や三人の場合もあるバラエティに富む構図だったものが、
エンジェル隊と同列の新キャラによって、エンジェル隊VS ツインスター隊という単純な2極構造になってしまい、
本来の持ち味であるエンジェル隊内のキャラの掛けあい要素が希薄になってしまってます。
これは「美少女戦士セーラームーンS('94)」において、
ウラヌスとネプチューンが登場したときの状況と良く似ています。

キャラクターの性格が重なることによるキャラクターの歪曲、希薄化、出番の減少という事実も見逃せません。
ココモは、単なる元気いっぱいの子供ということでキャラの棲み分けができそうですが、
マリブは、ミルフィーユと同質のボケ役性格を若干含むものの基本的にはツッコミ役で、
エンジェル隊のツッコミ役であるミント、ノーマッドの役回りと重なっており、
その部分において割を食った形のミントやノーマッドの印象が希薄になっていました。
またウォルコットは、昼行灯的な性格でシリーズを通していながらも、
コメディとしては「第2期第9話」、シリアスとしては「第2期第12話」で見せた「白き超新星の狼」
といわれる影に秘めた実力という要素が含みとしてある奥行きのあるキャラクターだったのですが、
今回メアリー少佐との対比目的で歪曲されてしまっていました。

また、これまで影も形もなかったエンジェル隊と同列のエリート部隊
という存在を新キャラとして登場させエンジェル隊を上回る実力でその存在を脅かす構図は、
これも持ち味である「お気楽極楽」「唯我独尊」という要素を消してしまってます。
新キャラ登場という前提で本来の持ち味をだすには、
エンジェル隊と同じかそれ以上の実力を見せつつも最後はエンジェル隊の「わけの分からなさ」に屈する、
即ちツインスター隊は
「ロストテクノロジー争奪戦(※今後予想されるシリーズの基本設計。これ自体が作品の主旨を逸脱しています)」
において、エンジェル隊に負けて地団駄を踏み続けるというのがギリギリ成立しうるラインだと思います。
例えば、状況は違いますが「第2期第9話」のような形が理想です。

「ヴァニラ」いじりは、キャラクターの歪曲以外の何物でもありません。
扱いにくいキャラクターだったために、出番や描き込みが少な目だった前2作を踏まえて、
今回はそれを増やしていこうというのが、作り手の意向とのこと。
そこまでは良いのですが、キャラクターの性格を変えてしまっては何の意味もありません。
本来、ヴァニラは真面目な性格のツッコミ役でありながら、その台詞でボケるというのが持ち味のキャラクター。
「いじる」というなら、その性格や役どころをという「制約」を踏襲してこそであり、
「微妙」「ヴァニラのヴァは馬鹿馬鹿しいのヴァ」「ガチャガチャ」では、
単なる天然ボケキャラにして台詞やアクションを増やしたすぎません
(これまで全くなくはないですが、それは持ち味を踏まえての一発芸的な演出だったから許される)。
失礼を承知で言わせてもらえば「そんな作り方なら私にもできます」です。
これも「美少女戦士セーラームーン('92)」シリーズに前例があり、
シリーズ後期にいくほど「ガリ勉ネタ」でボケる水野亜美がそれにあたります。

結局のところ、今回の新キャラやヴァニラいじりは、
2クール全52話(確定情報ではありません。しかし後述の通りこれで1クールだったら噴飯もの)
という全26話、全18話という前2作と比べて異例の長期となる今シリーズを乗り切るための、
作り手側が手を抜くため(といって語弊があるなら「楽をするため」或いは「苦労を和らげるため」)
の要素以上のものを感じません。

以上、厳しく書きましたが、
1話完結のオムニバス形式で、
前回の話が何事もなかったかのように次の話が展開されるのもまた本作の良い点。
第3話(第2回放送)以降の話で本来の面白さを取り戻すことも十分ありえることなので
今後の展開に期待することにします。

・・そうやって考えてみますと、第1話にこの話をもってきたのが最大の失敗といえるかもしれません。
ノーマッド同様、ツインスター隊も第3話あたりにもってきても良かったですし、
今回の第2話から登場させて後半は「引き」でも良かったのではないでしょうか。
第1回の内容はシリーズスタッフが担当するのが慣例というなら・・(以下略)。

更新:2002-10-13 作成:2002-10-13 作成:ごま
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